マガジンのカバー画像

花に嵐の映画もあるぞ(洋画編)。

183
わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦… もっと読む
運営しているクリエイター

#おすすめ名作映画

“その手でお前の愛馬を埋めるんだ!”_”Bite the Bullet”(1975)

「スティール・ボール・ラン」の元ネタ。だけどジョニー・バレンタインも、リンゴォ・ロードアゲインもといチャールズ・ブロンソンも、出てないよ。 喩えるなら、ノリスケ・ヒガシカタを主役に置いたような映画。 1908年の西部。 デンバー・ポスト新聞の主催による、踏破距離700マイル、賞金2000ドルの人馬による 過酷なレースが始まろうとしていた。 それは、山あり谷あり砂漠ありという定められたコースを6日半で踏破しなければならず 、馬を乗りかえることは出来ず、もし事故に遭えば生きては

“老いぼれはゆっくり休んどれ。次は俺の天下だから。”_“The Death of Stalin”(2017)

本作中のスターリンを、某プーさんにダブらせて鑑賞するかどうか。あなたの良心次第、ご自由に。 それはともかく、二重アゴ、鼻眼鏡、肥満体、海のように深いホウレイ線。鬼畜大元帥もといベリヤが大暴れ。他はしみったれ。 名のある政治家がいっぱいいっぱいでてくるので、これは小説吉田学校ならぬ実録スターリン・ソン・ズ・スクール。あるいは昭和自民党内派閥闘争よろしくソ連版金環食なのだな。 と思ったら、大多数の政治家たちは蚊帳の外。 完全にサイモン・ラッセル・ビール演じるベリヤ、ソ連の秘

ナチの追手にご用心。_“Man Hunt”(1941)

ナチスへの協力を避けるために渡米したドイツの巨匠フリッツ・ラング監督が、ハリウッドで手掛けた反独プロパガンダ映画「マン・ハント」より。 劇中の時系列は、 と後世に評される様に(小国の事情を無視して)独英露仏が縄の引っ張り合い、欧州情勢が複雑怪奇の様相を呈していた1939年7月末日(正確な日時は29日)から、同年9月まで。 ライフル名人のイギリス人男性ソーンダイクは、ドイツ国内で狩を楽しんでいる途中、たまたまヒトラーに照準を向けてしまったことから、暗殺未遂事件の容疑者としてゲ

“英語がわかれば、何処へでも行けるさ!”_“The Search”(1948)

フレッド・ジンネマン監督の初期作「山河遥かなり」より。 一言で言えば、チェコの裕福な家庭に生まれながら、アウシュビッツに入れられて、A24328の刺青を入れられ、恐怖の中で失語症となり、家族と離れ離れにさせられた孤児の少年の、「母をたずねて三千里」。 人間不信で獣のように生きていた少年に、アメリカ兵スティーブは優しく寄り添う。演じるのは、後の作品につきまとう「影」を全く感じさせない明朗活発なモンゴメリー・クリフト。 白眉は、スティーヴが「アメリカ占領下のドイツ」を生き延びる

“みんなちがって、みんないい”_“Paddington”(2014)

実写映画の大成功例となった「パディントン」より。 同じイギリスの児童文学原作の「ピーターラビット」の実写版はキモいの一言だったが、こっちは愛くるしいのが◎。 一言で言えば、CGの出来が良い。 そもそも「名無しのクマ」だった彼が、(父は反対、母娘息子は賛成の)ブラウンさん一家に拾われた際、 出会った場所が「パディントン駅」だったから(お母さん主導で)パディントンと名付けられた 由来なんて、映画を見て初めて知ったよ。 Paddingtonという地名の存在も。 なお、パディン

タロットから見る“Live and Let Die”

ブラックプロイテーション映画とオカルト映画の要素がごった煮された「007 死ぬのは奴らだ」より。正直グズグズで完成度は低いが、たまに無性に見返したくなる、異色でユーモラスな作品だ。 ニュー・ヨークの国連会議場とニュー・オーリンズ、カリブ海のサン・モニク島など三つの場所で、イギリスの要人やスパイが同時期に殺される。 その裏にはYaphet Kotto(ヤフェット・コットー)演ずるサン・モニク出身の大物黒人Kananga(カナンガ)が暗躍しているのは明らかだった。英国諜報部はご

“秘密の花園はいつでも開かれているのです。目覚め、生きているのです。”_“The Secret Garden”(1993)

イギリスには庭園の文化がある。 以下、「New Wild Garden: Natural-style planting and practicalities (English Edition)」(Prime Reading)から引用。 plight 【名】悪い[ひどい]状態[状況・ありさま]、非常に苦しい状況[立場]、窮状、苦境、窮地 庭の存在は、人の心にどのような効果を及ぼすか。 原作フランシス・ホジソン・バーネットのイギリスの名作児童文学「秘密の花園」は、このテーマに

映画「カーネギーホール」 感想文

カーネギーホールとは、言わずと知れた、アメリカの音楽の殿堂。 ホールの上に(接続される形で)建造されているタワーのことは、意外に知られていない。 以下引用。 occupant 【名】 占有者、居住者、現住者 〔車などの〕乗員 In the language of architects, a double-height space is when the ceiling is roughly twice as high as the ceilings in the oth

“聖書を学びなさい…答えを見つけられるでしょう。“_だが、無かった。“Boy Erased”(2018)

「こいつはビョーキだ!」のレッテルばり。それは心に大きな傷を残す。 真の姿を見せること。人の前ではむずかしい。 まして、支配的な親の前で、息子が告白することなど到底叶わないだろう。 特に、どの時代でも父親というものは、息子に「男らしさ」を期待するものだ。そこから溢れてしまったすべての息子は、人扱いされなくなってしまう。 この映画は、少年が「あるがままの自分」を受け入れるまでのゆらぎの過去、 そして現在。2部構成で「自分のことは自分で決めるしかない」強さ、したたかさを身につけ

“仕返しする勇気のない選手になれと?””仕返ししない勇気を持つ選手になってほしいのだ。”_”42”(2013)

ある黒人NBAプレイヤーの言葉を借りれば、 speak out 【句動】ずばりと[遠慮なく]言う、正々堂々と意見を述べる addled 【形】 〔卵などが〕腐った 〔思考などが〕混乱した cattle 牛、畜牛、(人間について)畜生ども populace · 《the ~》〔エリート層に対する〕民衆{みんしゅう}、一般大衆{いっぱん たいしゅう} · 《the ~》〔ある町や地域{ちいき}などの〕全住民 dismiss 〔アイデアなどを〕退ける、片付{かたづ}けて

“君が感じたままを歌うんだ。人々はそういう歌を聴きたいと思い、そういう歌で救われるんだ。”_”Walk the Line”(2005)

ホアキン・フェニックスが吹き替えなしの歌を披露し主演するカントリー・ミュージック歌手Johnny Cashの伝記映画「ウォーク・ザ・ライン 君へと続く道」より。原題の'Walk the Line'は、Johnny Cashのヒット曲'I Walk the Line'から取られている。 1955年テネシー州Memphis(メンフィス)。Johnny Cashは既に一児のパパ。軍を除隊後、家庭用品のセールスマンとして訪問販売をするが、うまくいかない。ベーシストと電気ギターを弾く

“正義とは赤いリボンや金モールには目をやらないもの。殺された女の叫びのみ耳にするもの。“_“THE NIGHT OF THE GENERALS”(1967)

オープニングだけは”ヌーヴェル・ヴァーグの父”アンリ・ドカエのカメラが冴え渡っていて、あとはなんというかひたすら重苦しいだけのジメジメした(142分も必要だったか?)映画「将軍たちの夜」より。 ドイツ国防軍として実際に前線に出た東プロイセン出身のハンス・ヘルムート・キルスト原作。また、ハリウッド作品ながら、出演者は全てイギリス及びヨーロッパの俳優であり、そのことが本作に一種独特の雰囲気を与えているのは、間違いない。 舞台は1942年、 と後世に評される、ナチス・ドイツに根

“炎を打ち負かすには、炎のごとく考えることだ”_”Backdraft” (1991)

ロン・ハワード監督の真骨頂は、困難が立て続けに生じる一戦で戦い続けるプロフェッショナルたちの誇り、葛藤、そして強烈な意志を高らかに歌い上げる所だ。 「ビューティフル・マインド」「ラッシュ /プライドと友情」「アポロ13」… どの作品も良いが、個人的に一番好みなのが本作だ。 「バックドラフト」。猛烈に迫る火の手と、炎に対峙する強烈な意志をストレートに描いている。 片ッ端から焼け亡うせて跡は一面に火の海となる有様…ただ、物凄い光景。 そんな炎のゆらぎ、ゆらめきを、当時最先端のS

“映画、それは退屈に満ちた人生を切り離すものさ!”_“Their Finest”(2016)

クリストファー・ノーラン監督「ダンケルク」のB面。戦火の中で、誰もが夢を見たがっていた…。「人生はシネマティック!」とは、当たっているようで、当たっていないような、邦題。 第二次世界大戦では、映画というメディアが、プロバガンダに利用される成熟期を迎えた。ナチス・ドイツでいえば…の故事を引くまでもないね。 本作は、 プロバガンダ? だからどうした、楽しけりゃそれでいいだろ!の精神で突っ切るのだ。じつに潔い。 第二次世界大戦下のイギリス映画は,ドキュメンタリー映画,商業映画