戦争するより、踊ろうよ。「ニースについて」。
戦間期も中盤、ワールドカップを初めて開催国として迎えた西暦1929年のフランスは、われわれ日本人が思っている以上に、不安定真っただ中だった。同年生じた世界恐慌による貧富の拡大は言わずもがな、隣国ドイツとの緊張の高まり、軍拡、政治的な論争や対立、そして反ユダヤ主義…。
20年代末に彗星の如く現れ、長編一作、中編二作、短編一作を作って29歳の若さで死んでいった映画青年:ジャン・ヴィゴは、1929年、カメラを片手にフランス南部、ニースに乗り込んだ。隠しカメラによる生撮りを敢行し、