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花に嵐の映画もあるぞ(洋画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦… もっと読む
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#ドキュメンタリー映画

戦争するより、踊ろうよ。「ニースについて」。

戦間期も中盤、ワールドカップを初めて開催国として迎えた西暦1929年のフランスは、われわれ日本人が思っている以上に、不安定真っただ中だった。同年生じた世界恐慌による貧富の拡大は言わずもがな、隣国ドイツとの緊張の高まり、軍拡、政治的な論争や対立、そして反ユダヤ主義…。 20年代末に彗星の如く現れ、長編一作、中編二作、短編一作を作って29歳の若さで死んでいった映画青年:ジャン・ヴィゴは、1929年、カメラを片手にフランス南部、ニースに乗り込んだ。隠しカメラによる生撮りを敢行し、

ドキュメンタリー映画“Blood Brothers: Malcolm X & Muhammad Ali”

2021年のNetflix独占配信ドキュメンタリー「ブラッド・ブラザーズ マルコムXとモハメド・アリ」。 モハメド・アリとマルコムXが共に過ごした貴重な3年間。その間に彼らは、彼ら自身だけでなく世界をも変えることになる絆を築いた。 彼の父母の世代に遡るマルコムXの思想の原点にあるもの、ハーレムの黒人コミュニティとの関係、イスラム教に基づく新興宗教団体NOI(ネーション・オブ・イスラム)への入信、そして aw-shucks 〈米話〉〔態度{たいど}が〕控{ひか}えめな、〔素朴

“全力を尽くさなくては、頂点には立てない。”_ Schumacher(2021)

raise the bar 〔達するべき〕水準[レベル]を引き上げる out of sight (…の)見えない所に、法外に、べらぼうに、すばらしい、いかす tally勘定、計算、(出費などの)記録、(競技の)得点、勘定を記録したもの、勘定書、計算書、割り符、合い札、符合する物 7度の世界チャンピオン、Juan Manuel Fangioの打ち立てた記録を2度破り、ほとんどべらぼうなところまで、水準を引き上げた。 シューマッハの栄冠は、19回の勝利_これはAlain

昔と今と。 ドキュメンタリー映画「ウィークエンド・チャンピオン 〜モンテカルロ1971〜」 感想文

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」からそのまま飛び出してきたかのような(と言うかこっちが本家なのだが)才気溢れた天才監督:ロマン・ポランスキーが、3度のF1世界チャンピオン:ジャッキー・スチュアートと過ごした、1971年のモンテカルロ・グランプリの横顔を切り取ったドキュメンタリーだ。 天才あるあるな鋭さを感じさせない、むしろ穏やかな人柄のスチュアート。これから待ち受ける苦い運命をまるで知らない、ポランスキーの溌剌さ。この二人のやりとり、事故のない安全なレース模

WW1の忘れたい/忘れられない記憶。「彼らは生きていた」と、3つの「西部戦線異状なし」。

悲惨な記憶、というものは、いとも容易く忘れられる いや、本心では忘れたがっていることに、そろそろ気づくべきかもしれない…。 それを考えるべく、今回は計4つの第一次世界大戦の記憶 を紹介する。 ピータージャクソンのドキュメンタリー 「彼らは生きていた」 2020年2月公開の「彼らは生きていた」 皆様はご覧になっただろうか? イギリス帝国戦争博物館に所蔵されていた西部戦線で撮影された未公開映像を元に、ピーター・ジャクソン監督がモノクロの映像をカラーリング。大戦当時は音を録音

お宝テープが、ドカ盛り_ドキュメンタリー映画「VHSテープを巻き戻せ!」

2020年の正月の特番でそれなりに衝撃だったのが、次のランキングだった。 「10代の認知度が0%だった言葉は?」 レーザーディスクがダントツトップ。10代の認知度が、0%だという。 言われてみれば、そうである。 今や重たくてデカくて壊れやすいLDなど過去の遺物。図書館、それもAV機器に凝っている一部のところじゃないと見かけないのが、当たり前。 他方、8位に「ダビング」という言葉がある通り、まだVHSは忘れ去られていない。だがいずれ、「ナニソレ」と言われる時代が来るのだろう