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花に嵐の映画もあるぞ(洋画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦… もっと読む
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#香港映画

仄暗い暴力性の底から。香港映画「カンフー・ジャングル」

爽やかなイケメン、キレのある身体能力、流暢な英語力、独特のカリスマ性。イップマンはじめとする様々な主役を演じ、インターナショナルな活躍をする、最後のカンフー・スターというべきドニー・イェン。 若い頃は B級作品の出演が多く、人気を支えたのは一部のマニアで、ようやく主役級のスターとなれたのは 40過ぎ。同い年のジェット・リーと比べて、遅咲きの俳優だった彼は、ブレイク後は瞬く間にスター街道を疾走。その活躍は皆さんご存じの通りだ。「スター・ウォーズ」に出演してるよ!と前世紀の功夫映

天に義あり、地に拳あり_「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱」

変換差し迫った香港。期待と不安で半ばする香港人は、だからこそ映画館の暗闇に駆け込んだ。 当然のように訪れた、興行収入うなぎのぼりの香港映画90年代黄金期。この時代を代表する傑作のひとつ:リー・リンチェイ(ジェット・リー)の香港時代の代表作:「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズより。 19世紀末の中国を舞台に、中国の伝説的な武術家である黄飛鴻(ワン・フェイホン)の活躍を描いた物語。黄飛鴻は、清朝末期の社会的な混乱と外国の侵略に立ち向かい、中国の伝統的な武術と

香港ノワール「インファナル・アフェア」_過去を捨てたふたり、生き残るはひとり。

毎年年末となると思い出す映画がある。 インファナル・アフェア三部作。 旧劇場版「エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に」の聖地たる新宿ミラノ座 、その2014年12月29日のクロージング上映:一日かけてぶっ通しで観たものだ。 忘れられないのは、「警察上層部に侵入しているマフィアの構成員」と「マフィアのボスの右腕となっている潜入捜査官」という設定。 その設定がうむ見事な緊張感、また香港映画らしい半ば強引なストーリー運びが、素晴らしい。 のちにマーティン・スコセッシの手で

香港ノワール「ヒーロー・ネバー・ダイ」_ SUKIYAKIという名の鎮魂歌。

誰にでも歌える、なんどもなんども口ずさみたくなる、不思議な曲がある。 「上を向いて歩こう」。 1961年に中村八大・作曲で坂本九によって歌われたこの曲は 歌詞が英訳され「SUKIYAKI」となって世界を回り、 いつしか70カ国、売上1400万枚というインターナショナルな流行歌として 世界中の人々の心の中に、溶け込んでいった。 そして、この「SUKIYAKI」を効果的に用いたのが、 世紀末1998年に公開された、香港ノワールのひとつである、本作だ。 この物語は、とある場末の