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車いすからベッドへの旅

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毎日、天井を見つめている。ベッドで横になっていると、ぼくの六畳の部屋半分と、ヘルパーさんが仮眠する隣の四畳半三分の一ほどしか視界には入らない。 かぎりなく狭い世界の中で、なにを考…
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#重力介護

包みこむ

 「友だち」を幅広く捉えれば、暮らしをサポートするヘルパーさんたちから立話(ぼくは電動車…

ボケたぼくへの贈りもの

 ぼくがまだ家族といっしょに暮らしていたころ(八歳まで)、おふくろに対して「どんな頭の構…

マイスタイル

 朝から青空だったので、ツーカーの仲の青年ヘルパーのMくんと夕ごはんの一品を買い出しに、…

介護という「仕事」に寄り添う哲学

  ある失敗  ぼくには尊敬する友人が三人いる。  中でも、京都の施設にお世話になっていた…

帰り道

 ぼくは東京が好きだった。 大阪へ出てきて間もないころ、学生バイトでぼくの夜間の暮らしを…

雨上がりの午後

  昨日、リハビリの先生から課題にされている一時間~二時間の「車いすに乗ること」のために…

足を使う

 コーチは、どんなときでも体幹がブレない。わが家へヘルパーとして来てから、一貫して体幹がブレない。もう十五年も経つというのに。  いつも、開始時刻の十分前にはチャイムを鳴らす。  体育会系らしい。  コーチの話によると、ヘルパーとして活動するのはぼくが三人目だったという。  それでも、どの人も四苦八苦する大便の介助や、着替えや、ベットから車いすへの乗り移りを大ベテランさんのようにこなした。  とにかく、下半身の安定感がそのコツのポイントのようだった。  コーチの凄いところの

残念なデキゴト

 週に二日しかない訪問入浴がスタッフの体調不良で、一日だけになった。 さすがにこの蒸し暑…

心地よい場所

 このところ、一歩ふみこんで自分の本音を投稿するようになって、季節に言いかえれば青葉若葉…

自己決定について

 人前でヘルパーさんをひどく怒鳴ってしまったことがあった。 乗り換え駅でのこと。  エレベ…

それぞれの価値観を認めあう自由

 大都会のターミナル駅から三十分ほど電車にゆられて、やや遠くに碧さをたたえた峰の連なりの…

でも、でも、デモ

 コロナが世界を席巻する前、何かとグチをこぼしあえるツレに誘われて、デモに参加する午後が…

スイスイ

 普段、ストローとして使っているビニールチューブを買い替えた。 暑い時期には欠かせないカ…

言葉にできない

 真夏の陽射しは痛いほどだった。 頭からダラダラと汗が流れて、容赦なく目に沁みる。  電動車いすに乗っていると鉄板に囲まれているようなものだから、半袖から出た腕はヘタをすればヤケドしてしまう。 Tシャツだけでなく、パンツ(下着)までびしょ濡れで、そのままオシッコをタレ流したとしても、どうでもいいほどだった。  気持ちはカラッポになって、コントローラーのレバーに触れる指先は、これまでの痛い目に遭った経験の積み上げだけで、障害物を避けているみたいだった。  道は舗装されていたけ