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車いすからベッドへの旅

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毎日、天井を見つめている。ベッドで横になっていると、ぼくの六畳の部屋半分と、ヘルパーさんが仮眠する隣の四畳半三分の一ほどしか視界には入らない。 かぎりなく狭い世界の中で、なにを考…
運営しているクリエイター

#友部正人さん

予告

 ぼくの初チャレンジの「長編になってしまった小説『恋人つなぎ』」ですが、投稿予定の一月中…

約束

 晩春の夕闇の中で、風と光の濃淡を織りまぜながら、枝いっぱいに薄紫の花房をわさわさと揺ら…

ことば

 最高の一日だった。  自分を確かめられた一日だった。  考えさせられる一日でもあった。 …

逆さ読み

 今日、手のひらに装着するタイプのワンキースイッチを使って、初めてひとりで本を読もうと思…

しなやかに、ゆるやかに

 ある日、友だちと話していた。何気ない世間話だった。 「友部さん(尊敬するミュージシャン…

ひとさし指

 ぼくのひとさし指から役目がひとつ消え、新たにひとつ加わった。  おそらく十代前半のころ…

自己決定について

 人前でヘルパーさんをひどく怒鳴ってしまったことがあった。 乗り換え駅でのこと。  エレベーターを出ると、車両への乗り降りのときにスロープを用意する駅員さんが待っていた。 駅員さんは横並びになったぼくたちのうち、ヘルパーさんだけに向かって「下車する駅のエレベーターの位置の関係で、先頭車両に乗られるのが便利だと思うのですが、どうされますか?」と訊ねた。  ヘルパーさんは間髪入れずに、「それじゃあ先頭のところへお願いします」と応えた。  その瞬間、ところかまわず暴走してしまうぼ

面倒くさがりのヘソまがり

 昨日、家事ヘルパーさんにつくってもらった「アジの南蛮漬け」がすこぶる旨くて、その感動を…

おいしい店に逢いにゆく

 コロナで引きこもる以前、ちょっとした時代の変化を実感するようになっていた。  ぼくは、…

週に三日は通う豆腐屋

 先日、ぼくはなじみの豆腐屋の店先で、いつも「おかあちゃん」と呼ばせてもらっている奥さん…

石垣島のやおやさんへ

 今日、注文していたパイナップルが届きました。 ほんとうに楽しみに、いただくことにします…

ありふれた一日

 いつものように、日付が変わってから眠りについた。 トイレに一度、寝返りのために二度、泊…

二千二十一年 五月十一日

 夕食を終えて何か一本書こうと思っていたら、一時間ほど居眠りしてしまった。  先週末、不…

ヘルパーさんごめんなさい

 みなさん、気がついておられますか?梅雨に入る半月ほど前に、すごくさわやかで天候が安定する時季が一週間前後つづくんです。樹々の緑の色合いもおのおのに深まって、最高に気持ちいい束の間なんです。  今朝のラジオの気象予報士さんによると、今日は大陸からの黄砂まじりの空気と入れかわり、澄んだ風と光が楽しめそうだって。  ビフォアコロナのころなら、夕方に川べりのパーソナルスポットで、思う存分に「ひとりの時間」を満喫していました。  ところが、いま、ぼくはほぼ二十四時間ヘルパーさんと