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車いすからベッドへの旅

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毎日、天井を見つめている。ベッドで横になっていると、ぼくの六畳の部屋半分と、ヘルパーさんが仮眠する隣の四畳半三分の一ほどしか視界には入らない。 かぎりなく狭い世界の中で、なにを考…
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2021年9月の記事一覧

たったひとつ

 原稿一枚(四百字)で十分な小ネタを書こうとしたら、ぼくの各マガジンの投稿本数が目に入っ…

冬の準備

 午後からやけに手足が冷たかった。 「急いでコインランドリーへ行ってもらって、ホンマによ…

ふわりとにぎる

 昨日の午後から、ずっと肌寒く感じる。 遅めの昼ごはんを食べて、短めの文章を投稿して、も…

清水さん

 noteの投稿作の整理と五百文字足らずの短編を一本書き終えて、遅めの昼ごはんを食べていた。…

それぞれの気持ち

 めったに入らないヘルパーさんだった。 昨日は気持ちが乗らなくて、直接ぼくのかかわらない…

いま

 インフォメーションへ行くと、いちばん近くのレジで彼女は溜まったおカネの勘定をしていたの…

てるてるぼうず

 太陽の位置を確かめながら、電動車いすのバッテリーの残量を示すランプにときどき目をやりながら、ぼくは気の向くままに知らない道を適当に歩いていた。  自宅を出てから三時間あまり、バスにも電車にも乗らず、ずっと歩き続けていた。  あの日、ぼくは作業所をサボっていた。 声の大きなスタッフが仕切っていて、障害のある人たちはぼくもふくめて、安心してモノが言えない雰囲気だった。 公には「代表」という役職に就いていることになっていて、現実との落差にぼくの気持ちはいつも澱んていた。  ガ

ひょうたんとクモ

 たったいま、ひとつ決めた。  来年、初蝶とすれ違うころ、台所側の軒先にひょうたんを植え…

超える

 試合時間は残りわずかになっていた。 真っ赤なユニフォームがグランドを縦横無尽に駆けめぐ…

ご苦労さまです

 週末になると、彼は施設へ面会にやってきた。  話したいことがいっぱいありそうな顔をして…

順番

 徒歩10分、いつものスーパーへ買い出しに行った。 冷蔵庫には、枝豆ご飯一食分と里芋の煮…

赤い傘

 朝から、ぼくは勝負に出た。 昨日、おとといと腰の具合が芳しくなくて、目標の二時間にはは…

とどまる、ながれる

 いつものように、枕もとのスピーカーから唄が聞こえている。 こうして一行がはじまったので…

ひとさし指

 ぼくのひとさし指から役目がひとつ消え、新たにひとつ加わった。  おそらく十代前半のころから、ぼくには誰にも教えたくない秘技を持ちあわせていた。  ズバリ、それは「目クソ」を取ることだった。 四十代半ばまではひとりで寝返りを打てていたから、目がしらや目じりに黄色がかった物体が鬱陶しさを運んでくると、両足の蹴る力を上体のひねりに連動させて横むきになり、さっそく作業に取りかかった。  普段は思うように動かない腕も、横むきになると片方は上半身でロックされる。  左右とも手首から