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車いすからベッドへの旅

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毎日、天井を見つめている。ベッドで横になっていると、ぼくの六畳の部屋半分と、ヘルパーさんが仮眠する隣の四畳半三分の一ほどしか視界には入らない。 かぎりなく狭い世界の中で、なにを考…
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2021年6月の記事一覧

おいしい店に逢いにゆく

 コロナで引きこもる以前、ちょっとした時代の変化を実感するようになっていた。  ぼくは、…

二○二一年 六月二四日

 午前七時十五分。 本格的に目を覚ます。いつものように、ラジコで「おはようパーソナリティ…

ぼくと佐藤くん

 今シーズンの阪神タイガースは、三十年以上もプロ野球から遠ざかっていたぼくの耳をラジコへ…

支えあう②

 「車いすからベッドへの旅50」で登場したヘルパーAくんの話をふたたび。  Aくんはサポー…

支えあう①

 今日のサポート(ぼくが使っているヘルパー派遣事業所では、介護をサポートと呼んでいる)が…

週に三日は通う豆腐屋

 先日、ぼくはなじみの豆腐屋の店先で、いつも「おかあちゃん」と呼ばせてもらっている奥さん…

青年

 その日、ぼくは若いヘルパーさんと市場へ買い物に出る道すがらだった。  路地から国道へ出る直前、大型の車が追い越して行き、目の前で信号待ちをしていた。  ぼくは信号がしばらく変わりそうになかったので、車の脇をすり抜け、歩道へ上がろうとした。  その瞬間、わずかな段差に上体がかたむき、サイドミラーに肩が触れてしまった。  謝ろうと思いふり返ると、大柄の男性が車から降りて「当たったやないか」と、強い口調で近づいてきた。  ぼくは謝ろうとしたけれど、聴き取ることが難しいようで、

共感と尊敬

 ぼくは、恵まれて生きてきた。  「障害」は個性だと実感し、いろいろな人に伝えながらも、…

石垣島のやおやさんへ

 今日、注文していたパイナップルが届きました。 ほんとうに楽しみに、いただくことにします…

原点へ立ち返る

 以前、車いすの人たちから訊ねられて「ムッ」ときてしまう質問があった。 「車いすでも入り…

三日前と今夜

 部屋の白い壁を眺めていた。  もし、どんな願いでもかなえられるのなら、ぼくの最期の息が…

二十時三十分のいまむかし

 パソコン入力の得意なヘルパーさんの泊まりのとき、夕食を早めに済ませスタンバイをする。 …

深夜の胸やけ

 久しぶりに、ヘルパーさんと買い物へ出かけた。ここのところ、悩まされている腰痛もおとなし…

高田渡さんのこと

 渡さんを想うとき、自分が障害者であることの幸運に感謝したくなる。  ぼくが大阪へ出てきてから、渡さんが逝ってしまうまでのおよそ十年間、京都・大阪・神戸でのライブはほぼ皆勤賞だった。  思い出はつきない。  ある日、かぶりつきの席で楽しんでいたときのこと、いつものとぼけた語りにのけぞって笑っていると、渡さんはツッコミを入れてくれた。 「お客さん、あんまり笑いすぎると、救急車を呼ばないと・・・」 客席は大爆笑につつまれた。  ふつう、障害者は笑いのネタにしてもらえない。 うれ