【銀河鉄道の夜】


美しいものに出会いました。

五月晴れのある日の夕暮れ、その広い公園の片隅には博物館があり、その中には小さなプラネタリウムがありました。太陽の下、散々遊んで疲れ切っていた私たちは、もう帰ろうとしていたのですが、星好きの長男がどうしても譲らず、であれば午睡にちょうど良いと納得して、そのプラネタリウムに入ったのでした。

題目は『銀河鉄道の夜』。昭和初期の童話作家、宮沢賢治の作品です。子どもの頃、映画も観ましたし、いくつかのプラネタリウムでもパターンを変え、何度か見ていました。話の大筋は知っていましたし、「今まで観てきたプログラムと大きな違いはないだろう、30分あればひと眠りできる」と、すっかりタカをくくっていました。

ところがです。このショーが素晴らしかったのです。その映像、音楽が宮沢賢治独特の表現を美しい旋律とともに際立たせ、自分があたかも主人公のジョバンニといっしょに銀河鉄道に乗り、美しい天の川を旅しているかのようでした。私は眠ることも忘れ、その哀しいけれど美しい世界の中にうっとりと浸かってしまいました。

画像1

『銀河鉄道の夜』は子どもの頃読んだことがある人が多いと思います。私も読んでいましたが、大人になると物語よりも、自己啓発やビジネス本などを好み、言葉の美しさ、言葉が醸し出す哀しさなどに触れる機会が少なってきていました。でも、大人になった今だからこそ、読むべき一冊なのかもしれないと思いました。(20190531)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?