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子どもを評価せず 受け止めたい 母としての葛藤から始まった、チームにいがた結成の想い

今回登場するのは、チームにいがたのリーダー「けいちゃん」こと、渋谷佳子さん。キーパーソン21に参加後、わずか数か月で新潟の学校でのプログラム実施へ!驚きの行動力の背景には、母としての葛藤、そして保育士として子どもたちと接する中で生まれた疑問がありました。

【図鑑No.28】
お名前

渋谷佳子(けいちゃん)
 お仕事
メンタルコーチ・ファミリーライフアドバイザー(※ )として
夫婦、親子、家族の関係を修復するサポートをすること。

※ 私自身、子育てや夫婦関係に挫折した経験から、心理学やコーチング、脳科学などを学び、2年前に起業(2年で1,000件以上のセッション)。
自分への愛情を増やすことで、まわりへの愛情も増やす。一人でも多くの人が、子どもや旦那さん、家族とどんどん仲良くなることで、未来の子どもたちの笑顔を増やしたい。

わくわくエンジン
自分と未来にわくわくする子どもと大人を増やすこと

保育士としてはできるのに、親としてはできない


ーー 今のお仕事(メンタルコーチ・ファミリーライフアドバイザー)を始めたきっかけは、「子育てや夫婦関係に挫折した経験」とのことですが、どんな経験だったのでしょう?
 
私は14年間、保育士の仕事をしていました。
保育士は、いわば“子育てのプロ”ですが、仕事ではできることが、親としてはできないという葛藤がありました。

例えば、
いつも家事で忙しくてイライラしてしまい、子どもの話を聞くことができない。完璧主義で、きちんとしないと!という思いが強すぎて子どもを枠の中に押し込める。感情の波が激しくて、子どもにあたることもありました。

長男が小2の時に、床に頭をガンガン打ちつけて髪を抜き始めたんです。

「ぼくが悪いんだ、ぼくがいなくなればいいんだ」

ああ、私のせいだ!って思いました。私が息子のことを責めて、追いつめていたからだと。息子のことを受け入れたいと思っていたし、認めてあげなくちゃいけないと頭ではわかっていたのに、できなかったんです。

shi_なやム2

このままではいけないと、「アドラー心理学」や「脳科学」、「コーチング」のセミナーを受けに、東京まで通うようになりました。

セミナーに行ったら、魔法のように180度変われるんじゃないかと期待していたのですが、そうはならなくて。行ったけど変われない!と、
また自分を責めたり

でも、「できなくてもいい。選択肢の一つとして持っていればいい」と言ってくださった方がいたんです。この言葉に励まされながら、3か月、1年とたつうちに、子どもとの関係も変わってきました。

気づいたのは、子どもの話を聞いているようで、実は聞いていなかったということ。子どもを自分の思い通りにコントロールしたいという気持ちがあったから、子どもの話を「それは○○でしょ」とジャッジしてしまっていたんです。

そういう自分がいることを認めていくうちに、子どもの話も聞いて受け止められるように変わっていきました。そうしたら、息子が「あれ?今日は違うなー」と。それまでは何をきいても「ふつう」「べつに」と答えていた息子が、だんだん色々な話をしてくれるようになりました。

私は誰よりも自分の話、自分の声を聴いていなかったからこそ、子どもの話も聞けなかったことに気づいたのです。

どうすれば、子どもたちは自分の未来に希望が持てる?


ーー「子どもをジャッジしない、受け止める」ということを意識し始めて、気になったことはありますか?

保育士として子どもたちと接する中で、気になっていることがありました。当時、生後6か月から小学校6年生までの病気の子どもの保育をする病児保育室で働いていたのですが、子どもたちと1対1で話す中で、学校や親には話せないことを私に話してくれることがありました。

例えば、
「親に公務員になれと言われている」
「100点をとらないと怒られてしまう」
そして
「どうせ大人って大変なんでしょ」という子どももいました。

この子たちがどうやったら自分の未来に希望を持てるのか?
それをずっと知りたいと思っていました。そんな中、Yahoo!ニュースで、キーパーソン21代表理事・朝山さんのインタビューを読んだんです。

「これだ!」って思いました。「わくわくエンジンⓇ」の答えは人それぞれ自分の中にしかない、それを内から引き出す、というところがいいなあと。これなら、子どもたちが評価されずにすむと思いました。このようなプログラムが、子ども向けにもあるとは知りませんでした。すぐにキーパーソン21のwebサイトを調べて、もう直感で、プログラムを体験しに東京まで行きました。

やればできた! チームにいがたの結成秘話


ーー プログラムを体験してみて、どうでしたか?
 
これは子どもたちにぜひとも届けたいという想いが強くなりました。
そこから1週間後、子どもの面談があり、学校に行ったんです。
帰りに車まで戻った時に、校長室の窓の外から、校長先生がいるのが見えて。今、行ったら、話を聞いてもらえないだろうかとふと思ったんです。
 
ーー それまで、校長先生とお話されたことは?
 
ないです!

それはもうすごく緊張したけれど、思いきって校長室をノックしました。あとは熱量でなんとか伝えて、そうしたら校長先生がなんと!
「ぼくも、わくわく大好きなんだよね」と言ってくださって!

そこから6年生の担任の先生と相談してくださり、総合の時間の「キャリア教育」として、全5クラスで「すきなものビンゴ」(わくわくエンジンを見つけるプログラム)を実施することになりました。

でも当時、新潟のメンバーは私一人。
学校の先生方には、「メンバーはいます!」と見得を切ってしまったので、そこからが大変でした。仕事で書いていたブログやSNS上で発信し、興味がある方はご連絡ください!と呼びかけました。

そして、連絡をくださった方と1対1でお会いしてみて、実際には初対面の方も多かったのですが、そこから13人もの素敵な仲間が集まりました。

最初の校長先生への相談が7月。
プログラムの実施はわずか数か月後の12月!
やればできるんです!

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初めての学校実施は、子どもたちがとても楽しんでくれました!
私たちはみんなぐったり。
夕飯も作れないぐらいでしたが、子どもたちからは
「将来やりたいことが変わってびっくりした」
「好きなものがないと思っていたけれど、いっぱいあった」
「自分のわくわくエンジンに気づいて、そこから立てた目標はずっと続いている」
など、嬉しい声もたくさん届きました。

先生に伺った話では、普段話さない子がよく話したり、手を挙げていたりという様子も見られたそうです。そして、担任の先生方が毎年、申し送りを書いてくださり、最初の実施から今年でもう4年目!毎年、欠かさずプログラムを届けることができています。
 
ーー 新潟では、今、どれぐらいの学校実施をしているのですか?
 
これまで、のべ2,000人以上の子どもたちにプログラムを体験してもらいました。プログラムを体験した先生が申し送りをしてくださったり、異動先の学校に導入してくださるケースもあります。

また、私たちチームにいがたでは、「すきなものビンゴ」を紹介するチラシを各学校にポスティングする活動もしているんです。コツは1学年のクラス数が少ない学校を選ぶこと。クラス数が少ない方が、プログラム実施のための時間調整をやりやすいからなんです。さらにポスティングの時期は先生が異動後すぐの4/1,2がよいという話も。このような地道な活動で、学校実施は増え続けています。

shi_チラシ

今年は、新しい取り組みにもチャレンジしました。
ある学校で、1年生から6年生まで全員に「すきなものビンゴ」を体験してもらったのです。
低学年用にはプログラムの内容を短くする工夫をしましたが、年齢を問わず、「自分の好き」をしっかり語れるんです。特に、4年生は「好き」を探すのが止まらなくなり、用紙の裏面まで使い始める生徒がいたり、ビンゴを何周も繰り返していたり、自分たちで自由に楽しんでくれていました。

意識化・言語化・見える化」が大事!


ーー 渋谷さんご自身は、わくわくエンジンを見つけて、何か変化がありましたか?
 
私のわくわくエンジンは

「自分と未来にわくわくする子どもと大人を増やすこと」

これ自体はこれまでも漠然とわかっていたことでした。

でも、ただ漠然とわかっていたものを
「意識化」して、「言語化」して、「見える化」する
このプロセスこそが大事で、「すきなものビンゴ」のプログラムの素晴らしいところだと思うのです。きちんと「見える化」するからこそ、よりしっかり意識し、具体化していける。
だから、行動につながっていくと思うのです。
 
わくわくエンジンを意識することで、子どもとも、より仲良くなれているように感じます。子どもの好きなことにアンテナが立つようになり、「先生の言うことをきかない」などの表面上のことに捉われず、「なんでこの子はここが好きなんだろう?」と本質に目がいくようになりました。

例えば、
ゲームが好きなら、このゲームのどんなところが好きなんだろうと考えるようになりました。子どもにとっても、自分の好きなことに興味をもってもらえることは嬉しいことですよね。
まさに、
「子どもに関心を持つ」のではなく、「子どもの関心に関心を持つ」です。

shi_家族

先生方と一緒に子どもを育てる大人でありたい


ーー これからしてみたいと思うこと、こうしてみようと思うことはありますか?

新潟で「すきなものビンゴ」が当たり前に取り入れられること、そのためにもこのプログラムの本質を腑に落として、子どもの可能性を引き出す大人を増やすことをやりたいです。

「すきなものビンゴ」を実施しに行くと、「そんなのできないよ」と最初はちょっと斜にかまえる先生もいるんです。でもプログラム実施後クラスの良いところをお伝えすると、先生方がいきいきするんです。とても喜んでくださって、中には涙ぐむ先生まで。

先生方も評価される立場にあり、自分のクラスの評価を気にしていたんだなと、そこで気づきました。だから最初は、部外者である私たちを警戒していたのだと。

学校現場に要望を言うのは簡単です。でも、私は一緒に現場に入り、先生方の負担を少しでも軽くできればと思うのです。「すきなものビンゴ」が、先生方の心を楽に、元気にする時間にもなってほしい。だから、プログラムの後には、クラスのいいところをいっぱい具体的にお伝えするようにしています。

ある学校の先生が生徒たちに、「すきなものビンゴ」は先生たちだけだと実施できない、と話してくださったことがあります。なぜなら先生はどうしても生徒を評価しなきゃいけない立場だから。このプログラムは、親でも先生でもない第三の大人が何のジャッジもせずに生徒の柔らかい部分を受け止め、認める時間だから、先生以外の大人が必要なのだと。

プログラムの本質を表現した言葉だと感じました。先生の言葉を聞いて、以前は「このシート、先生も見るの?」と気にして書き直していた子どもたちも、今では遠慮せずに発言してくれるようになりました。たくさんの先生方と、このような子どもを一緒に育てる関係性を築いていけたらと思います。
子どもたちをジャッジせずに受けとめ、わくわくを引き出す、そういう活動をこれからも広げていきたいです。 

shi_チーム

(あとがき)
熱意は人を動かす。けいちゃんの体当たりエピソードを聞きながら、胸が熱くなりました。初対面で話を聞いてくれた校長先生も、SNSをきっかけに集まってくれたメンバーも、子どもたちのわくわくを引き出したいという熱意に共感したからこそ。わくわくエンジンを「見える化」すると、こんなにすごいパワーにつながるんだなと改めて感じました。
(ライター・ずーみん)

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