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「10年目の東北道」を走りながら考えたこと

今日からしばらく僕たちPLANETSが創刊する定期刊行の新雑誌「モノノメ」の最新号について、目次を追いながら紹介していきます。
なぜいま「紙の雑誌」なのかとか、編集のコンセプトだとか、流通の形式だとか、そういったことは別の記事に書いたので、こちらを読んでもらえると嬉しいです。

さて、最初に取り上げるのは巻頭の紀行文「10年目の東北道を、走る」です。あの震災から10年、僕たちは仙台から石巻、女川、気仙沼、そして陸高田と大きな被害を受けた土地を回ってきました。この記事はその旅の記録です。具体的には、石巻と気仙沼それぞれの街で復興にかかわってきた二人の知人を訪ねる旅です。

1日目に仙台に入って、被害の大きかった荒浜と近くの名取市の閖上地区を中心に取材しました。この付近は最低限の造成だけ行って事実上放棄されたに近い場所が多く、その何もなさと平坦さが強く印象に残りました。

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2日目は石巻と女川を回りました。石巻で復興運プロジェクト「石巻2.0」を主催する松村豪太さんに取材するのが目的です。石巻は石ノ森章太郎ゆかりの土地で、街にはサイボーグ009や仮面ライダーなど石ノ森の生んだキャラクターたちの立像が並んでいます。松村さんは僕の高校の先輩で、津波に襲われる前から既に「ダメになっていた」この街を「復興」することに意味はない、この復興をきっかけに中央から流れて来る予算をどのコネクションが獲得するかというゲームに支配された地方都市からの脱却のモデルを作るしかないと考えて10年間やってきたと言います。その松村さんが10年間でできたことと、できなかったことについて話をしてもらって、意見を交換してきました。写真は石巻の市役所前です。市役所とイオンのショッピングモールが同じ建物に入居し、その入口に仮面ライダーV3が立つ。なんというか、とても象徴的な絵だと思います。

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3日目は気仙沼と陸前高田に足を伸ばしました。ここで取材したのは気仙沼でさまざまな復興事業にかかわりながら、気仙沼ローカルのコーヒーチェーン「アンカーコーヒー」を経営する「やっちさん」こと小野寺靖忠さん。やっちさんも、この10年には手応えと失望の両方を感じていて、その上で「これから」どうするかを気仙沼港近くにあるアンカーコーヒー内湾店で、海を見ながら二人で話してきました。それは震災がどうとか、復興がどうとか、どういったことを超えていま、地方でどう人間と土地との関係を結び直すのか、それを根本的に考えるための議論になっていったと思います。

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僕が彼らと議論してきたことはどちらかといえばこの10年に起きた生々しく、えげつなく、そしてどうしようもなく愚かなことについての話が多いのですけれど、これらの土地にはそれぞれの豊かさがあり、僕は純粋にいい土地だと感じて帰ってきました。醜いのはそこに人間が作り上げてしまった目に見えないしがらみだけで、土地そのものは圧倒的に美しい。それをたっぷりと割り付けた(なんと32ページ!)写真で感じてもらえたらと思います。繰り返しますが、貧しいのも醜いのも、決して土地そのものではない。そのことを強く感じた旅の記録です。

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僕と僕のメディア「PLANETS」は読者のみなさんの直接的なサポートで支えられています。このノートもそのうちの一つです。面白かったなと思ってくれた分だけサポートしてもらえるとより長く、続けられるしそれ以上にちゃんと読者に届いているんだなと思えて、なんというかやる気がでます。