遅いインターネットロゴ_横長_

「遅いインターネット(先行公開)」#9 民主主義と立憲主義のパワーバランスを調整する

 そこで本書では三つの提案を処方箋として示したい。そのうちふたつは、既に議論されているものを紹介する。本題は最後のひとつ、つまり三つ目の提案だ。

 まず第1の提案は民主主義と立憲主義のパワーバランスを、後者に傾けることだ。

 立憲主義とは統治権力を憲法によって制御するという思想で、そのために民主主義としばしば対立関係に陥る。なぜならばたとえそれがどれほど民主的に設定されたものであったとしても、過去に定められた憲法を現在の民意が支持するとか限らないからだ。したがってあらゆる民主主義は憲法改正の手続きを憲法自体に組み込むことになる。言い換えればそれが民主的な憲法の条件で、ここで民主主義と立憲主義のパワーバランスが設定されることになる。そして情報環境的にポピュリズムによる民主主義の暴走リスクを高く見積もらざるを得ない今日においては、このパワーバランスを立憲主義側に傾ける必要がある。これからは基本的人権など民主主義の根幹に関わる部分は立憲主義的な立場を強化することで、(奇妙な表現になるが)民主主義の暴走から守るほかないのだ。

『遅いインターネット』(幻冬舎)2月20日発売予定!
インターネットによって失った未来をインターネットによって取り戻す――
インターネットは世の中の「速度」を決定的に上げました。しかしその弊害がさまざまな場面で現出しています。世界の分断、排外主義の台頭、そしてポピュリズムによる民主主義の暴走は、「速すぎるインターネット」がもたらすそれの典型例です。インターネットによって本来辿り着くべきだった未来を取り戻すには今何が必要なのか、提言します。


ここから先は

2,052字

¥ 500

僕と僕のメディア「PLANETS」は読者のみなさんの直接的なサポートで支えられています。このノートもそのうちの一つです。面白かったなと思ってくれた分だけサポートしてもらえるとより長く、続けられるしそれ以上にちゃんと読者に届いているんだなと思えて、なんというかやる気がでます。