大規模集団フィクション創作「プレイ・バイ・ウェブ」の来歴と未来(後編) PBW『ケルベロスブレイド』運営トミーウォーカー社インタビュー(PLANETSアーカイブス)
今朝のPLANETSアーカイブスは、「プレイ・バイ・ウェブ(PBW:play by web)」業界最大手のトミーウォーカー代表取締役・上村大氏、同社取締役・一本三三七氏へのロングインタビュー後編をお届けします。インターネット時代に入って、郵便を利用した「プレイ・バイ・メール(PBM:play by mail)」とは大きく様変わりを遂げたPBWサービス。後編では、トミーウォーカー社の創業から『ケルベロスブレイド』に至るまでの作品の変遷を追いながら、創作カルチャーとしてのPBWが担いうる役割とポテンシャルを展望しました。(聞き手・構成:中川大地、構成協力:籔和馬)
※この記事は2015年10月14日に配信された記事の再配信です。
※前編はこちらから
トミーウォーカー創業と00年代のTRPGルネサンス
――トミーウォーカーのPBWサービスが始まったのは2003年ですね。このきっかけは、どういう状況だったのでしょう?
上村 私はふつうに、テラネッツをクビになりました(笑)。生意気なやつだとかそんな理由です。で、休眠状態の会社を買い取ったところからトミーウォーカーとしての活動を始めました。
一本 自分の方は、最終的に給料が期日通りに払われない状況が常態化したからですね。
その状況で、お客様から事前にお金を集めるコンテンツを優先して作れみたいな命令が来るので、これはダメだなと。
――PBW事業と同時に同タイトルのTRPGのリリースも行われていますが、かつての遊演体における『ビヨンド・ローズ・トゥ・ロード』のように、TRPGの販促のためのPBWという位置づけだったんですか?
上村 いや、むしろPBWの知名度アップのためにTRPGの企画を立てた感じです。ちょうどこの時期にTRPG専門誌「ロール&ロール」が創刊されて、グループSNE制作の新作TRPG『六門世界RPG』の特集記事が載っていて、その記事に触発されて第1作目のPBW『無限のファンタジア』(2003〜2009年)と連動してTRPG版を作り始めました。
一本 プログラムが判定をするにはシステムがなければいけません。コンピューターのためのルールとマスターさんが理解して判定するルールの両方を満たすものが、優れたTRPGシステムだったのです。
上村 細かいプログラムは、マスターは理解できない。ファジーなやつはコンピューターが理解できない。そこでTRPGがちょうどよかったという感じです。だから、TRPGのルールを作ってからPBWを作りました。せっかく作ったので、創刊号の出たばかりの「ロール&ロール」にお願いしました。ちょうどTRPGを扱っている雑誌もなかったことですし。「JGC」というTRPGのイベントを始めた時期でもありましたので、それの機関紙の役割も果たしていました。
――「ロール&ロール」の創刊タイミングは、個人的には不思議な符合を感じました。実は同じく2003年、公式BBS上でPBW的な「世界の謎」ゲームなども派生して盛り上がった『高機動幻想ガンパレード・マーチ』などのアルファ・システム作品のヒットを受けて、自分も『アルファ・システム サーガ』という本を作りました。この中で付録として、芝村裕吏さんがデザインしたオリジナルTRPG『Aの魔法陣』のルールを掲載していて、「ロール&ロール」さんの取材も受けたんですね。
つまりこの年、トミーウォーカーさんの同時多発的な動きが色々あって、TRPG文化がインターネット普及による情報環境の変化を受けて、何というかTRPGルネサンスみたいなことが起こっていた印象があるのですが、いかがでしょうか。
上村 TRPG業界は、安田均さんなど数人のキーパーソンの鶴の一声で動くところもあるので、そういう個別の人脈からの動きが波及した面があるかもしれません。
――ネットがあることで、TRPGのプレイが活性化した面はありますか?
上村 特に大きかったのは第2作目の『シルバーレイン』(2006〜2012年)の時、ユーザーさんがネットにTRPG版のリプレイやセッションレポートなどを上げていました。こちらとしても、無料のチャットプログラムを作ったり、とものさんの連載記事を作ったり、1ページで始められるシナリオを80個くらい掲載したり、サンプルキャラクターを100人くらい出したりと、サポートを充実させていました。効果は測定していなかったので確証は持てませんが、TRPGユーザーの人がインターネットに来てくれるきっかけの一つになったのではないでしょうか。
――『シルバーレイン』開始後にニコニコ動画が登場して実況文化が根付いたことで、かつて冴島鋭士さんたちが過去、公民館などでやっていたような公開セッション的なものが、誰でも手軽にできる環境になりました。そのことによって、近年TRPGのカルチャーが再活性化したような印象も受けるんですが、いかがでしょうか?
上村 ネット動画文化によってTRPGが見直されるようになったのは、ここ2〜3年の話ですね。率直に言えば、『クトゥルフ神話TRPG』がブレイクしたからです。昔から『クトゥルフ』はどこのコンベンションにも行かない人たちがひたすらやり続けるものだったんですよ。当然、中高生が始めるものだし、昔からプレイしている大人は誰とも話をしませんでした。コンベンションに行って広くいろんな人とプレイする必要性を感じていなかったんだと思います。
一本 ラブクラフト愛好家という、また別種のグループも存在しましたしね。
上村 俳優の佐野史郎さんなども、その流れでクトゥルフだけをプレイしていらしたらしいですね。
――『シルバーレイン』の頃、TRPGをする人も盛り上がりつつ、PBWとの相互作用というものあったのですか?
上村 TRPGからPBWにきてくれた人は、他のところからPBWを知った人より残りやすかったです。
一本 TRPGのセッションで『シルバーレイン』の時だけ、卓に女の子がいましたね。
上村 半分以上のプレイヤーやマスターが女性でした。PBMは男性主導のゲームだったのですが、PBWは女性がプレイヤー全体の半分を占めます。我々はテラネッツ系から入っているので、やはりどこかにファンジン気質はあるのかなと思います。特に女性向けのゲームを意識して作っているつもりはないんですけど。
第1作『無限のファンタジア』での試行錯誤
――これまで運営されてきた具体的な作品史について、うかがっていきたいと思います。独立第1弾のTW1『無限のファンタジア』は、王道のファンタジーものという印象ですが、ストーリーや世界観にはどういった狙いがありましたか?
上村 自分ではオーソドックスなつもりで作りました。私が普通のファンタジーものに関わったことがなかったことと、一本から「最初はファンタジーでいこうよ」と提案されたからです。一見とっつきやすいものでいて、解決しないテーマのものにしようという目論見がありました。
一本 多くのお客様は「戦闘」は好きでも「争いごと」は好まないので、負けたら国の民が全員死ぬくらいの設定をつけましょうということになりました。
上村 戦うことにはしたかったのですけど、MT9のときに、「仲良くした方がいいに決まってるじゃん」という結論が自明になってましたので、そこにもっと葛藤を引き起こすようなテーマがなければならない。
そこで、負けたら死んでモンスター化するというルールが盛り込みました。プレイヤーの国は小国なので、とにかく戦わなければいけません。自分たちが勝利した場合、相手を救うこともできるようになる。このように、すぐには答えが出ないテーマを出しました。
▲『無限のファンタジア』トップ画面 (c)トミーウォーカー
――つまり、意味のあるかたちで、いかにプレイヤー間のドラマチックな葛藤や戦いを発生させるか、という点に腐心されたわけですね。
上村 そうです。敵のことを仮に可哀想だと思ったとしても、戦う理由づけをする必要がありました。グリモアという宝石があるんですけど、これに誓いを立てると冒険者は強い存在になります。各国は、冒険者を兵士かつ政治の中心として使っています。一般人と違ってレベルの上がる能力を持っているので、とても強いんです。
ただし、グリモアを敵国に取られてしまうと、冒険者はモンスターになってしまいます。グリモアを使った国を作った以上は、殺し合わないといけません。ただ、PCたちの国は相手をモンスターにせず仲間にできます。自分たちが世界を攻め上るのは、みんなのためになります。
一本 しかし、相手国はそんな話を信じません。
上村 絶対に和平が成り立たない状態です。最初の3ヵ月くらいは、テロで占拠される話を入れています。たまたまそいつらがグリモアを取れないドラゴンだったのでよかったのですが、グリモアを取られたらゲームオーバーであることを説明します。
――そういう状況設定を踏まえて、プレイヤーのアクションによって当初の予定と変わったことってありますか?
上村 最初の敵であるリザードマンを仲間にするか否かが選べたんですね。当初は世界観を説明するための噛ませ犬的な存在に考えていた、こいつらが仲間になってしまうという波乱の展開で、いきなり予定が狂いました。
一本 リザードマンを味方にしたことで、当初味方になるはずのライオン獣人が敵になってしまった(笑)。
上村 この件で、1年以内にゲームを終了する計画は破綻しました(笑)。他には、この世界にはいくつかの大陸があります。最初の大陸、ランドアースの東に楓華列島というところが見つかったのは、あるキャラクターが「東の方には何があるのだろう」と船で行ったからです。元々あったのですが、出なくてもいいやくらいの認識でした。また、中世風のマップを使用しているので、マップの海の隅っこによくわからない怪物が描いてありした。「これって何かいるんじゃない?」と言い出したやつがいて、そこに向かいました。そしたら、本当に地図そのまんまの大きさの怪物がいて(笑)、新しい冒険のきっかけになったりしました。
――PBMではそこまでガラッと変わることは、あまりなかったですよね。
一本 PBMは10回程度で終わらなければいけないので、プロットはガチガチに決まっていました。
上村 これはどの会社でも同じでした。PvPをやるところでもだいたい決まっていました。
一本 PvPの多くは協力しないと倒せない敵が出てきます。
上村 よって、これまでガラッと変わるのはPBWならではの特性だと思います。一本さえどうにかまとめれるのならば、どうにかなるということです(笑)。
一本 時間さえあれば、そのうちなんとかなります。
上村 マスターを全員呼んで打ち合わせというよりは、我々2人の間でなんとかなれば回ります。
――マスターさんの中で、シナリオの中核を担う人はいないのですか?
上村 『無限のファンタジア』では他のマスターさんより権限を持っているマスターさんがいました。ただ、この方がたくさんシナリオを書くかと言えばそうではありません。
一本 グリモアガードという特務部隊を作り、その掲示板を担当マスターが運営しつつ、掲示板に参加している人だけが参加できるシナリオを運営する事ができるという形式でした。
重要な国境地帯を守ったり、敵国の奥深くまで探索のために潜入したりといった特殊な任務を行う部隊でしたね。
上村 グリモアガードにいる間は、他のゲームに参加できませんでした。今思うとやっぱり負担が大きかったかなと反省しています。
一本 掲示板の運営が負担になって、シナリオを運営できなかったり、お客様のやろうとしている事を、うまくシナリオに落とし込めなかったりで。それが原因で、マスターをやめてしまった人も出てきました。
上村 この単位までミニマムにしても、やはりPBM時代にあった構造的問題は発生するんだなと思いました。
一本 掲示板の運営だけでは仕事になりませんし、マスターにとっても良いことは無かったと思います。
上村 反省点は多いのですが、問題点がわかったのでやっておいて良かったと思います。
一本 やっていなかったら、ずっと「これをやったら面白いのではないか」と言い続けていたような気がします。
――本作以来、だいたい1作品の運営期間は6年前後になっていますが、これは何故ですか?
上村 最初に考えた話が終わるのが、今までたまたま6年程度だったんです。どうせストーリーは変わるので、最初にエンディングだけおおまかにストーリーを考えておきます。『無限のファンタジア』の場合は、次元の狭間からドラゴンがやってきて、それを全部やっつけたら終わりと考えていました。最初は1年で終わるつもりでした。大陸を半年で平定して、残り半年ドラゴンと戦ってエンディング。しかし、ちゃんと掘り下げていくと全然終わりませんでした。そこから6年かかってしまいました。
以来、6年間ユーザーがついてきてくれるのだったら、次作以降もそれくらいのスケール感の世界観と内容で作ろうということになりました。
――期間が長くなると、ユーザーがどれだけストーリーの流れを把握しながらプレイできるのかが気になりますが。
上村 我々は一貫して把握しないでくださいと言っています。詳しくなってから調べればいいんですよ。PBMの場合、ストーリーを全部把握していないと有効なプレイングができませんでしたが、PBWは依頼単位なので、簡単な世界観をわかっていればいいんです。
一本 参加した結果、知りたくなって調べるのは大歓迎です。ですが、最初から全部知っていなければ参加できないという風潮は、よろしくないですよね。
上村 世界観の謎とかを深く考察する楽しみ方もあってしかるべきだと思うし、我々的にもそういう人たちに楽しみを提供できるのは嬉しいという気持ちはありますけどね。
現実世界との同期を試みた第2作『シルバーレイン』
――次にTW2『シルバーレイン』についてお聞きしたいんですが、この作品は現代日本を舞台にした学園伝綺ものですよね。これについての意図も教えてください。
一本 もっとみんながロールプレイングしやすいように、現代ものになりました。現代世界を舞台にすると途中参加の人や一度やめて戻ってくる人がゲームの世界に入りやすくなります。また、お客様から現代ものをしてほしいという意見も多かったんですよね。
上村 学園ものにした意図は、『無限のファンタジア』が「股旅もの」だったからです。そこで今回は「拠点もの」にしようということになりました。股旅ものであるがゆえの問題として、『無限のファンタジア』では「ラスダン(ラストダンジョン)前現象」が起きました。要は『FF』などでよくある、ラスボスを倒す前に隠しイベントを探し始めて、なかなかクリアしないという現象ですね(笑)。この状態が約1年間くらい続いたのです。
▲『シルバーレイン』トップ画面 (c)トミーウォーカー
――マスターがクリアするように仕向けることはできなかったんですか?
一本 この場合、常にお客様のキャラクターの方が偉いので、お客様の想像を覆せるNPCはいません。
上村 選択肢をきちんと用意しないと、運営の誘導になります。そこで我々が思いつく選択肢を全部並べます。で、いちばん攻めない選択肢が常に選ばれ続けました(笑)。ラスダン行かない問題に結構悩まされました。
――プレイヤーさんが終わらせたくない気持ちがあるってことですか?
上村 キャラクターをその世界に住んでいる人間として考えると、基本的には冒険者という設定ですが、プレイヤーさんは冒険者ではありません。日常生活を送る方が楽しいという思考にロールプレイにハマればハマるほどなります。この日常を守るためにプレイしている方が多かったんです。
――「冒険者の酒場」型のPBWの構造だと、否応なく状況が動くというシナリオが作れなさそうですね。
上村 難しいけど、まったく不可能というわけではありません。無理やり状況を動かすことはできますが、それは敵の秘密兵器が発動するパターンに絞られます。
一本 しかし、あまりシナリオ通りにプレイさせようとすると、お客様の喜びを減少させるので、なるべく避けます。
上村 最終手段として、ずっと仕込んでおいた伏線を発動させるなどですね。このように股旅ものの問題点が解決していなかったので、拠点ものに決定しました。要するに『水戸黄門』ではなく、『必殺仕事人』スタイルでいきましょう、ということです。
拠点ものでは、拠点に愛着を持てなくてはいけません。しかし、拠点ものでディティールを細かく書くことはできないと判断しました。細かく書くと、それを読んでいない人をスポイルしますし、そもそもそんなに細かく書けません。となると、現代に設定するしかなくなりました。
舞台が学園になったもうひとつの理由は、現代もので大人のキャラクターが偉そうにならないように描く自信が、当時はなかったからです。それにプレイしてくれるのは学生が多いだろうということもありました。年寄りを演じるのができないのは残念なことですが、年の功がプレイングの不平等にならないよう、全員学生ということになりました。
――『シルバーレイン』の学校はどこにあるんですか?
上村 鎌倉ですね。鎌倉を舞台に選んだのは、最終的に大きな戦争になった時に防御力が高い、おしゃれで寺社仏閣が多い、海があるので自然に水着が出せるという点からです。あと、方言ではないところもです。方言を文章化するのは大変なので。逆に、世界設定で東京などとてつもない大都市を舞台にするのは難しいですし。
――PCが学園の生徒である設定だと『蓬莱学園』がそうであったようにマンモス校にならざるを得ないですよね。『シルバーレイン』ではいかがでしたか?
上村 巨大学園にはしたくなかったです。巨大にすると情報量が莫大になるからです。『蓬莱学園』は学園内で全てが完結するじゃないですか。それではシナリオに出発できなくなります。そこで、たくさんのキャンパスがあるという設定にしました。
一本 巨大学園だと軍隊っぽさがでてしまい、組織力を後ろ盾にしてしまうのでよくないと判断しました。
――部活動などはプレイヤーに委ねる感じですか?
上村 コミュニティの名前が結社だったんです。学校のクラブを偽装して魔術クラブを作っているという設定でした。これが部活動となっていました。掲示板のロールプレイで空手の練習をしたり、サッカーの練習をしたりしていました。
ただ、現代学園ものの設定でひとつ難しかったのは、宝箱がないということです。ダンジョンを探索するイベントがあるのですが、洞窟に潜っていって宝箱を取るという展開は、現代ものではありえません。では「現代において人々がダンジョンのように行くところはどこか」という話になり、心霊スポットが導き出されました。心霊現象に逢うと、宝が落ちるという設定にしたのです。
そこに「これはゲームではなく、人知れず現実に起きている出来事です」というフレーバーを入れ、『シルバーレイン』は完成しました。
――現実とのリンクというのは、具体的にはどういうことですか?
上村 ゲーム内の1秒は現実の1秒と同じで、また日付も同じでした。そのことによって現実で事件が起きれば、ゲーム内でも起こっているだろうということにしたわけです。
――『シルバーレイン』も完結するのにやはり6年間かかったんですよね。そうなると、リアルタイム進行だと卒業とか起きますよね。学園もののストーリーの場合、中高の3年間という時限性が世界観の軸になると思うんですが、そういうことにはしなかったんですか?
上村 しなかったです。最初にも言ったように、年上が偉いとされる問題を解決するための学園設定だったので、学年に意味を持たせることは一切しなかったですね。高2で始めたら2年で卒業してもらうことになります(笑)。卒業後は社会人か大学生になれます。
一本 小・中・高一貫なので、小6と高3が徒競走で一緒になって走るんですよ(笑)。
上村 あと無駄に学校の席順表もあったので、そこで学年が上の方が有利になります。それ以外は学年による優位は一切作りませんでした。
――システム的な部分で『無限のファンタジア』から変更した点はありますか?
上村 拠点ものになったのでストーリーの組み立て方が違う点、現実だと信じてもらえる仕組みづくり、外遊している敵が勝手にやってくる設定作りですかね。カードを使って変身する設定を作っていたのですが、作中に出てくるカードを印刷して郵送していました。システム的な面で大幅な変更はありません。
――舞台となっている場所が現実に行ける場所ですよね。それによる面白い展開とかはありましたか?
上村 マスターさんがテレビで観たものをシナリオにするのは『無限のファンタジア』の頃からありましたが、『シルバーレイン』ではファンタジーに翻訳する手間がないので楽であったと聞いています。
プレイヤーさんでは、ロケ地を写真撮影しに行った人もいましたし、最後のオフ会で『シルバーレイン』の大きな戦争の舞台となった場所を10回連続企画で回りました。ゲーム内でイベントがあったと理由だけで、奈良の葛城山を登り、山頂の山小屋でオフ会をしたりしました(笑)。
一本 とは言っても、震災や台風など、被害者がいる事件や、いじめや幼児虐待のようなナイーブな問題はシナリオでは扱わないようにしていました。
上村 『シルバーレイン』は東日本大震災の前にちょうど終わりました。ただ、震災の3〜4ヵ月前にもんじゅを暴走させて爆破するのを食い止める戦争をしていました。震災後なら絶対にできなかったことですよね。
一本 当時は原子力発電所が事故を起こすなんて想像だにしませんでした。
上村 私たちも当時は『太陽を盗んだ男』の沢田研二の気分で書いていました。
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