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東京っぽいインターネットサービスは「遊び半分」がキーワード/古川健介『TOKYO INTERNET』

今回のnoteは古川健介さんの新連載「TOKYO INTERNET」の第1回をお届けします。

ニューヨーク、ロンドン、シリコンバレー、そして東京。都市の物語とそこから生まれるインターネットサービスには深いつながりがあったーー。この連載ではときにガラパゴスと呼ばれる日本のインターネット進化史を〈東京〉という都市の文化から読み解いていきます。

▼プロフィール
古川健介(ふるかわ・けんすけ)
1981年生まれ。学生コミュニティの「ミルクカフェ」レンタル掲示板「したらばJBBS」、ハウツーサイト「nanapi」などのWebサービスを手掛ける、Webクリエーター。

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インターネットサービスは都市から生まれるって?

こんにちは、古川健介といいます。ネット上では、けんすうと名乗っていたりします。この連載は、東京ぽいインターネットについて考えていこうかなと思っています。

普通に考えると、インターネットは都市との関連性が低そうです。国境を超えて、24時間、つながりっぱなしで、そこには場所という概念はほとんど影響しなそう。そんなインターネットのことを語る時に、国ですらなく都市に限定する意味ってなんだろう、と思われる人も多いと思います。

しかし、僕は最近「インターネットサービスは都市から生まれる」と思っているのですね。もう少しわかりやすくいうと、「インターネットサービスは、都市の空気の影響を受けて、その都市っぽいサービスがでてくるのでないか」と思っているのです。

一番わかりやすいのは、シリコンバレーです。シリコンバレーには「世界を変えろ」という空気がすごいあるので、世界を変えるようなサービスが出てくるのではないかと思うのです。

Googleなどがわかりやすい例でしょう。Googleが作っているのは、検索エンジンのみの時代から一貫して「AI(人工知能)」です(※1)。AIのためのエサとしての人間のデータを集め、ロボットに食べさせて、その結果として進化したAIをまたユーザーに提供していく、ということを繰り返しています。たとえば、「Google Photos」という無料の写真ストレージサービスなどはまさにその例で、膨大な写真データを食べさせることで、写真解析の精度を上げ続けています。

なぜそんなことをしているかというと、彼らは、純粋に、AIなどのテクノロジーによって、世界のあり方を変えようと信じているのだと思います。これはシリコンバレーにおける「Change the world」という風土によって成り立っているのではないかと。

こんなダイナミックな野望を持ちつつかつビジネス的にも成功しているGoogleのようなサービスを生み出す土壌がシリコンバレーにはあるといえるでしょう。

未来を読み解くためにコンテキストを読み解きたい

僕が気になっているのは、「未来はテクノロジーによってこう変わっていくという趣旨の言論は、アメリカの著者のものが多い」ということです。

たとえば、古くは「ロングテール」や「シェア」、最近だとケヴィン・ケリーさんの『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』などです。こういう言論はシリコンバレーなどでは語る人が多そうなのですが、東京ではあまり存在しない。つまり、「世界を変えろ」的なメッセージを受け取った人の話が多く流通しているのですね。

それはそれで非常に参考になるのですが、あくまでシリコンバレーから出てくる、世界を変えることを目指しているグローバル企業を中心においた考え方とも言えるわけです。

しかし僕は、東京に住んでいるので、東京ではこれから先の未来に何が出来ていくのか、また、どういうものが作れるのか、というのを絞って考えていきたい。

そのためには、東京という都市が、どういうメッセージを持っていて、どういう影響を与えてきたか、というのを読み解きたいと思っています。

それをまとめていけばこれから東京でサービスを作る人にとっての手助けになるかもしれない、と思ってこの連載をはじめました。ちなみに、あくまでやりたいのは歴史を振り返ることではなく、未来にどういうサービスが生まれていくのか、というのを語るための土壌づくりです。

というわけで、前段が長くなりましたが、「東京ぽいインターネットサービスってどんなのだ?」というのを考えてみました。

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