第三章 他者を探し求めるヨーロッパ小説――初期グローバリゼーション再考(後編)|福嶋亮大
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
第三章 他者を探し求めるヨーロッパ小説――初期グローバリゼーション再考(後編)6、アジアの帝国から未知の新世界へ われわれはふつう、文学の世界認識は狭小な段階から徐々に拡大していったと漠然と思い込んでいる。しかし、ヨーロッパ文学の歩みは決してそういうものではない。繰り返せば、古代ギリシアのアイスキュロスからして、すでに東方のペルシア帝国とのコンタクトを劇の中枢に据えていた。前章で述べたように、「今・ここ」を超越して、他者に憑依するガリレイ