第十章 絶滅――小説の破壊的プログラム(後編)|福嶋亮大
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
6、倒錯的な量的世界――スウィフト『ガリヴァー旅行記』
『ロビンソン・クルーソー』への自己批評と呼ぶべき『ペスト』からほどなくして、一七二六年にスウィフトの『ガリヴァー旅行記』の初版が刊行される。この奇怪な旅行小説は、一八世紀の初期グローバリゼーションを背景として、人間の可変性や可塑性を誇張的に示した。
イングランドの政治を批判する一方、故郷のアイルランドをも罵倒した非妥協的な著述家らしく、スウィフトはまさにルカーチ流の故郷喪失者として