2023/10/16

CANADA VICTORIA

空気が澄み渡っている。
快晴の空から太陽が大地を照らし草花も賑わっているけれど、
もうすぐそばに厳しい冬が待ち構えているのがわかる。

つい最近まで持ち得ていたはずの何かに対する熱意もなく、知らない場所への期待や先に待ち構える希望のひとつも想像することができない。
どうしたものだろうか。

田舎にある小さなガーリック農園で、友人と農仕事を手伝う代わりに無料でトレーラーに住んでいるのだけれど、焦燥や不安が心臓の奥底まで襲い掛かるので、ほとんどの時間をわたしはそういうのを取り去ることに費やしていて、あとは枯れて下を向いた正気のない草花のようにぼうっとする暇があるくらいだ。

たまにアスファルトの上を歩く。つまらないとつぶやく。
だって坂道ばっかだし。

たまに草に隠れているトカゲを捕まえる。これは楽しい。
大きいのは十五センチをゆうにこえている。

ウォルマート。混んでるなー。

わたしの一番の楽しみは、友人と夕飯を作ることだ。
トマトパスタと火鍋をローテーションしている。
パスタはサーディンを入れると簡単に味が決まる。
火鍋は見つけてから今までずっとブームだ。
揚げ豆腐があると尚いい。こちらには売られていない。

そういえば、友人はいつも姿勢を崩さない。
わたしはこんなにも、姿勢が崩れない人って見たことない。
気分に左右されず、同じなのだ。
テンション同じ、ペースが同じ、思想も趣味も不動だ。
少なくとも五年間は不動だ。
その人の感じだと、わたしと出会う前の五年間も不動だったはず。
どの言葉も全て同じテンションで口から出る。
同じテンションで、悲しいこととかをいう。
同テンションで訊いてくる。
アルコールが介入しても動じない。
前に思いっきりビンタされたことがある。
けど、口から出る言葉は一定の速度で一定の音量、声の感じも一定だ。
取っ組み合いもしたことあるけど、笑ってたな。
怖いな。
だからなんか、覚えてないな。

でもそれいいな。
生きてるだけでエネルギーをたくさん使いたくない。

20231016


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