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プラモデルの成熟と死

ここ数日部屋の中の片付けに手をつけていて、その延長線上で、食玩のプラモデルや買ったままになっているプラモデルのキットを取り出したりしている。

車のプラモのキットは、スロットカーをやっていた頃に買い求めたものだ。まったく組んでいないものが7箱あった。

●1/24ロータススーパーセブンシリーズⅡ
●1/24シトロエン2CV
●1/24アルピーヌA110/1600SC
●1/24アルファロメオ/ジュリアスプリントGTA
●1/32ポルシェ911S
●1/32ベレット1600GTR
●1/32パブリカ

てな具合。もう10年以上放置状態だったはずだが、クラシックなモデルが多いためか、現行でもまだ生産されているみたいだ。ただし値段はだいぶ上がっているもよう。

これから組むか組まないかと問われれば、たぶん組まないだろうなと思う。ひとつ組むのにもスプレー缶の塗料が何本か必要になるし、そういうものを扱っている専門店も市内にはほとんど存在しなくなってしまったからだ。

業界の雄、タミヤ模型のおひざ元で大きな店舗を展開していたショップもいつのまにか消えてしまい、モチベーションは下がりまくりになった。通販で塗料を買うのも面倒くさい。そこまでの情熱はもうない。

そういうわけで、これらのキットが組み立てられることはもうなかろう。もともとそういう感じだったのだが、友人の死を知って以来、一般的なホビーにはほとんど関心がなくなってしまったのだ。

仕事場のデスクの上のほうに広げていたNゲージ鉄道模型のレイアウトもどきのジオラマも、箱の中に片付けてしまった。いまそこは亡くなった友人の形見のようなものを飾る祭壇のようになっている。物事は変化するのだ。

プラモデル店、模型店の数が著しく減ったのも、それを趣味とする層の人口が減ったからだろう。プラモデルをきれいに作るのは決して簡単ではないし、時間や費用もかかる。そういうホビーから人が離れて行くのも無理もないことかと思う。

ホビーのある領域に多くの人が殺到した時代は過去のものになった。プラモデルだって、本当に完成度高く作り上げようと思ったら、専用のニッパーやヤスリなどを購入しなくてはならない。パテや塗装ブースも必要になってくる。製作技術もどんどん向上する。しかしそういうことが知れることによって、それをやろうとする人口は減るのだ。

昔の小学生が一生懸命ランナーからパーツを切り離し、接着剤をはみ出させながらなんとか組み上げたような模型は、今では正視にたえない下手糞な作品に成り下がってしまったのだ。自分の作るものがそういうレベルのものであると知ってしまったなら、その人はプラモデルなど二度と作ろうとはしないであろう。

あるホビーの完成は、それに熱中する人間を増やすのではなく、減らすのである。ランドナーだってそうだったでしょう? 昔はマスプロでたくさん廉価に作られていたものが、今はオーダーしなければならないというような時代になった。新しく入ってくるのが難しくなったわけだから、愛好者人口が増えるはずがない。

成熟と死は表裏一体である。物事の完成は、その物事の衰退と終焉を招き寄せる。生きていると、そういうことが見えてくる。この世は哀しい谷間でもあるのだ。



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