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小径車のデメリットについて

(元記事は2009年2月にブログ『自転車文学研究室』に掲載したものです)

画像は新幹線車両内のデッキにおける、折りたたみ車輪行の図。

比較するものがないので、よくわからんかもしれませんが、やはり普通のスポーツ車に比べ、かなり輪行袋もコンパクトです。
輪行作業も簡単でスピーディなのは言うまでもありませぬ。

都市内での輪行は、そもそも電車がガラ空きという状態がほとんどないこと、都市内では走行距離も短く、日帰りで一日に二度以上輪行することが多いこと、そういうことから、折りたたみ車(フォールディングバイク)が
なかなか便利なのではないかと思います。

もちろん、普通のスポーツバイクでも輪行ができないわけじゃないんですけど(都市から輪行するのだけれども、地方や郊外で長距離を走る場合は、やはり普通のスポーツバイクでの輪行になるでしょうね)。

そういう具合だと思うのですが、実際に使うとなると、折りたたみ車の特性をよく知っておく必要があります。むしろ初心者の方ほど。

折りたたみ車は、できるだけコンパクトな折りたたみ状態になることを考えるので、一般的に車輪径は小さく、20インチ以下であることがほとんどです。

普通のスポーツ車が26インチ以上であることからすると、かなり車輪は小径です。

小さいものでは16インチ、もっと小さい12インチなんてものもあります。
さて、そこで車輪の小さい自転車(小径車)はどういうメリットとデメリットがあるのか。

まずメリットとしては、折りたたみ状態がコンパクトになる。車輪が小さいため、車輪に関しては重量が軽く、そのため、漕ぎ出しが軽い。自転車の全長も普通は短くなるので、スペースのない場所での取り回しが良い。

まあおおむねそういうことじゃないかと思います。
スタイリング的にも新鮮に感じられる方が多いかもしれません。

次はデメリット。
実はここが重要ですが、このことはあまりメディアには書かれることがありません。

車輪が小さいということは、自転車としての走行安定性に不利な面があります。
特定の車種やメーカーということではなく、一般論として、車輪の小さい自転車は、車輪の大きな自転車より、走行安定度が低くなります。

タイヤの接地面積も小さくなりがちですし、乗ってみるとすぐわかりますが、操舵感がクイックで、安定した走行を保つのは楽ではありません。
また車輪一回転で進む距離も小さくなるため、長距離はたいへんです。

走行安定性に不利な面があるということは、要は、外乱や操縦者のミスに対して寛大な自転車ではない、ということです。
落車する可能性は、やはり普通の車輪の自転車より高いのです。
しつこいですが、これは特定のメーカーの自転車ということではなく、車輪の小さい自転車全般の一般的な特性と私は考えます。
もちろん例外もあるでしょうが、一般論として、ということです。

特に、急な下り坂や上り坂は要注意です。
車輪の回転中心に対して、相対的に重心位置が高くなり、また高い重心に対して、前後の車輪の間隔が相対的に小さく、前後方向に対しての安定にも不利な面があります。

やや極端な例ですが、急な下り坂で前ブレーキだけ急激にかけたりすると、
自転車全体が前転してしまうようなこともあります。

普通の自転車とはまったく違う挙動を見せることがあり、実は私も昨年、小径の折りたたみ車に乗っていて、友人の外科のセンセに見てもらわなければならない怪我をしました。

たぶん15パーセントくらいの短い上り坂で、短く急なゆえに立ち漕ぎでクリアしようと思ったところ、いきなり前輪が宙に浮いたような感じでひねるように回転して右側から落車。
体重をかけて立ち漕ぎする体制ですから、対応のしようがありませぬ。
右ひじの少し下と手の甲を強打。頭も地面に当たりましたが、幸いヘルメットをしていたので、こちらは大丈夫。
しかしヘルメットしていなければ、頭も無事では済まなかったでしょうな。

一体なんで落車したのか不明だったので、翌日、現場を実況検分してみましたが、どうもよく理由がわかりませぬ。

あとで小径車輪の自転車の挙動に詳しい友人に聞いたら、そういうことがあるそうで、彼もそれで落車しているとのことでした。

つまり、折りたたみ車や小径車は、一般に、リアセンター(BB軸から後車軸までの長さ)が普通車輪の自転車よりも短くなっているため、後車軸に対して、重心位置が高く、なおかつ接近している。

そのためもあって、入力に対する反応が良い。
言い換えれば、姿勢や挙動の変化が起きやすいということでもあります。

おまけにそのときは、二泊分の荷物をデイパックに背負っていて、ますます後ろに荷重がかかりがちになっている。
加えて、二日間の東北旅で疲れてて、ふだん走ってない道。
わずか5分で到着という行程の途中の短い急坂だったので、つい力んで立ち漕ぎしてしまったのでしょう。

その結果、予想しない挙動で自転車が反応したようです。
前輪が浮き、トルクをかけた方向に自転車が回転したと思われます。
だいたい私は日ごろから「小径車は要注意だよ」と言っていましたが、そういう挙動はまったく予測していなかった。
お医者の世話になる落車をしたのは、15年ぶりくらいでした。

というような事例もありますので、折りたたみ車や小径車は、やはり操縦に、より注意が必要なわけです。
自戒もこめて申し上げますが、立ち漕ぎなどの激しい入力は本来避けるべきで、すべてに丁寧な操作が必要でありましょう。
路面のギャップや石ころ、縦溝などの影響も顕著ですから、太めのタイヤを選択したいところです。

都市部での輪行は、折りたたみ車が便利とは思いますが、同時に、車輪の小さい自転車特有のデメリットも知っておかないと私のように怪我をする可能性も高いです。
折りたたみ車ではヘルメットをする人は少ないでしょうが、むしろ逆に折りたたみ車こそヘルメットが必要、と私は感じています。

ご支援ありがとうございます。今後とも、よろしくお願い申し上げます。