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『「裸のサル」の幸福論』を読んだ

ブックオフで何か面白そうな本がないかなとうろついていて、デズモンド・モリスのそれに行き当たったので、即購入してその日のうちに読み終えた。

デズモンド・モリスの名を聞いて久しい。ベストセラーになった『裸のサル(The Naked Ape)』は1980年代の大学の講義でも紹介されていた。確か、心理学の講義ではなかったかと思う。

動物行動学の分野で多大な業績を残しているモリス(存命中)は、昨今ではだいぶ怪しいところがあるとされる『生命潮流(Lifetide)』を著したライアル・ワトソンの師でもあった。

印象的な文章のうち代表的なものは、冒頭のものと終盤近くのもの。冒頭のそれは以下のような具合である。

「私を不幸にしようと思ったら、確実な方法が一つあります。それは、『こうすればあなたの人生はもっと幸せになりますよ』と、私にお説教をすることです」

終盤近くのものは、ありがちな言い回しではあるけれど、実践的に深く考えられることはそう多くはないと思われる。

「世間の常識とは異なりますが、幸福のレベルは教育とも年齢とも銀行口座の残高とも関係がありません」

この二つの文章を挟んで、幸福に関するさまざまな記述が展開される。多くの部分で、動物的行動の延長戦上に、「裸のサル」たる人間の行動が観察されうるのが分かる。面白い。

個人的には私は人間と霊長類のあいだにはやはり一線があるのではないかと思うのだが、そういう私が読んでもこの本は十二分に面白かった。おすすめする。

なお、原題は The Nature of Happiness である。日本語版は新潮新書。最近の新書は売れたものでも増刷が限られていて、古いものは書店で入手することは難しい。

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