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【徒然なるままに】#28

 ライブ用の楽曲制作が終わり、連日譜面制作をしている。完全に五線譜にすることによって、作っているときには気がつかなかった音の構造が見えてくることがあり面白い。また、そのままでも演奏できるが、少し変えた方が楽曲が生きる、という発見がある場合もある。
 基本的に演奏したものをデータ化して整理していき、譜面専用のソフトで最後の仕上げをするのだが、例えばピアノの譜面を作る場合は、予め右手(基本的にト音記号部分)と左手(ヘ音記号であることが多い)に音楽制作ソフト上でトラックに分けてから、その後、譜面制作ソフトにデータを移行し作業をする。ピアノに関しては、自分で決めた音使いの中で即興演奏したものが割と中心になるのだが、普段から自分が作る曲はコードネームで進んでいくタイプのものばかりというわけではなく、また拍子も刻々と変わっていくものが多いので、ピアノロールという、音をグラフィック化した画面上で編集して分けていくのはソフトを使い始めた当初は大変だった。右手と左手の動きが入り組んでいるためである。しかし、その作業も続けていくと慣れてくるもので、自分のパターンもわかってくる。今ではそれほど苦労しなくなったが、それでも譜面化すると弾きにくい箇所が出てくる。おかしいな、と思って確認すると、右手と左手の記譜の仕方があまり良くない、という場合が多い。少し変えると脳と指の反応が変わり、弾きやすくなる。
 作曲だけではなく、自分で演奏をするようになると、この書き方では演奏家が演奏しにくいだろうな、ということが段々とわかってくる。現代音楽のような複雑な記譜でも、書き方を変えるだけで解決することが多々ある(と書きながら、未だに自分も全く完璧ではない、ということを付け加えておく)。
 それとは別に、例えば、この手つきは自分にはやりやすいが他の人だと弾きにくいだろうな、ということもわかってくる。
 自分が演奏しないようなもの、例えば室内楽など(といっても最近はほとんど自分で演奏しているが)、クラシックのミュージシャンに演奏を頼むことがわかっているときは、その辺りを意識して、読みやすいように、あるいは演奏しやすいように書こうと努力している。けれど、変更すると響きが変わってしまう、というような箇所に関しては、もちろん変えられない。
 僕の室内楽の曲はシンコペーションなどが多く、しかもその曲がリズミカルなものならわかりやすいかもしれないのだが、割と浮遊感を出すときに使うので、これは譜面化したときに自分も実はやりにくい。そういったフレーズは大抵即興演奏で生まれたフレーズである。そういったフレーズは歌えるようにするか、体に覚えさせるしかない。
 今回のライブは、そういった室内楽的な要素も含んでいる。けれど、ロック的な要素もありつつアンビエント的でもミニマル・ミュージックのようでもあり、そうかと思えばメロディがはっきりしたものもある。「ジャンルは何?」と聴かれても一言では答えられない。しかも、室内楽的に音符で記譜されたものが多いので、楽曲によってはそれぞれの楽器の方に委ねる部分もありつつも、はっきりと演奏の仕方を決めているものも多々ある。いきなり演奏するには多少複雑なものが多いかもしれない。
 そんなわけで、僕がどんなものを作るか大体わかっていらっしゃる、今回参加してくださるミュージシャンのみなさんには、「いつも本当にすみません」と心の中で謝りつつ譜面を送っている。まるで『◯幸』の手紙を連日送りつけているようだ、と思わなくもないが、それは言わずに自分の心に留め置いて、今日も譜面を送らせていただいている。そのように思われていないことを祈っている。
『最幸』、という言葉はないと思うが、やって良かったね、と言われるライブにしたいと思っている。
#日記 #譜面 #楽譜制作

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