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盲点!揚げ漬けへのこだわり  432

今日は観念して揚げ漬けを作った。
まぁ「観念した」のは「揚げるという行為を行うこと」に、なのだけど。

考えてみたら、他の揚げ物に比べてすんごいハードルは低い…はず。
漬け汁を事前に煮切って冷ましておくことも、手間といえば手間だけど…
おそらくそれは自分の中でハードルになっていない。
じゃあ、何がそんなに腰を重くするのか…?
あまりにも重すぎて自分でも謎なのだけど、揚げ漬けを作る前の鈍さたるや「千と千尋」に出てくるオクサレ様的だったりする。


衣もつけなくていいし、温度だって適当でもいい。
「揚げ」って名前だからって、たっぷりの油で揚げなくてもいい。
数センチの油で「揚げ焼きじゃん」って言われるようなやり方でいい。
色の薄いものからっていう順番を守れば…あとは火が通ればそれでいいじゃない!

そんなことを言いながら自分をなだめるというか、あきらめさせるというか、追い込むというか…毎回そんな感じなのだけど、毎回ズルズルしている。
放っておいたら一年中スルーしそうなことなので、どこかでキッカケが欲しいところなのだけど…この夏はなかなか出会わなかったのだ。


そうこうしていたら、庭仕事のお客さんから「お庭で取れたから…」とナスにトマト、そしてたくさんのししとうをいただいた。

ハイ、来たよ。
ししとう、もうこの間カレーは作っちゃったから「じゃあカレーに…」なんてルートはないよ。
ししとう…おいしく食べる方法は揚げ漬け以外にある?思いつく?
今からレシピ探すの?
そんな体力ないでしょう…暑いもん、仕方ないよ。
うん、仕方ない。
ここはほら、揚げ漬け行っとこう!
偶然にもさつまいももごぼうもあるよ!
ナスもいただいたなんて、もう「それ用」だよ!

頭の中のわたしが盛り上げようとたたみかけてくる。

でもさ…暑いっていうのに揚げ物するのってさ…

なんてゴネに入り始めても、頭のわたしはクールに言うのだ。

そんなの、夕方に料理したら何したって暑いよ。
同じ暑いなら「おいしい」暑いがいいじゃんっ!

…その通り。
わたしは「揚げ漬け」が好きなのだ。
好きなのに鈍い…余計謎である。


そんなこんなで揚げ始めると…
なんてことはない、サクサク進むのだ。
順番も火加減も、特にチリチリすることなくスムーズに進むのだ。

「ナスとサツマイモは表面ガリっといこうねー」

そう言った途端「ハッ」と自分が「構え」に入ったのがわかった。

別に何かの武道の型とかじゃなくて、緊張というか「気をつけろ」「気を抜くな」の「構え」なのだけど。
じゃあ、何に対して構えるのさ?というと…

「漬け込みすぎ」に、だと言ってくる。


そこで思い出したのは、いつもの食卓の場面。
好きなはずの揚げ漬け、おいしくできているはず…なのに、わたしは「んー…」と残念さを感じずにいられない…。

何が残念かというと…

お芋やかぼちゃ、山芋なんかもそうなんだけど、表面がしっかりカリッと揚がって、なんならそのままお塩だけでいただいても「サイコー!」な状態のものを漬け汁に漬けたが最後…グングンに汁を吸い始める。
カリッと揚がった表面はしっとり、そしてフニャッとした姿になっていく。

うん、時間が経つってそういうことだ、仕方ない。
そこまではそう思えている。
そう「そこまで」は…。


その後、中のホクホクお芋ゾーンが一気に汁を吸い上げ始め、食べることになると中まで漬け汁の味が染み込んでいる。
そう、染み込んでいる…
染み込んでおいしいはず…
揚げ漬けってそういうもののはず…

なのだけど、わたしは中のホクホクにまで汁が浸食してきて欲しくないんだ!
漬け汁の美味しさと、お芋そのものの味の半々が好きなんだ!
ズックズクに染み込んでいただかなくても結構なんだ!
その味が欲しいなら、こちらから何度も汁をつけにいくから…
思わぬ速さでこっちにグングン来ないで欲しい…

もはや料理を超えて人間関係か人生かの話みたいにも聞こえてくるけれど…
つまるところ、わたしはお芋類の漬け汁の染み込みを阻止できないことで、作ること自体を前向きに思えていないということが判明した。

…そんな理由だったとは。


そんな理由を晩ごはんを食べながら食卓で披露したところ、家族は口を揃えて
「じゃあ、立てちゃえばいいじゃん」
なんてカラッと言う。

つまり、揚げたてのコロッケのように立てた状態で漬け汁に入れれば、染み込みゾーンが最小限で済む=おいしいゾーンがたくさん残っていいじゃない!ということだった。

「ちょっとはいいんだ…」

なんというか「わかってないなぁ」みたいな感じでわたしが言うと、それはいたしかたないみたいな話になるんだけど…。

みんな甘いよ…
芋類の吸い上げ力を甘くみちゃいけないよ…
次の日になろうもんなら、きっと上まで汁が来てるよ…

なんてことを頭の中でぐるぐるさせながら晩ごはんは終わった。


我ながら「好きすぎてこじらせる」をまさか揚げ漬けに持っていたとは…。
若干、これは「食べることへの活力=生命力では?」なんて前向きに捉えてみるも、すぐにこだわるわたしが言ってくる

「で、お芋が吸っちゃう件、どうするのさ?」と…。


きっと、また揚げ漬けを作る時にもズルズルなんだろな…
なんて遠い目をしながら虚無顔になる夜だった。





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