なくなったリズム 445
「あれ?もう通り過ぎたっけ?
いや、まだギリギリ岡山だし…」
なんて思いながら高速を大阪方面へ向かって走っている。
「る」って書けてるってことは…
そう、わたしは助手席で景色を眺め、時々歌い、サービスエリアでおまけにもらったお菓子をかじっている。
そんなお気楽なドライブの最中に「そろそろじゃない?」なんて待ち構えていたのは…リズム。
リズムって何かというと、時々道路で色んな注意喚起のために用意されている、走ると「ゴトゴト」と音を立てる凸凹のことなのだけど。
岡山から兵庫に入ってすぐの赤穂市は赤穂浪士のお話で有名な町で高速の地名表示にも大石内蔵助と思しき方のイラストが描かれていたりする。
その方の表示を通り過ぎて間もなく始まるのが…リズム。
わたしの待っているリズムはコレ。
そのリズム(道路のゴトゴト)は…
討ち入りの
太鼓のリズムで
目を覚そう
との表示通り、5・8・5の区切りでゴトゴトいうのだ。
別に忠臣蔵が好きなわけでもないし、「いや、討ち入りの太鼓で目を覚ますのは吉良上野介だけじゃないの」とか言ってたし、そもそも…
なんて言おうと思えばいくらでも突っ込めちゃうんだけれど、ロングドライブの間にこういうかわいいサイズのしかけがあるっていうのが、わたしにはなんだかとてもよかったのだ。
「キタキター!(ゴトゴト…)通ったよー!大阪に近づいてるよー!」みたいな…。
目印のような通過点。
それが道路に仕込まれているっていうのがまたいい。
そうこうしているうちに車は兵庫に入ったのだけど…
一向に討ち入りのお知らせが来ない。
?と思っていると、なんと…
道が整備されて討ち入りの太鼓のリズムがはがされていた。
…え
…なに?
…どうやってみんなこれから目を覚ますんだよ
ボソボソ不満を述べながら、いつの間にかなくなっていたリズムのない道をひとり嘆いていた。
そんなに毎日通るわけじゃないけれど、それで「ハッ」と目が覚めるわけでもないだろうけど、ホントにあのリズムが討ち入りの太鼓のリズムかどうかなんて分かんないけど…なじみのモノがなくなるってなんか…なんか寂しいじゃないの…なんてちょっと小さくなりながら夕陽を背負って走り続けた土曜日だった。
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