手紙

  僕は、あなたに手紙を書いたことがありませんでした。僕は、記録することを優先してしまい、あなたに伝えることはしませんでした。伝えたいとも思っていませんでした。そして、あなたにだけ伝えたいこともなかったので、あなたに手紙は書きませんでした。
 でも、今、僕はあなたに手紙を書きたいと思っています。でも、伝えたいことがあるわけではありません。ただ、あなたに手紙が書きたいという思いだけで、今手紙を書いています。
 あなたは、最近誰かに手紙を書いたでしょうか。書いていても、書いていなくても、僕には関係ありません。もし、書いていないのであれば、書いてみてください。僕に宛てて書いてもらってもいいですよ。僕がその手紙を読めるかは分かりませんが。
 僕は、あなたが何をしてきたかには、興味がありません。あなたが、これから話すことに興味があります。だから、質問しました。でも、僕が今質問しても、あなたは答えてはくれませんね。それは、しょうがないです。手紙なので。
 もし誰かから質問されたら、僕から質問されていると思ってください。それが、この手紙への返事の代わりになります。たくさんしゃべってあげたください。たぶんですが、その人は、あなたの声が聞きたいか、それかあなたがしゃべっているところを見たいと思っているはずです。でもしゃべりすぎはいけません。その人は、あなたと会話をしたいと思っているかもしれないので。
 手紙は、会話ではありません。一方的に、あなたへの文章を書いているだけなので。僕は、あなたと会話することを求めてはいなさそうです。突然、「手紙を見ました!」なんて声をかけられても、どう対応していいか分かりません。だから、僕を見かけたときは、手紙のことはなかったことにして、通り過ぎて下さい。もし、僕に気が付いて、会話してみたいと思ったら、古典的ではあるけど、ハンカチを落としてください。そうしたら、僕はハンカチを拾い、あなたに渡します。そのときに、あなたから話しかけてください。
 全部、あなたに導いてもらってしまっていますが、僕のことが分かるのは、あなただけなので、あなたに任せるしかないんです。僕には、あなたが、どんな姿なのかは分かりませんが、あなたには、僕がどんな姿なのか分かるはずです。きっと、あなたは、僕に気が付く時があるはずです。その時に備えて、ハンカチは常にもっておいてください。
 他の物を落としてしまうと、僕が、あなたではないと判断してしまい、拾って届けるでしょうが、ぼくは、あなたをあなただとは思わないでしょう。それは、あなたに対して失礼です。そんな失礼なことをしたくはありません。だから、面倒かもしれませんが、ハンカチを常に持っておいてください。
 手紙にしては、文章量が多いでしょうか?手紙を書いたことが無いので、ちょうどよい文章量が分かりません。でも、まだ、あなたに手紙を書きたいという気持ちが収まらないので、書かせてください。ハンカチの件といい、わがままでごめんなさい。でも、あなたに手紙が書きたいんです。
 あなたは、誰かから手紙をもらったことはありますか?もらっていなくても、もらっていても、僕には関係がないことです。ただ気になったので質問しました。手紙をもらうという経験はあまりないかもしれませんね。今、僕が書いている手紙が、あなたにとってのはじめての手紙かもしれませんね。それも、僕にとってはどうでもいいことです。
 あなたにとって、どうでもよくないことはなんですか。これは、あなたにとって、重要なことだと思います。それを、今回の手紙で、知ることができればいいですね。そうなることを僕は望みます。
 でも、あまり深く考えなくてもいいですよ。重要なことをしないと、どうにかなっちゃうことはないですから。今、あなたは、私からの手紙を読むことに集中しているのかもしれませんね。僕は、あなたがこの手紙を読んでいることがとても嬉しいです。
 もうそろそろ、最後にしましょう。あなたにはあなたの現実があり、私には私の現実があるので、いつもでも手紙を書き、いつまでも手紙を読むことはできません。僕は、あなたに手紙を書けてよかった。また今度、あなたに手紙を書きたくなったら、すぐに手紙を書きます。
 あなたがしたいことを。そして、わたしがしたいことを。そして、この手紙を読み、この手紙を書く。じゃあ現実に戻りましょう。
 またね。


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