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アウトドア用スプーンを再考する

アウトドア用のスプーンを考える。
カトラリー系はその性質上、ある程度の「長さ」が必要になる。
折りたたみの主流は半分に折れるタイプだろう。クッカーに何とか入ったとしても、この柄の棒と皿部分の丸みが場所をとる。デッドスペースを生んでしまう。
もはや長いことは当然としてクッカー内への収納を諦めたりすることになる。

違う方法で何とかできないものかと考え、ポリプロピレンのスナップボタン組み立て式に行き着いた。

経過の写真は無いのでいきなり完成品

思考を重ねプロトタイプが完成した。
ここにそこに行き着くまでの道筋を残しておきたい。

板を折ればいいか…

ペラペラの板でも折ると剛性が出る。三角までいかなくともヘリを立ててやるだけで曲がりにくくなる。構造力学ならうまく説明がつくのかもしれないが、よく知らないので経験則になるがかなり強くなる。

収納時は真っ平らで紙のように曲がり、使う時に折って立体になればいいのではないか。そういえば以前カトラリーを忘れてアルミホイルでスプーン作って凌いだ事があったな…

アイスのスプーンってどんなだっけ

その昔、アイスクリームを買うと折り曲げ式のスプーンが付いてきたのを何となく思い出す。今もあるのかと調べると「紙スプーン」というものらしい。一応はまだ売っているようだ。
なるほど、スプーンの形に抜かれた紙の中央にY字の折り込み線が付いている。
これをでかくすればいいのではないだろうか。

さっそく簡単に作ってみる。素材は0.3mm厚のポリプロピレン。ちょっとしっくりこない。
形状的にスプーンの皿の面と持ち手の面が垂直になるのだ。一般的なスプーンは並行の関係にある。
紙スプーンの場合は小ささから気にならなかったのか、スケールをあげると同じ作りでは何かしっくりこない。思い起こすとピッタリと畳んで摘むようには使っていなかった気がする。よく覚えてはいないが。

並行面を作ってフチを立てる

しかしながら、方向的には間違っていないだろう。皿面と並行な面をつけてフチを立てるコの字にしてみよう。
中指に並行面を乗せ、親指と人差し指でフチ面を摘むようにすると、そんなに違和感がない。
これは鉛筆やペンの持ち方に近い。

やはり水平面があると掬う動作がしやすくなる。一般的なスプーンの持ち方からはズレてしまうが、持った感じは意外と許容範囲だと思った。

スプーンの形状を保持する

ほんの少し溝を掘って曲げるようにしたが、結構な反発力がある。これを指で挟んで摘み続けるのは余計な力が必要になってしまう。
反発力を弱めようと、あまり溝を深くしても折り曲げを繰り返してるうちにすぐ千切れてしまいそうだ。
何とかスプーンとしての形状を保つような留め具ができないものか。

スリットを設けて逆面にノブのような出っ張りをつけ差し込んで保持するような形にしてみたが、戻ろうとする反発に負けてしまう。そして差し込んではみ出たノブが指に触って邪魔。

似たのがあった

何か解決策が無いかとリサーチ(ネット徘徊)すると似たような方向の製品を発見した。

Unitensil All in One Cutlery
同じように樹脂板(おそらくポリプロピレン)で、スプーンの反対側がフォークになっている。
そして、中央でスナップボタン留め
さっそく実物を見てみたいと思ったが、どうにももう販売は終わっているようだ。
実際手にできないのは残念だが、ボタン留めの部分は参考にさせていただきたい。

公式?サイトより引用

スプーンの方向性

ボタンで多少の厚みが増してしまうが、これはなかなか良い解決法だった。気持ち的にもボタンを留めると道具としてのスイッチが入るようで、これから使うぞという気分になる。
ただ、それ以外の部分は自分の求める方向性と若干違うなと感じる。

長さがあって収納しやすいスプーンが欲しいと思い立ったのは、アルファ米用としてだった。
尾西食品などのお湯を注ぐだけで白飯となるやつだ。袋のまま食べれるようにあらかじめマチのついたパッケージで小さなスプーンも付属している。

この袋のまま食べる時に、角に残った米を掻き出すため、ある程度先端が平らな方が都合が良い。尾西の付属スプーンがなのだろう。

そして、フォークはいらない。Unitensilのものがどうかはわからないが、この素材でまともに機能するものになるとは思えない…

尾西型で柄が長く、平らで曲がる

先端の形状は尾西の付属スプーンに近づける。
ただ、長さはやはりもう少し欲しい。暫定で160mmとした。

ボタンを外して展開すれば平らになり、クッカーの形に沿うように曲げられる。

柔軟なスタッキングが可能

何度か感覚で作ったものを元に図面を起こす。
図面を起こすのは、問題点を洗い出し修正しやすくするためだ。

これで一応の形になったかと思う。剛性も普通に口にする柔らかさのものであれば負けない強さはある。
一応は完成とするが、使っていく中で気に入らない部分があれば変更を加えていく。
そこがMYOG(Make Your Own Gear)のいい所である。

そして樹脂製の宿命とも言える色移りと匂い移り。これはカレーなど色や香りが強いものを食べてみるしかない。
なかなかこのいろんな食材で試すというのが日常生活では難しく、時間のかかる所である。

ULだった

収納性第一であまり気にしていなかったのだが、最終的に重さを測ってみたら、2.4gとかなりウルトラライト(UL)だった。

HeightじゃなくてLengthか

名前は「UL PP Folding Spoon」とでもしよう。ULはウルトラライトで、PPはポリプロピレン。そのままだ。

以上、UL PP Folding Spoon ができるまでを記録してみた。
ここまで読んでくれた奇特な方がいたのならありがとうございます。
マネしようというさらに奇特な方がいるのなら、ポリプロピレンはBPAの問題などあるので自己責任でお願いします。

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