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「自分の希望は一旦置いて、まずは見てほしい。」 イラストレーターaccoさんに聞く 『死生観光トランプ』を通して 表現したかったこと

こんにちは!多くのご支援、本当にありがとうございます。

さて、『死生観光トランプ』は、世界各国の死生観や弔いの作法がをイラストとキャッチコピーで紹介したトランプです。全国各地のお坊さんや仏教を愛する14人の方々にイラストを描いていただきました。そこで、イラストを描いてくださった方に、『死生観光トランプ』を描いてみた感想や気づいたことなどについてお聞きしました。

今回は僧侶でウェディングプランナーのaccoさんにお聞きします。聞き手は、ワカゾーの藤井智子(ふじいさとこ)、書き手は同じくワカゾーの藤田圭子(ふじたけいこ)です。

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ーー普段はどの様に過ごされていらっしゃるんですか。

最近は山口で、お寺のことを中心に、お声かけがあれば他のお寺さんへ仏教のお話をしに呼んでいただいたり、お寺での結婚式(仏前結婚式)のお手伝いをさせてもらったりしています。

ーーウェディングプランナーの資格を取られ、仏前結婚式(仏さまの前で行う結婚式)のプランニングにも携わられているんですよね。携わられるのにはきっかけか何かあったんですか?

仏前結婚式を、もっとおしゃれにカスタマイズできないかなと思ったことがきっかけです。自分で挙げるならドレスがいい!と思っていたんですけど、具体的にどうしたらいいのかということは、お寺さんも式場のプランナーさんも、やったことがほとんどなくて、わからないと言われて。それなら、結婚式を挙げる方とお寺や披露宴会場を繋ぐ役割ができたらと思い、勉強し始めたんです。

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ーーそうだったんですね。実際に結婚式に携わられて、やりがいはどんなところに感じますか?

そうですね。式を挙げられる1組1組に、それぞれの歴史があると思うんです。そういった歴史に触れながら、その方ならではの式を一緒に作っていくことはなんだか、人生に触れてさせてもらっているみたいで、本当にやりがいを感じます。

ーー人生に触れながらって、むちゃくちゃ素敵ですね。

大切なことだと思うんですよね。あと、結婚式は、節目節目の行事のなかで、少し特殊だと思うんです。七五三や成人式、そしてお葬式なんかは「やってもらう」立場じゃないですか。でも結婚式は最も当事者意識を持って、いつ、どこで、誰を招いて、何を着て、どんな風にしようなど、自分たちで考えて準備していきますよね。

結婚式の準備は大変ですけど、改めて自分たちの想いを見つめる貴重な時間でもあります。そうした過程を含めて結婚式がふたりの原点になったらいいなと思っています。

ーー確かにそうですね。考えたこともなかったです。そんな結婚式の中でも、特に仏前結婚式の特徴ってあったりするんですか?

そうですね。その点から「これまでの人生全体」をひっくるめて見つめていくことができるというのは仏前結婚式の特徴かもしれません。

式を一緒に作る際、これまでのことを丁寧に掘り下げることを何度も行うんですね。その中でたくさんのご縁のなかに今があるということに向き合うというか、今までは気づいていなかったけれど、本当はたくさんあった色々なご縁に気づいていけるのが、仏前結婚式じゃないかなと思うんです。

ーー素敵なプランナーさんですねぇ……。accoさんは結婚式から生涯を通じて繋がっていけるお坊さんですね。結婚式に携わられる以外にも、法事や他のお寺さんなど様々な場でお話をされる機会が多いかと思うのですが、お話される時に大切にしていらっしゃることってあるんですか。


難しいですね(笑)なんだろう…。でも、仏教が「自分にとってリアルなものなんだ」、「自分の人生の一番近いところにあるものなんだ」ということが伝わる様に意識してます。仏教の話って時にすごく遠い話に聞こえたり、感じたりすることもあるかもしれませんが、リアリティのあるお話しを聞けたときに私はこころが動かされるので、そうしたお話をできたらと思うんです。

例えば、月や星を見上げて「普段全く気づかなかったけど、気づけば実は宇宙的なひろがりってとても近いところにあったんだ」とはっと気づくことがあるんです。仏教ってそれに近いと思っていて、そういったものを近く感じられると、人生が豊かになると思うんです。


ーー空を見て宇宙的な広がりに気づいていくって、途方もない世界観ですね!でも、遠そうに思えて、実はそうではない。というのは、今回の死生観光トランプのテーマの「死」も同じ様な側面を持っているのかもしれないですね。

イラストを描いているとき、1歩引いたところから「死」を見つめているような感覚で、すごく不思議でした。「死はこわいこと、悲しいこと」というだけではない、また違う、何とも言えない不思議な感覚でした。

普段「死」について考える時は、遺していく人についてとか、やりきれなかった物事だったり、どうしても「生」の側面からだけ物事を考えがちなんですが、今回は「死」そのものに向き合うという感じでしょうか。


ーー「死」そのものと向き合うですか。確かに私もいつも「生」の側面からしか物事を考えていなかったかもしれません。今までaccoさんにとっての「死」のイメージってどんなものがあったんですか。

祖母が亡くなったときが、人が死ぬという初めての経験でした。祖母は自宅で亡くなったので、亡くなったあとに触れた感触とか、すごくよく覚えています。私は6歳だったんですが、悲しいというよりも、「怖い」というイメージでした。そして祖父に「お前もこうなるぞ」って言われたんです。呼吸が止まって、心臓も止まって、動かなくなって、焼かれて……って思ったら、怖くてしょうがなかったです。

その後お坊さんになって、いろんな方の「死」の場に臨ませてもらうようになると、亡き方の思い出などを聞かせていただいていくなかで、「怖い」というよりも「悲しい」ということを強く思うようになりました。

ーー「死」へのイメージが変化していったんですね。

そうですね。イラストを描いているなかで思ったのは、私「死」そのものについては、考えたことなかったかもなぁということでした。怖いもので、苦手なもの、と思っていたけど、イラストを描く間は「死」を、怖いものでもなく、悲しいものでもなく、見つめていく時間でした。

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ーー死を取り巻くイメージではなく「死」そのものを見つめる時間、そんな感じでしょうか。そう言われると私が思う「死」ってなんなんだろうと不思議な気持ちになってきました。今回のトランプは様々な方の手に渡ることになると思うのですが、accoさんがイラストを通して、伝えたいことがあれば教えていただけませんか?

今回、札を4枚描かせてもらったんですが、特に、お連れ合いが亡くなってからしばらくは、真っ黒な姿でお墓のそばで過ごすという札と、子どもを亡くした方の近くに天使になったお子さんがいて泣いてしまうと天使の羽が濡れて飛べなくなってしまうから泣かないでっていう2枚が印象に残ってます。この2枚は、こちら側から死者に思いを馳せていくというよりも、死者からのはたらきかけとして感じられてとても素敵だなと思いました。

というのも、死者(死後)のことは、どれだけ想像してもわからないことだけれど、でもだからこそ、こういう伝統があるのかもしれないなと思ったんです。亡くなったときにはこうしましょうなどと各地域で伝えられてきた事柄は、亡くなった方は今あなたのことをこう思っているよ、こうしているよ、ということを伝えてようとしてくれていると思うと、すごくあったかいですよね。

ーー最後に、トランプを手にとってくれる方へのメッセージをお願いします!

他の方のイラストも見せていただきましたが、是非してみていただきたいのは「こんなふうに死にたい」というような「私の希望」はちょっと置いておいて、ひとつひとつに描かれているものを素直に見つめてみるということです。普段私たちは「こうして欲しい」っていろんなことを思いますが「死」に関してはもうそれは範疇外のことだと思うんです。

このトランプは1枚1枚に大きな意味が込められている気がするんです。私も、ここにはどういう背景があるのか、どうしてこうするのかなどを色々考えてみたんですが、とてもいい時間になりました。一度トランプをじっくり見ていただけたら嬉しいなぁと思います。

ーーaccoさん、ありがとうございました!

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acco
山口県生まれ / 浄土真宗本願寺派僧侶・布教使 / ウェディングプランナー / 紙芝居部メンバー。

聞き手:藤井智子
書き手:藤田圭子

ただいま『死生観光トランプ』クラウドファンディングの真っ只中です。多くの方に死について考える機会をもってほしい。日常に「死」がじんわりと溶けこみ、遊ぶように死について考えることができるようになればと夢見ています。応援よろしくお願いいたします。

#READYFOR #クラウドファンディング

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