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「初めての【弔い】にであえるトランプ」


「初めての【弔い】にであえるトランプ」大河戸さんに聞く『死生観光トランプ』を通して表現したかったこと


こんにちは。ただいま『死生観光トランプ』クラウドファンディングの真っ只中です。多くのご支援、本当にありがとうございます。

さて、『死生観光トランプ』は、世界各国の死生観や弔いの作法がをイラストとキャッチコピーで紹介したトランプです。全国各地のお坊さんや仏教を愛する14人の方々にイラストを描いていただきました。そこで、イラストを描いてくださった方に、『死生観光トランプ』を描いてみた感想や気づいたことなどについてお聞きしました。

今回は、僧侶で消しゴムハンコの達人である大河戸悟道さんにお聞きします。聞き手はワカゾーの藤井一葉、書き手は藤田圭子です。

ーーこの度はトランプのイラスト、本当にありがとうございました!まずは、消しゴムハンコに関する普段のご活動について教えてください。

以前のようにたくさん作ることは無くなりましたが、頼まれてその人の名前を作ったり、ちょっと思いついたものを彫ったりしています。あ!あと、毎月本堂にハンコを作って置いておいて、みんなに集めてもらっています。この試みはもう4〜5年になりますが、押すために、本堂にあがってくれる人もいるほどです。

ーーそれはうれしい反響ですね!

お墓には多くの方がお参りされますが、本堂に入って仏様に手を合わせる方は多くはなかったので、ほんとに嬉しい反響です。「あぁ、消しゴムハンコが自分で彫れてよかった」と思いましたね。

ーー消しゴムハンコをはじめられたきっかけは何ですか?

保田(平野)正信さんという僧侶の方のFacebookを見て、楽しそうだなと思ったところが始まりです。すぐに、ご本人に連絡したところ、作り方はYoutubeで見られますよ〜!と教えてもらったので、そこで勉強しながら始めました。

ーー「死生観光トランプ」の依頼が来た時、どう思われましたか?

純粋に、絵を描くことの依頼を受けるのが嬉しかったです。トランプなんていままで作ったことがなかったので、トランプっていうと、別次元!という感覚がありました。さらに、お話を聞いていくなかで、様々なカードゲームと同じように手のひらサイズのカードで、「死」とか「弔う」ということを盛り込んでいくというアイディアがすごくいいと思いました。トランプっていいなと。

自分の描いたものが形になることはすごく嬉しいので、トランプという形あるものになるという点も、とても興味深かったです。

ーーイラストを描かれての感想を教えてください。

本当はもっとおどろおどろしく描きたかったんですが、トランプだから明るくしたほうがいいのかなと思って、明るめに描きました。また、白黒印刷で書き込みすぎるとイラストがつぶれてしまうことものあるので、線で見せるようにしました。他の方のイラストを見たら案外軽いタッチでしたので、結果的に自分だけおどろおどろしく書かなくてよかったなと(笑)。

担当の1つであった「エクアドル」は、内容が衝撃的だったので、どこまでイラストで表現できるかなっていうのはありました。逆に、見てどうでしたか?

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ーートランプらしくてとても可愛かったです。首のところだけをピックアップしてくださっているところと、民族的な表現をしてくださっているところも、すごく素敵でした。


ありがとうございます。エクアドルの弔い⋯⋯すごい世界ですよね。

いろんな国でミイラをつくっていることは知っていましたが、具体的な方法から、敬意を評して装飾していくというところなどは初めて知りました。殺した者を敬っていくという、殺して終わりではなく先に続いていくという点が、なんとも不思議な感覚でしたね。相手をやっつけて、勝利して、おしまい!というではなく、そこから霊力をいただこう!みたいな⋯⋯。


ーー今回、2種類のトランプを描いていただきましたが、実際に描かれてみて如何でしたか?

エクアドルのほうは強烈な内容だからこそ、(資料の写真を)写せば伝わる、という感じ。

一方でフランスのほうは、1つずつ説明しないといけない感じでした。最終的には花嫁と墓石となりましたが、それまではいろいろとアイディアをスケッチしました。


ーーいろいろとスケッチしてくださったんですか!?

描きました、描きました(笑)。立ち上がっている花嫁を描いて、本来はいるべきはずの花婿がいない⋯とか、西洋の墓石と立っている花嫁とを並べてみるなど⋯。でも、花嫁と墓石の高さがあわなかったりして⋯。最終的には花嫁を座らせる絵になりました。

パリの墓石とか、ネットでいろいろなものも調べましたよ(笑)ほんとにたくさんあって、逆に、墓石らしく見えないものもあって。ひと目で墓石!とわかりやすいものをチョイスしました。イラストを見た方が「これ、フランスの墓石じゃないぞ」と思ったら、悔しいじゃないですか(笑)。

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ーー制作時間はどのくらいかかりましたか?

エクアドルの方は2日くらいですかね。フランスの方は、3〜4日アイディアスケッチを描いてはちょっとおいて、また見ては描き直して⋯ということを繰り返しながらの完成でした。

花嫁と墓石のイラストは、自分のなかで「あぁ、はまったな」って思えたものでしたね。墓石に花嫁が寄り添うことで、結婚すべき人、したい人が、そのお墓の中にいるんだろうな、ということが伝わるのでは、と。今考えても、そのアイディアが一番だなって思います。


ーー最初にイラストの件をお伺いした時に、「ドクロがいいかなぁ」というお話を聞かせてもらったことが印象的だったのですが、ドクロがお好きなんですか?

消しゴムはんこを始めた当初、ドクロばっかりを彫っていたことがありました。それがすごく楽しかったんですよ。ドクロって、言い換えれば、頭蓋骨。

ご自身の手を頭に持ってきてもらうとわかりますよ、頭蓋骨が。手を頭に置いたときにある、かたいもの。そうやって触れた時に、「私の芯(しん)はドクロだな」としみじみ思います。

ドクロって死でもあり、生でもあるなと思うようになって⋯。そうしていくうちに、ドクロに対しての愛着も深まっていきました(笑)。

ーードクロが芯!!確かに、今生きている私たちにもありますもんね、ドクロ⋯頭蓋骨⋯。そもそもどうしてドクロを彫ろうと思われたんですか?

消しゴムはんこをはじめたときに、犬がくわえているような骨を彫ってみたんです。そしたら意外とかわいくて。それで、これがかわいいならドクロもかわいいんじゃないか、と思って彫ってみました。案の定、かわいかった!!で、100くらいは彫りましたね⋯(笑)。

ーーフォルムの可愛さですか?

そう、フォルムの可愛さ、ですね。

あとは、繰り返しになりますが、ドクロは「死」だけじゃなくて、「生」、今のワタシ、だなと。「いのちの芯」ってその頃は言っていたと思います。生き生きとしたドクロを描いて楽しんでいました。そういうことがあったので、今回のイラストでもドクロが活かせるようなものがあったらいいなと思いました。墓場でドクロがダンスとか(笑)。

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ーーなるほど。そうした背景もあって、エクアドルをお願いした気がします。が、エクアドルはドクロではありませんでしたね⋯(苦笑)。

あのイラスト、鼻が大きかったでしょう?資料の写真を見た時にどうしてこんな歪な顔なんだろうと不思議に思いました。調べてみると頭部から頭蓋骨を取り出して茹でたり干したりして作られるということで驚きました。そして鼻は厚い皮膚でできているので、茹でたりしてもそんなに縮まない、でも他のところは茹でて縮むから形がいびつになる。そんなことも表現させてもらいました。手で包んだのも、大きさを表すためであり、使者への敬意をはらっている姿です。

ーーなるほど!だから、頭部が手の中に収まっていたんですね。それに、その手が、あったかさを表しているなぁとも感じました。

包み込んでいるあの手も、ある意味、装飾、ですよね。

ーー描いてみて一番ご苦労された点は、なんですか?やはり、「フランスのイメージづくり」ですか?

フランスの花嫁の表情かなぁ。泣き叫ぶのは違うし、にっこりてのも変だし。本当は遠くを見つめるような表情が表現できたらよかったのですが⋯いかんせん画力が無い(笑)。

ーーいやいや、とんでもないです。花嫁さんの悲しみや寂しさ、そして、結婚という喜び⋯⋯といった、複雑な心持ち、伝わってきました。 では、最後に一言お願いします!

参加させてもらえて本当によかったです!ひとりじゃできないことなので。

それから、自分の作品がかたちになるのがすごく嬉しいです。手に取るのがホントに楽しみ!ありがとうございました。

ーー大河戸さん、ありがとうございました!

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大河戸 悟道(おおこうど ごどう)
1961年(昭和36年)正太寺に生まれる。名古屋芸術大学洋画課卒業。アパレルメーカーや立体造形工房、建築関係等勤務。2003年(平成15年)正太寺住職を拝命。以後、楽しいお寺、気軽なお寺、安心なお寺を目指し日々研鑽中。

▶正太寺WEBサイト

聞き手:藤井一葉
書き手:藤田圭子

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ただいま『死生観光トランプ』クラウドファンディングの真っ只中です。多くの方に死について考える機会をもってほしい。日常に「死」がじんわりと溶けこみ、遊ぶように死について考えることができるようになればと夢見ています。応援よろしくお願いいたします。


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