貧女の一灯。長者の万灯
むかし、和泉(いずみ)の槇尾山(まきおさん)のふもとに、一組の夫婦が住んでいました。子宝にめぐまれるように、いつも槇尾山のお寺にお参りしておりました。
ある日お寺からの帰り道、幼子(おさなご)の火のついたような激しい泣き声を、ふしぎに思った夫婦は声をたよりに進んで行きました。辻堂(つじどう)ののき下に、あみ笠の中にもみじのような手をふりながら、声をかぎりに泣いているではありませんか。
むちゅうでかけ寄った二人は、子どもをだき上げると、りっぱな絹の小そでに美しいたんざくがそえて