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EP7.【平野仁志#26】

教師の卵が語る勝負論
高みを目指して、いざNPBへ

欲しいピッチャーと思われたくて

良いピッチャーの条件とは一体なんだろう。

球速、制球、奪三振率、与四死球率。
試合を作れるか否か、勝てるか否か。

どれも間違ってはいないと思うが、平野が描く良いピッチャー像はどれも違う。

欲しいピッチャーと思われるかどうか

なるほど、哲学的な答えに深く考えさせられた。

大学卒業とともに富良野ブルーリッジへ入団。
兵庫ブレイバーズと富良野ブルーリッジの合同トライアウトを受けての結果だ。

高いレベルの人とプレーしたい。
闘う人への憧れが、平野を強く突き動かした。

「NPBへ行きたいのも、日本で一番レベルが高いから。上手い人たちとバチバチに闘いたい。」

富良野ブルーリッジ時代には先発で11勝をマーク。
自分が投げてる試合は絶対に勝ちたい”と意気込むほど、心の奥には熱い闘志が漲っていた。

「球速やその他の数値を出すことで確率は上がるかもしれないが、一番はNPBに欲しいと思われるか。」

一年目のシーズンが終了した後、大分B-リングスのトライアウトを受験した際にも、指揮官の提案によりサイドスローとしての入団が決まった(後にフォームは早々に戻す)。

「入れるならやるしかない。」
いつだってチームの需要を考えてのプレースタイルは、貪欲にNPB入りのチャンスを狙っている。

169cm/71kgという野球選手にとっては小柄な体格だが、これでも大学時と比べると7~8kg増量したという。

大学生の頃から筋量の増加と向き合い取り組んできた軸は、一貫して“エンジンを大きく”だ。
まだまだ少ないことを課題にしている平野は、筋量の増加と比例して球速も上がると見込んでいる。

それに加えて西村監督の指導。

昨年大分B-リングスに所属していたものの、野手監督のもとでしかプレーしたことがなかった平野は、投手出身の新監督に興味を示した。

「感覚を言語化して教えてくれる。その中で自分がイメージしやすいように置き換えて取り組めるから、腑に落ちることも多い。」

すでに絶大な信頼を置いている監督の采配により、今シーズンは開幕投手も務めている。

そんな平野だが、当初思い描いていた人生とはかけ離れた世界へと進んでいる。

大学時代に訪れた転機

元々教師を目指して入学した順天堂大学。
親戚に教員として働く人が多かったこともあり、幼き頃から身近な職業だった。

野球を教えながら教壇にも立てる。
ぼんやりと野球に携われる仕事がしたいと夢見た平野だったが、コロナウイルスの流行により大学3年生時の春季リーグ戦が中止となった。

“先輩の影響で独立リーグを知り、自分も野球熱が上がった。第一線でプレーがしたい。”

将来のことを思案する中、独立リーグへと進む先輩を見てきたことにより、自身の競技継続に対する思いが増してきた。

大学4年時は抑えとして活躍

大学から硬式野球への挑戦を始めた(高校まで軟式野球部に所属)過去もあったが、その理由はやはり自身を取り囲むレベルを引き上げたいから。

常にそこには向上心と闘争心があった。

当時独立リーグへ進むことを心に決めた大学3年生時、130km/hにも満たない球速に、反対の声も上がっていたという。

「顧問の先生には“今の成績と実力じゃ話にならない”と言われていた。なんとか結果を出してやろうと思った。」

公式戦での出番があまりなかった平野だが、最終学年では抑えとしてフル回転。
最上級生としてチームにはなくてはならない存在となっていた。

教職課程を履修していた平野は、在学中に中・高の教員免許を取得。
現在のチームでもコミュニケーション能力に長けており、年下ばかりの投手陣を率先して引っ張っている。

「年上意識を持つことは少ない。むしろ年下には舐めてもらったほうが良い。」
大人の前ではお調子良く話を聞き、年下メンバーが集まる時には威厳と親しみやすさを兼ね合わせる。

年齢関係なく頼りたくなる存在だ。
きっと学校に欲しがられる“良い先生”になるだろう。

練習中カメラに見せる素顔

それでもまだまだ現役にかける想いが燃え尽きることはない。

「今は教師になろうとは思っていない。より長く現役を続けて、より長くバチバチな戦いがしたい。」

巧みな駆け引きと冷静な分析力。
頭の良さを随所で光らせ、いかに試合をコントロールできるか。

房総半島一周日記

朝5時に出発した自転車旅は夜9時に終了

大学時代を千葉で過ごしていた平野。
卒業式を後に控えた2月に自転車で房総半島を一周したと言う。
少々ノリが大学生すぎる。

メンバーは元同部屋の4人。
自転種に乗る1人をルーレットで決め、あとの3人は車で先導するというなんともYouTuberらしい企画だ。

そんな同期メンバーとは今でも連絡を交わすほど仲が良い。
同部屋だった医学部メンバーの卒業式の際には、わざわざ東京まで会いに行っていた。

野球部の同期メンバーからも励ましの声をもらうこともあると言い、刺激とやる気をもらっている。

そんな平野も今年で25歳。
チーム内投手では最年長に当たる。

目の前の打者には常に100%。
持ち前の統率力を遺憾なく発揮し、一つひとつの全力が27個積み重なった時、チームが笑顔で満たされる。

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