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小説新人賞は勢いが大事、売れるのは既視感があるもの。じゃあどうすれば?

使い回しの投稿は仁義に悖る?


ツイッターに小説の下読み(一次選考者)をしている方(元編集者の書評家)が、「使い回しの原稿は仁義に悖る」と書いて騒ぎになりました。

一次選考(下読み)は編集者が読まず、作家やライターにまかせる場合が多いです。その書評家さんによるといま下読みしている投稿作が、別の社の下読みで読んだ小説だったそうです。「仁義に悖る」という強烈な言葉に反応した人が多かったようで、批判が集まり、今はその書評家さんは削除していらっしゃいます。

純文学は、規約で他社に応募した小説は送らないでと書いているところが多いですね。一般文芸では、他社に応募した小説は不可と書いているところはないものの、最終選考に残ったら、編集者から「他社に応募し落選した小説ではありませんね」と聞かれることもあるそうです。

他社に応募して落選した小説はダメなの?

他社に応募して落選した小説はダメなのでしょうか? 実はそうとも言い切れないんですね。「ハリーポッター」は12社に落とされたそうです。「進撃の巨人」はジャンプでボツになったそうです。デスゲームものの元祖である「バトルロワイヤル」は「こういうことを考える作者が嫌い」と言われて落とされています。「86―エイティシックス―」は電撃で一次落選、ラストを書き足してもう一度電撃に送ったら受賞して大売れです。「マルドゥック・スクランブル」はどこの社も出してくれずお蔵入りになっていた小説をハヤカワが出したら大売れです。私のデビュー作はT社Nレーベルで二年お預かりされて握り潰された小説をフランス書院の新人賞に送ったものです。大賞受賞し、美少女文庫の最多増刷作家になりました。そして、その後20年間もフランス書院で書き続けています。(私はAmazonのアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。)

でも、下読みをしていらっしゃる書評家の先生方は、こぞって言います。「私が弾いた小説が他社で受賞するなんてありえない」「使い回しは無礼だ」

私は通信添削をしていますが、新人賞の一次選考基準がここ数年ではっきり変化しています。「これで一次選考通過? 嘘ぉ? 下手すぎる」と驚くことがある。それでいて、丁寧に紡がれた小説が一次選考で落ちる。荒くても勢いのあるものを通しているんだと気がつきました。使い回しがダメというのは、勢いで評価していることの現れですね。

新人賞は勢いのあるもの、新奇性のあるものが通りやすい。でも、実際に売れるのは、既視感のあるものなんですよ。読者さんは「売れている小説に似ているもの」を読みたがるんです。キャラ文芸が好きな読者さんはキャラ文芸しか読まないし、時代小説が好きな読者さんは時代小説しか読まない。読者さんは勢いとか新奇性とか欲しがっていないんですよ。この傾向はとくに、ライトノベルやウエブ小説などのジャンル小説で顕著です。

じゃあ、どうすればいいのか? わざと荒くヘタクソにすれば一次選考は通るのか? いいえ。だめです。一次は通っても次で落ちます。

小説教室の先生としては、

「好きな小説、書きたい小説を全力で書きましょう」

としか言えません。

嫌いだけど売れ線だからと嫌いな内容を書くよりは、売れ線じゃなくても好きな小説を書くほうがいい。売れ線は変わるから、いつかあなたの好きがみんなの好きになる瞬間がやってくるから、好きな小説を一生懸命に書いて、どんどん新作を投稿してください。それが勢いに繋がるんだと私は思っています。

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