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【小説】

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僕の姉ちゃんが死んだ。 じいちゃんと僕、そして姉ちゃんとの笑って泣いた愛しい時間。 だけど、きっと僕はここに立ち止まってもいられないだろう。 祖父を介護してたときに書いた物語。…
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2018年6月の記事一覧

小説「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」第10話

小説「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」第10話

【前話までのあらすじ】姉ちゃんを喪った僕は、姉ちゃんが生きていた過去をいったりきたりしながら、姉ちゃんの短かった人生と僕の未来をぼんやりと思う。登場人物は四人だけ。
ゆうや・・・僕
あやこ・・・僕の姉ちゃん
じいちゃん・・・僕のじいちゃん
ユカ・・・僕の彼女

 遠くの山が新緑で眩しくなるころ、学校を終えていつものように僕は姉ちゃんに会いに行った。中間試験中だったから、いつもよりずっと早く病室に着

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小説 「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」第11話

小説 「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」第11話

【前話までのあらすじ】僕は結局のところ、姉ちゃんの苦しみがわかっていなかった。病院から連れ出してやると言った僕に姉ちゃんはほほ笑んだだけだった。

「大事なのはゆうやの未来でしょ」

 九月下旬の公園は夏と変わらない暑さで覆われていたけれど、それでも蝉の声はすっかり聴かなくなっていた。濃い緑の葉をつけた木々は時々風に音を鳴らした。

「今日も暑くねぇ?」

「話をそらさないで。いつまでグダグダして

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小説 「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」 12

小説 「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」 12

【前回までのあらすじ】ねえちゃんは僕の誕生日の前日に電話をかけるとじいちゃんに伝えていた。でも電話は鳴ることなく、姉ちゃんは死んでしまった。僕はといえば、家で姉ちゃんからの電話を待っていたから、姉ちゃんの死に目には会えなかった。そんなことを思い出しながら、僕は公園でユカと進路について話していた。

 僕はずっと考えていた。どうして姉ちゃんがこの世から飛び立つその瞬間、姉ちゃんのそばにいてやれなかっ

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