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というわけで、東京都知事選がつつがなく終了しました。結果は言うまでもなく現職小池百合子氏の圧勝であり、開票0分で小池氏に当確が出るなど他の有力候補はまともな相手にすらならなかったというのが終わってみての感想と言えます。

とはいえ、そんなわかり切った話は読者のみなさんも関心はないでしょう。気になるのは2位以下の得票数、そしてなにより暇空茜氏をはじめとする泡沫候補の得票数です。

先日、本マガジンでは暇空茜氏の得票数を予測し「2万票~5万票が現実的なライン」「具体的な数字を当て勘で出すなら3万票」という数字をあげたのですが、暇空氏の得票数は筆者の予測を大きく上回る11万196票。「暇空茜が泡沫候補の枠を出ることはない」という基本的な観測自体は覆されませんでしたが、具体的な票読みではやや数字を外すという微妙な結果に終わってしまいました。まぁ自己採点するなら45点というところでしょうか。「選挙は水物」という言葉がいかにリアルであるか、改めて痛感するという貴重な体験をさせて頂きました。

票読みを外した原因はたったひとつ、2024年度の東京都知事選ではこれまでの「選挙の常識」がまったく通じなかったからとしか申し上げることができません。特に泡沫候補に着目すると今回の選挙結果は異常とすら言えます。先日の予想記事で書いたように「泡沫候補」、つまり

・議員活動歴なし
・テレビ知名度なし
・基盤となる組織なし
・国政政党の所属・推薦なし

の4条件を満たす候補者というのはこれまで都知事選ではまともな得票数を得られないのが当たり前でした。筆者は2003年から2020年までに行われた計7回の東京都知事選のデータを基に得票予想を立てましたが、この20年の歴史、数百人の候補者の中で「泡沫候補」の歴代投票数というのはせいぜいが以下のようなものだったのです。

1位:ドクター中松 12万9406票(2012年)
2位:家入一真 8万8936票(2014年)
3位:吉田重信 8万1885票(2012年)
4位:マック赤坂 5万1056票(2016年)
5位:五十嵐政一 3万6114票(2012年)
6位:後藤輝樹 21,997票(2020年)
7位:内川久美子 21,626票(2007年)
8位:池田一朝 19,860票(2003年)
9位:高橋尚吾 16,664票(2016年)
10位:外山恒一 15,059票(2007年)

半ばTVタレント候補と化した「ドクター中松」や「マック赤坂」が善戦する以外は、上場企業創業者である家入一真や元外国大使である吉田重信が多少の得票数を稼ぎ出す程度で、無名候補の得票数というのは最大でも2万票程度にまで抑えられていました。この構図は基本的には2003年以前の昭和~平成前期の都知事選でも変わりありません。東京都知事選である程度の得票数を得たいなら、「テレビ露出」「議員経験」「国政政党の推薦」「自前の組織」という四種の神器のいずれかを持っていなければ話にならない。それが今までの、戦後の東京都知事選70年あまりの「常識」だったのです。

しかし2024年度の東京都知事選は、この「常識」がまったく当てはまりませんでした。「4種の神器」を持たないにも関わらず10万票以上の得票数を獲得した候補者が、なんと3名も同時に現れたのです。

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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