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過去20年間の都知事選の泡沫候補を分析した上で語る『暇空茜』の予想得票数

(色々な意味で)有名なインフルエンサーである暇空茜氏が東京都知事選へ出馬表明をしたことが話題になっています。

とは言うものの暇空氏の活動領域はTwitterやYouTubeなどインターネットのみに偏っており、さらに氏は顔出しすら行っておらず、街宣等の選挙活動経験もゼロに等しいことから東京都知事として当選する可能性はゼロと断言して良いでしょう。

『デイリー新潮』の報道によると暇空茜氏は「石丸伸二氏の当選を阻止するために出馬した」などと主張しているようなのですが、正直なところ何を言っているのか筆者にはよくわかりません。石丸氏の当選確率だってゼロに近いし、暇空茜氏が立候補したところで石丸氏の当選確率に何か変化があるとは思えないのですけどね…。暇空茜氏の情報はもう1年以上前から追っていないので氏がいま何を問題視しているのかはよくわからないのですが、なんというか「遠いところまで行ってしまったなぁ…」という感想があるのみです。

さて、しかしながら「インターネットでしか知られていない候補者が都知事選でどの程度の得票数を得るのか」は極めて興味深いテーマと言えます。

良く知られているように暇空茜氏はマスメディアからほぼ黙殺されており、東京都に対する国家賠償請求訴訟の勝訴ですら主要メディアからほぼ完全に黙殺されています。昨今ネットで知名度のある人物はマスコミでも取り上げられるのが当たり前なのですが、暇空氏はネットで「のみ」知名度があるという極めて特異な存在と言えるわけです。

そんなわけで暇空氏の得票予想は過去に例がないことからも各人言っている数字がバラバラです。Colabo問題やAV新法問題などを切っ掛けに暇空氏の活動に理解を寄せる宇佐美典也氏は「20万から40万票」という大胆な予想を立てていますし、元衆議院議員の宮崎タケシ氏も「10万票前後で頭打ちなのか、それとも15万〜20万票あたりまで伸びるのか」などと10万票台を現実的なラインと想定しているようです。一方で「1万票もいけば良いところ」「せいぜい数千票」との辛辣な声もあり、各人の予想票数にまったく統一性がありません。

個人的に、こうした全く予想がつかないカオスほど考える楽しみがあると感じます。というわけで本稿では東京都知事選の歴代泡沫候補の得票数を分析した上で、暇空茜氏の得票数の予想を試みてみようと思います。まぁ素人予想なので当たるも八卦当たらぬも八卦という感じなのですが、大外ししたときは指差して笑ってください。


過去の泡沫候補は何票くらい獲得してるのか

泡沫候補の得票数を予想するなら過去の泡沫候補の分析からはじめるのが筋でしょう。どの候補者を「泡沫候補」と見做すべきかは中々難しいところですが、

・議員活動歴がない
・国政政党の所属・推薦がない
・タレントや歌手などテレビ著名人ではない

の3条件に当てはまる候補者をここでは「泡沫候補」と定義することにします。マック赤坂、ドクター中松、外山恒一、家入一真、後藤輝樹、スーパークレイジー君、暇空茜あたりが典型的な泡沫候補です。

ただし「泡沫候補」の中にも独自の政治組織を持ちある程度の動員力がある候補者もいます。最近の都知事選候補者の中ですと、「日本第一党」の桜井誠や「ホリエモン新党」の立花孝志、やや古いところだと「雑民党」の東郷健、「大日本愛国党」の赤尾敏、「共生新党」の黒川紀章などがこのパターンです。特に桜井誠や立花孝志に顕著ですが、こうした候補者は純然たる泡沫候補というよりは成長中の新興勢力と見做すこともできますから、本稿では「泡沫候補」とは呼ばす「中小候補」と呼ぶことにします。

さて、こうした「泡沫候補」の中で、歴代最多の得票数を叩き出したのは一体誰なのでしょうか。

2003年以降およそ20年間の都知事選の得票数データを見る限り、意外なことに第1位はドクター中松という結果になりました。2012年度の東京都知事選で「中松義郎」名義の12万9406票を獲得しています。

ドクター中松は1999年以降6回も東京都知事選に出続けているのですが、

1999年 東京都知事選:100,123票
2003年 東京都知事選:109,091票
2007年 東京都知事選:85,946票
2011年 東京都知事選:48,672票
2012年 東京都知事選:129,406票
2014年 東京都知事選:64,774票

と、その都度安定してある程度の得票数を稼ぎ続けています。これはドクター中松が実業家また発明家としてTV出演の機会が多くタレント候補者的な要素を多分に持っていたことにも起因するのでしょうが、特に1999年、2003年、2012年の選挙では他の泡沫候補が少なかったことにも背中を押されているように感じます。

現に家入一真の立候補があった2014年には、2012年に比べ得票数・得票率共に大きく下落しています。2014年はドクター中松だけではなくマック赤坂なども票数を大きく落としており、泡沫候補は「泡沫候補に投票する有権者」という有限のパイを奪い合う関係にあることが伺えます。ちなみにドクター中松が出馬を取りやめた2016年の選挙でも、泡沫候補仲間としてライバル関係にあるマック赤坂が大きく得票数を伸ばしています。泡沫候補に投票する浮動層はマック赤坂だろうがドクター中松だろうがあまりその違いを気にしていないのかもしれません。

ここからは団子状ですから、歴代泡沫候補の得票数ランキングをざっと並べていきましょう。ただし分析の対象とする候補者は2003年以降の都知事選の立候補者に限定しています。それ以前だと流石に筆者も「タレントか否か」や「どれほど知名度があったか」が肌感としてわかりませんので…。


第2位:家入一真 8万8936票(2014年)

連続起業家であり、「GMOペパボ」「CAMPFIRE」などの創業者である家入一真氏が2位にランクインです。家入氏はジャスダックに史上最年少で創業企業を上場させた若手起業家であり、「リバ邸」などの社会活動でも知られています。


第3位:吉田重信 8万1885票(2012年)

元外交官でありネパール大使だったという以外ネットで調べても情報が出てきませんが、吉田重信氏が歴代3位にランクインです。というか、ネットで調べてもほぼ情報が出てこないような候補者がこの順位にランクインすること自体が、ネット知名度がいかに選挙で役に立たないかの傍証であるようにも思いますね…。やはり有権者はポスターに書いてある候補者の政官界の活動歴などを基に(つまりは深くリサーチせず)投票してる方が多いのでしょう。


第4位:マック赤坂 5万1056票(2016年)

ドクター中松と並んで東京都知事選の常連であり、「泡沫候補」のイメージキャラクターとしてお馴染みのマック赤坂が4位にランクインです。ちなみにマック赤坂氏は京都大学→伊藤忠商事→年商50億超のレアアース輸入商社を創業という経歴であり、ノータリンにしか見えない選挙パフォーマンスとは裏腹に実業家としての業績は並外れたものがあります。にも関わらず10年以上の政治活動歴で最大得票数が5万票程度であることを考えると、実業界における実績は官界・政界の実績ほどには評価されないことが伺えそうです。


第5位:五十嵐政一 3万6114票(2012年)

これまたネットに全く情報が転がってないお方です。Twitterアカウントは一応あるのですがフォロワー数は驚きの57人。「一般社団法人セリーマレーシア」の協会理事長で、外国人専用カジノの誘致を訴えていたとのことですですが、社団法人の名前も五十嵐氏の名前も筆者は全く聞いたことがありません(社団法人はHPすらありません)。2012年は立候補者が9名しかおらず泡沫候補として得票チャンスだったということはあるのでしょうが…。これまた「ネット知名度が得票数と比例しない法則」の傍証と言えるかもしれません。


ここからは本当に団子の団子ですから、経歴の紹介も省略して候補者名と肩書と最大得票数のみ羅列していきます。

後藤輝樹 不明 21,997(2020年)
内川久美子 風水研究家 21,626票(2007年)
池田一朝 不明 19,860票 (2003年)
高橋尚吾 元派遣社員 16,664票(2016年)
外山恒一 自称革命家 15,059票(2007年)
鈴木達夫 弁護士 12,684票(2014年)
スーパークレイジー君 不明 11,887票(2020年)
込山洋 不明 10,935票(2020年)

1万票以下の候補者に関しては省略しています。なおこの他にも1万票以上獲得した候補者としては田母神俊雄(61万865票、2014年)、上杉隆(17万9631票、2016年)、桜金造(6万9526票、2007年)、谷山雄二朗(1万300票、2011年)が存在しますが、いずれも「テレビ知名度を有するタレント候補者」ということで今回の「泡沫候補」の一覧からは外しました。本稿ではあくまで

・議員活動歴なし
・テレビ露出なし
・自前の政治勢力なし
・大手政党の所属・推薦なし

を満たす候補者を「泡沫候補」と定義していることにご留意ください。


「中小候補」たちの得票数

上では典型的な「泡沫候補」たちを取り扱いましたが、都知事選には「独自の政治勢力を率いる完全な泡沫とは言えないまでも候補者たち」も存在します。

「日本第一党」の桜井誠や、「N党」の立花孝志、「共生新党」の黒川紀章、「幸福実現党」のトクマや七海ひろこあたりですね。まぁ黒川紀章は著名な建築家ですし政治活動家というよりはタレント議員的な側面の方が大きいと感じますが、一応共生新党から10名の候補者を出してますし、「独自の政治勢力」枠としておきます。

スマイル党やインターネッ党など政治勢力を自称する候補者は他にもいますが、本稿で「政治勢力」として認めるか否かのラインは「党首以外の立候補者を出しているか否か」です。

さて中小候補の得票ランキングもざっと紹介していきましょう。


第1位:日本第一党 桜井誠 17万票8874(2020年)

いわゆる「ネット右翼」の最大勢力である日本第一党の桜井誠氏が中小候補ではダントツの1位となりました。ちなみに桜井誠氏は2016年にも無所属で都知事選に立候補者しましたが、このときの得票数は11万4171票。政党を立ち上げ組織的な行動に出たことが得票数が大きく伸ばしていることが伺えます。選挙は地盤(組織)・看板(知名度)・鞄(資金力)と言われますが、「地盤」(組織)の重要性を物語る好事例と言うべきでしょう。どう考えても対韓・対中感情は2016年から2020年で大幅に好転してますからね。「ネット右翼」に時代の後押しがない中で得票数を伸ばしているのは驚きです。


第2位:共生新党 黒川紀章 15万9126票(2007年)

第2位は共生新党の黒川紀章となりました。ただ先述のように黒川氏は世界的に著名な建築家であり、テレビをはじめとするマスメディアへの露出も相当程度あったと言われています。共生新党も黒川氏のワンマン政党であり落選後活動をすぐしぼませていることを鑑みると、「政治勢力」というよりは一種の「タレント議員」と見た方が適切と言えるでしょう。


第3位:幸福実現党 トクマ 4万7829票(2012年)

第3位は幸福実現党からトクマ氏がランクインしました。幸福実現党からは他にも七海ひろこ氏が立候補し2万8809票(2016年)を獲得しています。幸福実現党は組織力は文句なしのレベルですが、いかんせん新興宗教ということでマイナス方向の知名度があり過ぎるのが難点と言えそうです。


第4位:ホリエモン新党 立花孝志 4万3912票(2020年)

極めて評価しづらいのが立花孝志氏です。まず立花氏は所属政党を極めて特殊な事情から変更しています。元々は「NHKから国民を守る党」の党首だったわけですが、N党は2020年に分裂し古巣を追い出された立花氏はホリエモン新党を立ち上げます。しかもどうもホリエモン新党に堀江貴文氏は関与していないらしく、じゃあなんでホリエモンはこんな党名やめさせないんだよという話なんですが、一方で堀江氏の秘書が2020年にホリエモン新党から都知事選に立候補していたりもして、もう何が何やらわからんというのが正直なところです。

筆者の率直な心境

ただし立花孝志氏はそれなりの選挙活動歴があり、参議院議員や区議会議員として活動した期間も(わずか数か月ながら)存在します。というわけで本来であれば「議員活動歴なし」の条件を満たしていないのですが、あまりに特殊すぎて真っ当な候補者と混ぜるわけにもいかず、悩みに悩んだ末に「中小候補」として掲載しました。一応、「知名度」と「選挙活動歴」と「組織力」をある程度有した候補者とは言えるのでしょうが…。筆者は立花ウォッチャーでないのでこの程度のことしか言えません。すいません。2020年の都知事選でコロナ自粛に反対して4万3912票、というのが一応のファクトです。

というわけで、中小候補の得票数ランキングでした。見るべき点はやはり桜井誠の17万8874票でしょう。特に「党を組織してから得票数が大幅に増加した」点は無視できないと感じます。桜井誠氏は2024年度の都知事選にも立候補していますが、氏の得票数がどう変化するかは注目に値します。


暇空茜の得票数を予想する

長い前置きとなってしまいましたが、東京都知事における泡沫候補の得票数の相場観がだいたいおわかり頂けたのではないかと思います。ここからはこれらのデータを基に暇空茜の得票数を予想してみましょう。

こうした過去の泡沫候補のデータを参照すると、同じような属性の泡沫候補は同じような得票数に終わりがちという傾向が見てとれます。たとえば、

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