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私の人生を変えたもの『Think Civility』|「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である

みなさんは、ご自身の人生を変えるきっかけとなった「ひと」や「もの」と、もう出会っているだろうか。

仕事がうまく行かず会社に行けなくなったときに支えてくれたパートナー、親友と大喧嘩したときに仲直りのきっかけを作ってくれた友人、恩師から譲り受けた本など。

人生を変えるとまではいかないものの、転機となった出来事に関わったひとやものは、少なからず誰にでもあるもの。

私はもともと「ぐるぐる思考」をしがちで、会社の同僚との何気ない会話やクライアントとのメールのやりとりなど、他のひとは気に留めない場面でも、他者からの言葉を振り返り思い悩むことが多かった。

例えば、「あのときの〇〇さんの言葉、△△さんは傷ついていないかな?」「陰でクライアントさんが✕✕さんの愚痴をこぼしていた。私も陰で何か言われているのかな?怖い……」など、他者のネガティブな言動に敏感に反応してしまう。

自分は繊細すぎるのではないか?気にしすぎなのではないか?と、生まれ持った自分の特性に嫌気が刺していたところ、ある本に出会い、自分を肯定し前へ進めた話をする。


悩みの種:新卒で配属されたサポートセンターでの話

2017年4月、私は新卒でソフトウェア商社のデータベース製品のテクニカルサポートの部署へ配属された。業務内容は、クライアントが運用するデータベースサーバーで発生したエラーのトラブルシュートやQA対応。

半年間の研修を経て、いざ現場へ。OJT形式で先輩が隣で顧客対応のお作法とエラー調査のやり方を教えてくれる。先輩は他にも案件をいくつも持っているのに、いつでも穏やかに丁寧に、私の疑問や不安を解消してくれる。

私はサポートセンターに配属されるまで、「中のひと」がどんなひとなのか想像したことがなかったが、こんなにも知的で親切なひとがいるのか!と感動したものだ。

クライアントも「中のひと」を想像する機会は少ないようで、私たちは「質問箱」のように捉えられる時がしばしばあった。乱暴な口調で「エラーが出たからいますぐ対応しろ。」と、怒りの矛先を向けるひともいた。

新卒時代に奮闘する私の様子

電話でのやりとりがひと段落し受話器を置こうとすると「いやだ!切るな!!」と叫ぶひと、「忙しいんだ!電話なんかかけてくるな!」と怒鳴るひと、回答してもお礼を言わずに音信不通になるひと。

このような言動を目にするたび、対応している同期や先輩の悲しい顔を見てひどく傷ついた。「どうしてこんなに心優しくて技術力も高い素敵なひとたちが、無礼の暴力を受けないといけないのだろう。」と、ぐるぐる思い悩んだ。

お世話になった先輩方に恩返しせずにいなくなるのは後悔が残ったが、「クライアント側の職業に立てば、モヤモヤが晴れるかもしれない。」と思い、私はSIerへ転身した。

無礼の正体を探りに別の会社へ

さらなる困難:新しい会社でのカルチャーショック

SIerとして入社したのは外資系のコンサルティングファーム。以前の会社が日系企業だったため、社内コンテンツや全社メールの多くが英語表記であることにまずビビる。

そして一番のカルチャーショックは、コミュニケーションの取り方や言葉選び。「スピード」が一番。丁寧に推敲された100字よりも、チャットの通知ウィンドウで読める20字×5回が好まれる、といった具合。

誤字脱字や文法エラーがあっても問題ない。たいてい脳内で補完できるからだ。もちろん効率的だし理解はできる。だが、それが許されない世界で生きてきた私は脳が追いついていかなかった。

「スピード」を重視したコミュニケーションは、時に誤解を招くことがあった。私を苦しめたのは、またしても「無礼」に感じてしまう言動だった。

スピード重視の環境はまるで弱肉強食の世界

ある日、上司から振ってきたタスクの指示が間違っており、私の作業時間が20時間ほど無駄になってしまうことがあった。それ自体はよいのだが、次に来たメッセージが「こっちのタスクよろしく」だったことにモヤモヤを感じた。

「謝ってほしいわけじゃないけど、『手間かけてごめん』とかの一言があるだけで印象が変わるんだけどな……気にしているのは私だけ?」

モヤモヤは募るが、前職でクライアントの言動に違和感があったときの背景が少し見えてきた気がする。

サポートセンターやライターなど、「文章」自体が商品やサービスになる職業でない限り、あえて時間をかけて推敲したり「ポジティブな読後感」を演出したりすることは必須ではないのだ。

出会い:私の勇気が呼び寄せた一冊の本

モヤモヤは依然としてあるが、長く同じチームで働くうちに、時々「無礼」に感じてしまう言動をする上司には一切の悪気はなく、むしろ私のことを信頼し評価していることがわかってきた。

心理的安全性が担保されたとき、思い切って過去の違和感を本人に直接伝えてみた。

「あのとき、『ごめん』の一言があったらより気持ちよく仕事できました。同じチームなので、お互いにリスペクトを示しながら働きたいです。」

上司「ごめん!全然意識していなかった。悪気はなかったけど、今度から気を付けるね。」

意外にもすんなり受け入れてくれ、そこから上司の言葉尻が目に見えて柔らかくなった。そして他のチームメンバーにも自然と伝染し、チームの雰囲気が和やかになり、生産性もみるみるあがった。

なんだか不思議な体験だったなと思いながら、何気なくAmazonを見ていると、一冊の本が偶然にもおすすめに表示される。

なんだかタイムリーだ。目先のモヤモヤは解消したけど読んでみたい。すぐさま購入ボタンを押す。

確信:無礼は無礼を生み、礼節は礼節を生む

この本では、クリスティーン・ポラスが現代社会における礼節の重要性を探究している。20年もの間「礼節」を研究してきたことに驚きを隠せない。

職場で誰かに無礼な態度を取られていると感じた人は、たとえば次のような行為に出ることがわかった。

・48パーセントの人が、仕事にかける労力を意図的に減らす。
・47パーセントの人が、仕事にかける時間を意図的に減らす。
・38パーセントの人が、仕事の質を意図的に下げる。

この本を読めば、礼節ある快適な職場を作ることが、そこで働く人にとって、また会社にとって、そして社会全体にとってどれほど重要なことかわかってもらえるはずだ。

Think Civility 「はじめに」より抜粋

なるほど。私がクライアントや上司の言動でモヤモヤしながら働いていたのは、健全な反応だったのだ。

さらに本を読み進めてみると、「礼節のある話の聞き方」に目が止まった。

人の話をよく聞くことは人間関係を築き、維持し、深める上で絶対に必要なことである。
:(中略)
話を聞く気がない人の下にしばらくいれば、精神的に疲れ切って、会社を辞めてしまう可能性も高い。

Think Civility 「礼節がある人が守る3つの原則」より抜粋

サポートセンターでのモヤモヤは、おそらくこれだ。サポートセンターでは、クライアントからの質問がトリガーとなってやりとりが発生する。クライアントは自分がほしい情報にだけ反応するのだ。

それ自体は決して無礼ではないのだが、疑似的に「自分の話を聞いてもらえない」経験をすることで、私は精神的に疲れ切ってしまったのだ。頭の中の霧が晴れる。

そしてこの本は私に「失礼なことを言ってくるひとには『無礼だ。』と言っていい。自分を大切にしてくれるひとを大切にしなさい。」と教えてくれた。

類は友を呼ぶ、の具体例に「無礼は無礼を生み、礼節は礼節を生む」を入れてほしい。


この本に出会ってからは、自分を大切にしてくれるひとがいるコミュニティにだけ属するようになり幸福度があがった。

もし今、学校や会社であなたの優しさや時間を搾取するひとがいたら、もう泣き寝入りしないでほしい。

勇気ある一歩を踏み出せますように。

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