![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110769818/rectangle_large_type_2_90fb56e84a4c8d68036efaac57c622ca.png?width=800)
第二十話 梅との交流
さて、再会をしたのはいいのだけど。
私は梅の事を全然知らないよね。逆もしかりなんだろうけれど。
う~ん。っと一人唸りつつ梅を観察してみる。
私より背はやや低め、150ぐらいであろうか? 体は華奢ではあるが年相応の肉付き。
顔は梅の実のように真ん丸、目は透き通った深紅、髪は顔を強調するかのようなおかっぱで深紅の色、実に小柄で可愛らしい子である。
「……桔梗様? 何か考え事ですか? 小さくて愛らしいお顔が大変な事になっておりますよ…」
「はっ! あれです。梅の事が知りたいなと思ったのですが、どう聞き出すか悩んでおりました。……あっ」
本人を目の前に悩んでいた事をつい口にしてしまってから気づく。
やはり私は人との接し方が下手なようだ。
箱入りしていたのも原因ではあるのだろうけど。
「なるほど。私は今年の皐月で12歳になりました。父と母は妖に襲われ身罷りました。なんでも父上の家系は特別な力を持っていたそうですが、私は何も教えを受ける事もなく育ったのです」
梅は今は亡き尊いものを思い浮かべ、切なさと悔しさを滲ませた複雑な表情をしつつも答えてくれた。
「梅、辛い記憶を思い出させてしまってごめんなさい。これでは友達失格ですね」
私が何気なく問うた事が梅にとって辛く悲しい記憶を思い出させることになるのはわかっていたはずだ。私は本当、無神経で最低だ。
顔を落とし自分の不甲斐なさに嫌気を感じ落ち込んでいると梅が慌てふためく。
「き‥‥桔梗様! 今は集落の方々に面倒も見て頂いていますし、良くしてくれる方々も多いくので、寂しくはないのです! 一番嬉しいのは桔梗様とお友達になれたことです。」
燃えるような深紅の眼は真っすぐ私を見据え、とても眩しくみえた。
『桔梗様は悪くないのです』そう、最後に付け足してくれたことに私は少しだけ心が軽くなったようで救われた気になった。
「今は集落の方々が梅にとって大事な人たちですよね。私も梅とお友達となれたのは嬉しいですし、これからも仲良くしていきたい。ですが、間違ったことや気づきがあった時は遠慮なく申してくださいね!」
私はよく暴走するし梅のような心の広さがあれば――と思い梅に伝える。
「ふふっ。では、これからはお互いに短所を補い話し合い、共に成長していきましょう。あとですね? 桔梗さまのお屋敷に行ってみたいのです!」
私にとって話し合いという難問を提示しつつ、深紅の眼を輝かせつつ自身の要求を私に問うてくる。
「ぐぅっ。梅、私に話し合いとは難問ですね。善処します。あとですね。私のお屋敷に梅が来たいというのであれば、いつでも歓迎ですが。父上と母様に一度確認を致しますよ」
実は梅、無自覚に欲求を伝えるが達者なのかもれない。
さらっと言ってたよね!
「私、お屋敷というものがどの様な建物か見てみたかったのです。それと桔梗様、焦る事はないのですから徐々に打ち解けていきましょう」
まずは落ち着きましょう。と釘を刺されてしまったのである。
あれ? 梅もさっき驚いて足踏み外してたよね?もしかしたら梅とは似たもの同士なのかもしれない。私はそう思ったけど心の中だけで呟く。
「梅、ずっと気になっていたのですが、友達は上下の身分差などない対等な関係ですよね? 私に対し様付けをしていますよね? それでは身分差があるように感じます。ですから、様付けは禁止とします!」
私としても様つけは頬がむずかゆく恥ずかしいのもあるけれど、梅とは対等でありたいので、有無も言わさず梅の退路を断つ。
「……!? 桔梗様、先ほどの約束をお忘れですか!? 話し合いのが余地がありません! あの、あのぉ!!」
梅は私の身体を『ユサユサッ』っと振り。
それだけは勘弁してください。っと顔を梅のように真っ赤に染め、眼に涙を浮かべつつ懇願してくるのである。
「駄目です! っと言いたいですが、余りにも梅が可哀そうに見えたので、この課題は徐々に解消していくとしましょう! 二人の時は無くてもいいのですからね。ふふっ。」
梅の鬼気迫る形相に根負けした私は少しだけ妥協したのである。
「そうでした。梅は狛が見えるのでしたよね。以前の事件のことで謝罪したいとの事なのです。この辺りにいるのですが見えますか?」
私の頭上のこの辺に居るのだけど。っと自身の頭上を人差し指で示す。
「はい! 小さいお狐様ですよね? 狛様というのですね。以前のことは――気になさらないでください。」
あの悲惨な情景を思いだしたのであろう、遠い目で虚空を見つめ一瞬、言葉に詰まった梅。
あれは酷かったしね。私も狛も悪いからな・・・・・と思いつつ。
《梅、先日は悪いことをした。神楽の屋敷への道中の案内は吾がしよう。それが吾にできる精一杯の罪滅ぼしだ》
そう念じ梅へ謝罪の意を示す狛である。
「狛さまのお背中に乗れるのですね! 心より楽しみにお待ちしております。ですから、この話はこれで終わりですよ」
こうして一匹と一人は和みつつ約束をする。
それにしも、梅は獣神も見え対話出来るし、私より才があるんじゃないかな。屋敷へ招くのが楽しみになってきたね。
「では、今日の所はお暇しますね。梅またお会いしましょう!」
「はい! また会える事を楽しみにお待ちしております!」
私達は別れの挨拶を交わし再会を約束するのであった。
宜しければサポートをお願いします。。!創作小説等の費用に使わせて頂き、モチベーションに繋がります。。!