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詩/真昼の夕暮れ

「真昼の夕暮れ」

寝ぼけた足取りで
珈琲を淹れる為の水を汲み、
電気ケトルをセットした

自然光が挿し込む いつもの台所

キッチンに面した、窓ガラスは
夕暮れ色に染まっていた
昼間だというのに

無造作に積まれたフライパンや
顔を伏せたグラスたちが、まるで
路地先の、夕暮れの街並みにも見えた

夕暮れ色だが、そのグラデーションは
登りはじめる 朝陽のようで
出窓カウンターを地にして、すりガラスを
透過していた

目こすりながら、その朝陽のような
夕暮れ色を俯瞰した

すりガラスの向こうの太陽が
象(かたど)っていたのは、横たわった
夕暮れ色の 布団だった

ああ、今日は日曜日か

顔を伏せたお気に入りのマグは
夕暮れの路地先から僕の手元へ

心綺楼にはなれない
透けた香りに揺れる珈琲の湯気

朝陽のように照らす、
夕暮れ色に染まるのを待っているのは
トースターに乗せた食パンと、
日曜日の僕


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