(ネタバレ注意)C・ノーラン「オッペンハイマー」について その1

9月にオーストラリアに旅行に行ってきた。

その際、タイトルにあるクリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」をシドニーの映画館で観てきたので、その感想等を書いておきたい。

日本で上映されるかどうか今もって不明ではあるが、一応、印象に残ったシーンの説明もあるので、ネタバレ注意である。

また、おもいつくままに書くので、中身も整理されておらず、断片的な記載になってしまい、非常に読みづらいと思うので勘弁願いたい。

まず前提条件として、私は英語が全く話せず、聞き取れずという一般的な日本人である。

大学入試のセンター試験では7割ちょっとくらいの得点で、大学に入ってもほぼ英語の勉強はせず、就活直前に形だけ受けたTOEICでは500点程度だった。

もちろんシドニーの映画館は字幕などないので、すべて早口のネイティブ英語のみである。

先に言ってしまえば、誇張なしで、9割以上聞き取れなかった。

この映画の特徴として、派手なアクションシーンや、勧善懲悪のわかりやすいストーリーがあるわけではなく、役者の重厚な演技や史実の再現を楽しむ映画であるので、セリフの内容が全く分からないというのは非常にもったいなく感じた。(情けないことに登場人物の名前などもわからない。)

ストーリーとしては、「原爆の父」といわれる科学者オッペンハイマーの半生を描いたものである。

彼の人生についてはウィキペディアや解説本などを読めば大体わかるので、この映画の楽しみ方は、ノーラン監督がどのようにその半生を再構成して作品として演出しているか、解釈を試みているか、実在した人物を役者たちがどのように演じているか等、鑑賞するものであると思われる。

派手なシーンとしては、やはり、ロスアラモス研究所で原爆の開発を行い、投下実験を成功させるシーンがある。

逆に言えば、そこくらいしか派手なシーンはほぼない。

ネット上の記事にすでに情報が上がっていたが、原爆が日本に投下されるシーンや、投下された後の惨状を描く直接的なシーンはなかった。

間接的にはいくつかあるので紹介する。

投下実験が成功した後、オッペンハイマーが研究所職員らの前で、成功おめでとう的な挨拶をするシーンで、歓喜に沸く研究所職員たちに囲まれながら退場しようとした際、足元に原爆の爆風を受けて炭化したヒトだったものを踏んでしまう幻覚を見る。

また、歓喜に沸く研究所内をオッペンハイマーが見て回っているシーンで、酒を飲みすぎて嘔吐している職員や、抱き合いながら泣き叫ぶ職員らを強調する演出がなされており、おそらく、原爆の後遺症による健康被害や惨状に泣くしかできない生き残った被害者たちを暗喩しているのではないかと思われる。

一応、広島に投下された後の現地状況の写真をオッペンハイマーらが確認して息をのんでいるシーンもあったが、そこでもやはり直接見せることはなかった。

ほかの印象的なシーンとしては、たびたび宇宙っぽい映像が挿入されることがあった。

ほぼ推測になってしまうが、オッペンハイマーが精神的に追い詰められているときに、自分を取り巻くこの世界や自然現象の法則等について考察することで、精神的な安定を保っていたことを表現していたのではないかと思った。

特に映画開始直後のシーンでは、オッペンハイマーがかなり精神的に参っている状況から始まっており、そこから断片的に宇宙っぽい映像が出てきていた。

日本に帰ってきてからオッペンハイマーについて改めて解説本を読んでみたところ、そもそも彼が最初に専攻していたのは化学であったという。

ハーバード大学の化学専攻を最優秀かつ飛び級で卒業した後、ケンブリッジに留学し、そこで物理学等を学んだ。

その後、当時最先端の物理学である量子力学が発展してくると、彼も熱心に関わるようになり、ついには原爆開発に巻き込まれることに…というのが彼の学問的遍歴である。

映画の最初のシーンでは、ほかの学生たちと一緒に化学の実験をしているオッペンハイマーがなにかしら動揺している様子で、フラスコかなにかを割ってしまい、まわりから嘲笑?される場面が描かれている。

講義後、教授の机上にあったリンゴに、なにか毒薬を注射し、放置して去ってしまうなど、精神的に不安定な印象を与えるように演出されていた。

この神経質そうな若者がどうなっていくのかについてはまた続きで。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?