旦那さんの背中を押さない。

旦那さんから転職の相談を受けた。一人でやっていると、ネガティブモードにズブズブしてしまうとの恐れから、転職活動中はそばにいて欲しいと言われた。

人生にとってすごく大事な話の中に入っていいと言われるなんて、私には思ってもみなかったので、素直に驚いた。気遣いの鬼であり、他人に迷惑をかけない、ということを第一に生きてきている旦那さんだから、「他人を頼っている…!」という感動でしみじみ。


私は旦那さんがやりたいと言ったことを基本的に止めない。こういうメリットとデメリットがあるよねという説明をすることはあるけど、だからこっちを選んでほしい、と言うのはあまりない。

旦那さんは、私の「私ならこうする」という意見の真逆を選ぶことが多い。私の意向を汲んだ上で、「自分はこっちがいいな」という自身の意見に従っているから、あまり忖度のない関係が築けていると思う。


私と旦那さんは性格が似ていない。だからこそ、あらゆる場面で「自分ならこっちは取らない」と言う選択が、旦那さんと真逆になることが往々にしてある。転職など、人生の大きな決断に関しても例外ではなさそうだ。

「別の視点がほしい」と思っているから私にも意見を尋ねてくれていると思う。夫婦だろうが親子だろうが、「この人に相談しても何にもならない」と判断したら自分の頭で考える。大きな迷いや悩みが付きまとうことに、私を戦力として加えてくれたのは嬉しい。


と言っても、旦那さんは転職活動のはじめこそ不安そうだったが、日が経つにつれて何もこぼさなくなってきた。良い意味で気負いが無くなっている。転職エージェントにたくさん落ちると思うけど凹まないでね、と言われていたそうだから、100社受けて1社も通らない覚悟でいたら、最初に面接を受けた会社から最初の内定をもらっていた。杞憂が過ぎる。

「今回は落ちた」と面接が終わると毎回言っているが勝率は3割近くくらい。「すごいね」と言ったら「受かりそうなとこ応募してるからね」と言っていた。転職エージェントがマニュアル通りのことしか言わないから自分で戦略を練っているらしい。もう何も言うことはないです。




転職活動で良いとこ見つかるといいな、という思いは嘘ではないのだが、私は旦那さんが転職してもしなくても、なんなら働いていても働いていなくてもどっちでも良い。結婚してからは特にそう思うようになった。

私に収入はないが資格はあるので、働きたいときは働ける、と楽観的に考えている。旦那さんが働かないなら私が働けばいいし、と旦那さんにもよく言っている。たぶん、旦那さんは働いていない自分に耐えられないので、無職の期間が長くなるとはあんまり思わないのだけど、長くなっても問題はない。


そんなスタンスでいたら、旦那さんにも心境の変化があったらしい。転職活動を始めているのに、旦那さんがピリついていたことは一度もない。「俺にもし働く先がなくても、ひろみが働くし、いっかと思ってる。いざとなったら養ってもらうし〜」と冗談めかして言っていた。「絶対にこの転職活動を長引かせたくない、一刻も早く転職せねば」と思っていないことは明らかで、ちょっと驚いた。


旦那さんは石橋を叩いて渡るタイプなので、「失敗しない」という前提や確約が無いとあんまり動けないという話をしていたのだけど、そんな前提も確約もあるものは存在しないので、「失敗するくらいなら挑戦しない」というスタンスになってしまう。

けれど、転職できることが高い期待値を持っていない以上、転職できなくても失敗にはならない。そんな気楽さを備えて旦那さんのポテンシャルが最大限発揮されているらしい。予想外だった。


大事なのは「頑張ってね」と背中を押すことよりも、「負傷して帰ってきても大丈夫だからね」という安心感を持ってもらえるようにすることかぁ〜、へぇ〜という気付き。頑張る人には、頑張れじゃなくて「好きだよ」が効く。ライフハック。

不憫な旦那さんに全額寄付します。