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Audible『誰かが私を殺した/東野圭吾』を聞いた感想と、どうしても文字で読みたくて文字起こしした話

誰かが、私を殺したのだ―――

亡き夫の月命日に必ず墓参りをしている国重ホールディングスの女帝・国重塔子。
霧雨の中、いつも通り墓前で手を合わせていたところ、背後で破裂音が鳴り背中に衝撃が走った。
そして、気が付けば彼女は倒れている自分を見下ろしていた…。
どうやら「私」は後ろから銃撃されてしまったらしい…
誰かによって命を奪われた国重塔子はその意識だけが残り、警視庁捜査一課の刑事・加賀恭一郎にとりついて自分に何があったのかを知ろうとする。
東野圭吾書下ろし、著者初のオーディブル作品。


東野圭吾先生初のオーディブルは、まさかの加賀恭一郎シリーズの書下ろし新作…!!!!
と、いうことで初めて耳で聞く読書というものを体験してみました。
ストーリーのボリュームとしてはそんなに長いものではなく、加賀シリーズでこのタイトルは犯人捜し自分でしろってことか!?とドキドキしたのですが、この話は回答編もありました。
回答編がついてるので、話の流れもそこまで自分で考えこんで推理する感じではなく、流れに沿って楽しんでいればたどり着けるようになってます。
全体的に、『聞く読書』を意識されたわかりやすい展開だったので、がっつりミステリーを期待するとちょっと物足りない感じがありつつ、加賀シリーズがこれからこうやって続くんだ!?という意味では、マジむせび泣くほどうれしい一本でした。

今作、発売前から『加賀の新相棒登場』が前面におされており、加賀ファンなら無視できない…き、気になるぅ…とわくわくした方多数だと思います。
…そうなのよね。過去の加賀を振り返ると、固定の相棒っていなくて、その話ごとに近しい誰かはいるものの、相棒、という感じではあまりない。
一番それっぽかったのは従弟である松宮脩平刑事(赤い指~希望の糸)なんだけど…まぁ、確かに加賀のほうが圧倒的に優秀で、松宮刑事は読者と同じように加賀の導く推理を見守ってる感があったので、相棒というほど相棒でもない…と言えないこともないか…個人的にはまだまだ成長過程感あって大好きなキャラなので、松宮刑事の今後の活躍にも期待してるんですが…。

で、今作。

新相棒…ぶっちゃけ発売前に考えた時に、加賀って個人プレーが多いキャラなんでどういうキャラが来てもしっくりこないというか…
先輩には一目置かれてる感ずっとあるし、
同期とは仲良しだったけど今更同期と組む?
後輩なら松宮刑事続投でいいじゃん…とか、
ガリレオシリーズの内海刑事みたいな女刑事は加賀としっくりこないな…とか、
いっそ警察犬!!??とか
色々妄想してたのですが、いやぁ…ぞのパターンは予想してなかった。
新相棒・新澤さんは、茶髪カーリーヘア―の30代の女刑事…
しかも、なんだろう…めっちゃ調子がいいというか…なんか全体的にひょうひょうと軽い印象で、加賀にも馴れ馴れしく冗談まで言えちゃう今どきの子で、うおーそう来たか!とちょっとびっくり。
いつの間にか50代になり、出世もして現場で捜査するんじゃなくて指示を出す立場になってる加賀にもニヤニヤが止まらないんだが、そんな加賀に全く臆せず、むしろ彼女と結婚しちゃえばと普通に言い出したり、その威光を利用したといってみたり、なかなかにキャラが強い(笑)
加賀の私生活を暴露させる新澤さん、加賀ファンとしてはめっちゃありがたいキャラが現れたwwwと思ってしまいました。
しかも、音声で聞くからか余計に加賀も全然そういう会話するの嫌そうじゃないし、なんなら新澤さんの軽さと加賀の真剣なんだけどどっか浮世離れして捜査を楽しんじゃってる感じがうまくマッチして、なんか捜査が趣味の問題児二人が好き勝手遊んでる感じがして、とても新鮮でした。
いや、ちょっと高橋ボイス加賀、激渋すぎて個人的には加賀のイメージとはちょっと違うかな?とは思いつつ、新澤さんとの多くを突き合せしなくても同じ推理が出来てる感じがすごく良くてちょっとこの感じで加賀シリーズが展開されていく今後がとっても楽しみになりました。
加賀はどうしても個人的な家族の問題に立ち向かってることが多かったので、そこから抜けて捜査だけに集中できる「あなたが誰かを殺した」も初期に戻った感じでめちゃくちゃ好みだったので、今後新澤さんと事件の謎解きに集中する加賀にめちゃくちゃ期待してしまう…。
と、加賀シリーズのこれからの展開に期待が止まらない今作、しっかり音声で楽しんませていただきました!!!

…ですが、ですがなんですよ…

今回『聞く読書』を体験してみて、めちゃくちゃ切実に
『やっぱり僕は自分で文章を読みたい…』と痛感しました…。
オーディブルのメリットとして、

・別のことをしながらストーリーを楽しむことができる

というのは、よくわかったのですが…個人的には、

・キャラのイメージが音声に引きずられる
・再生速度を変えることは可能だが自分のペースで読み進めることはできない
・声によっては細かいニュアンスが聞き取りにくい
・気になったところへ気軽に戻れない

…などなど、デメリットのほうが気になってしまい、
やっぱり、文字で自分で読みたい!!!と、なってしまいました。
「まずは耳から~」って言ってるから、公式がそのうち本で出してくれるのは重々承知しています。
が、待てない。
待てないよ、それまで毎度この音声聞き返して振り返るのはちょっと厳しいよ!!!という、個人的不満により…全文、文字起こししてみました。
もちろん、個人的に楽しむためだけのデーターなのでネット上にあげたりする気は毛頭ないので…あくまで、自分が加賀新作を堪能するためだけのものなので…大目に見てください…
とりあえず最初、聞きながら一文一文打ち込んでたんですが、さすがにちょっと時間がかかりすぎる…。
そこで、音声入力アプリ・UDトークを利用しまして、ざ――――っと全文拾ってみたり…。
世の中進歩してるからこのアプリ、非常に手助けにはなったのですが…あれですね、やっぱり音声入力では誤字・脱字・誤変換・謎の改行などなど、とてもそれだけでは作品としては楽しめない文章の羅列になってしまいますね…いやそれでも全部自分で打ち込むより格段にスピードアップできるので、同じように考えてる方には使うことはお勧めしますが。
んで、アプリの拾った文章を下敷きに…再度耳で聞きながら、細かい文章や誤変換の訂正などをしまして、なんとかそれっぽいデーターを作ることには成功。
改めて小説として『誰かが私を殺した』を振り返ってみました。
そうすると、やっぱりこれは『聞く読書』であることを意識された文章なんだろうな~と感じたり。
まず、全体的な話の流れのほとんどが会話で構成されているのも特徴的なんですが、それを誰が言ったのか、どういう声色で言ったのか、という文脈が極端に少ない。
元々、東野作品って一文一文はそこまで長くなくて、スパ、スパッとテンポよく進んで行く印象なんですが、それにしても今作はさらに一文が短い気がします。
結果そのままだとずーっと会話だったり、句読点がやたらついたり、となんかちょっと脚本のト書きみたいな印象を受けました。
これは、東野圭吾先生が改めて改稿されて本になるんだろうか?と、今後どうなっていくのかがより楽しみに…本になる日を心待ちにしています…。

個人的には東野圭吾先生の小説そのままが全作品最強なので…映画もドラマもオーディブルも悪くないけど、東野圭吾先生の本が欲しい。
東野圭吾先生の文章が読みたい…と、相も変わらず東野圭吾狂信者な自分を再確認させていただきました、マジ愛してるんだよ東野圭吾先生…好き…新作、常に待ってる…。

新たなフェーズに入った加賀シリーズを堪能させていただける一本でしたので加賀が好きならぜひ聞いてほしい。
加賀新澤コンビの魅力の詰まった新作が刊行される日を心待ちにしています。

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