落第生わかくさ

水木しげる先生とウルトラマンと読書が好きです。 主に妖怪と人間の心を題材にした自作小説…

落第生わかくさ

水木しげる先生とウルトラマンと読書が好きです。 主に妖怪と人間の心を題材にした自作小説を書いています。

最近の記事

短編小説「トイレの花子さんの花園」Part2

1  私、長谷川花香(はせがわ かこ)は、夕葉夜南菜(ゆうは やみな)ちゃんにお呼ばれされてやって来た。  そう、彼女のお家に。  私は、友達がいなかったから、学校の休日にお宅に呼ばれて遊ぶなんてことは、恥ずかしながら初めての経験である。  だから、少し緊張している。  どんな格好で来ればいいのかもわからなかったから、制服で来ようと思ったくらいだけど、それは、彼女に強く拒否された。  だから、今日は、買ったはいいものも、ほとんど着ていなかった洋服を着て来ている。  それ故に

    • 短編小説「トイレの花子さんの花園」

      1  私、長谷川花香(はせがわ かこ)には、秘密がある。  否、秘密といえる程、高尚なものではない。  それは、趣味というか。否、これも正確には違って、止めたくても止められないもの。  そう、私はこんなこと早く止めたいのだ。  こんな恥ずかしいことをいつまでもやっていたくない。  時折思い出しては、自分で自分が嫌になる。情けなくなる。  なんで私だけこんな罪を背負わされているんだろうって、無責任にも神様を恨む。  否、少なからず誰だって人には言えない秘密が一つや二つあるのだ

      • SS「人間バーチャル」

         私は動画投稿を生業として生活している。もちろんSNSでも発信していて、いわゆるインフルエンサーというものである。  そんな私は、毎朝起きて、撮影や動画編集に取り掛かる前に一杯のコーヒーを飲みながら動画についたコメントやSNSに来ているメッセージなどを確認する。  これが私の朝のルーティーンというわけである。  始めたての頃はそんなに来ていなかったコメントやメッセージも、今ではたくさん来るようになった。  ありがたいことに、全部は見返せない量が来るようになった。  でもなるべ

        • SS「目目連の視線」

           僕は生まれつき目が悪かった。  悪かったと言っても、盲目だったわけではない。  視力が悪かった。  近視であり、おまけに乱視だった。  両親も目が悪かった。  目が悪いのは遺伝だと言うが、本当だろうか。  まあ現代社会において、全くの裸眼という人の方が珍しいだろう。  僕が眼鏡を掛けだしたのは、小学校の5年生くらいからだった。  幼少期から確かに目は悪かったのだが、眼鏡は特に掛けてはいなかった。  だから遠くを見る時には、目を細める癖がついてしまっていた。  小学校でも眼鏡

        短編小説「トイレの花子さんの花園」Part2

          SS 「天使コンプレックス」

           陽光が左肩を照らし、横の窓から心地のいい風が教室全体を洗うようにして去っていく。  そんな気持ちのいい風が吹くたびに、生徒達はまどろむ。  午後の暖かい風は、淀んだ空気を洗ってくれるが顔は洗ってくれない。  生徒はもちろん、教壇に立っている先生までもその風には抗えないようだ。  否、身を任せるように風を全身で受容しているようにも見える。  誰もこの風に抗おうとはしない。  こんな気持ちのいい風に逆らうことは、生命に対する冒涜のような罪悪感を覚える。  皆このまま心地のいい快

          SS 「天使コンプレックス」

          短編小説「怪獣楽園」

          1 私は毎朝起きると同じことを考える。いや、朝といわず、昼も夜も考えている。特に平日なんかは四六時中考えていると言っていい。  今日は一週間の内で、最も憂鬱な月曜日である。  夜中にタイマーでエアコンが切れていたせいか、蒸し暑く、その寝苦しさで目を覚ました。  ーー寝起きはもちろん最悪である。  今週もまた陰鬱な毎日が始まると思い、大きな溜め息を吐いて、気怠い身体を起こした。  カーテンを開け、雨が降っているのを窓越しで確認すると、また大きな溜め息が漏れた。  自室から出て、

          短編小説「怪獣楽園」

          「着せ恋」が凄かったから語りたい!/コスプレという題材を通して「好き」を大切さに生きる道と、日常の美しさに気づかせてくれる作品

          言葉の呪いをかけてくるのが他人なら、その呪いを解いてくれるのも他人の言葉 幼少期に言われたある一言がトラウマになっている高校1年の「五条新菜(わかな)」。そのトラウマゆえに上手く自分を表現できず、友達もおらず、自分の心の内に引きこもってしまっている。そして、そんな彼がある女子と出会うことで物語が始まっていく。  その人物とは、同じクラスの「喜多川海夢(まりん)」。しかも典型的なギャル。そんな正反対の二人が、一緒に「好き」を追い求めていく作品。  冒頭で書いた幼少期ごじょーく

          「着せ恋」が凄かったから語りたい!/コスプレという題材を通して「好き」を大切さに生きる道と、日常の美しさに気づかせてくれる作品

          他人の体験を享受するだけの人生

          YouTubeやTikTokなどの動画投稿サイトや、Twitterや InstagramなどのSNSで他人の人生が簡単に覗き見れる時代。 コンビニ飯や質素なご飯のお供に豪華な食事や、大食いをするYouTuberの動画を見る日々。 そして、他人が食べているのを見て自分も食べたつもり(欲求を満たしたつもり)。 または、YouTuberが何か自分が欲しいものを買って、レビューしている動画を見ては自分も買ったつもり。 ゲーム実況者がゲームをしているのを見ては自分もプレイしたつもり

          他人の体験を享受するだけの人生