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『生殖の海』 2023年版 第五章「目を開けて」

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『生殖の海』 2023年版 第五章「目を開けて」

橘のにほふあたりのうたゝねは夢もむかしのそでの香ぞする

俊成卿女


アームカバーくはへ靴紐きと締めつガテン系女子の血を燃やすため

左腰にラチェットレンチラチェを仕込みて立つ女子はオクタノルムを組みバラすのみ

だゞつ広いホールに壁を建てゝゆくこの工程が好きだなにより

天板を跨ぐそれとは反対の脚より駆け上がれ七尺脚立ナヽシャク

計三社わたり歩いて身を寄せたずつと愛せる場所をもとめて

あのころの上司と違ふちやんと見るつもりで声を掛けた芦沢

下端したば組むことを地組ぢぐみと呼ぶこともこゝに知りけりよもう三年目

どつか他社でやつてゐたのと聞かるればえゝあなたよりずつと前から

遅くとも組めば組まるゝ部材なりかへりみるまでをはりなどない

あたしにもわかる企業の金が動くあたしの建てたブースのなかで

身に相応ふさふそを求むればこれも又好きだが合はぬテンションロック

口径T三十のトルクスビットソケットビットに合ふはずのテンションロック探しつゞけて

いつか又こゝを去るときさいごまでひとりだつたと思ふのだらう

     ✽

五月雨にむかしの袖の香を強み目を開けて見る夢振り払ふ

パシフィコ横浜パシフィコ東京ビッグサイトビッグ幕張メッセメッセも吹き交はす海風しげし夢はちぎれて

ショートヘアにこだはつてゐたあの比は我れのをんなを舐めきつてゐた

アイシャドウかへてもれも気づかない職場よ深くふかくヘルメットメット

おぼつかな子宮を抱へ生きてゐるさうどこまでもどこまでも、海

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