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『生殖の海』 2021年版 第五章「目を開けて」

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「生殖の海」 2021年版 第五章「目を開けて」

橘のにほふあたりのうたゝねは夢もむかしのそでの香ぞする

俊成卿女


XEBECジーベック安全靴アングツの紐きゆつと締むガテン系女子の血よ燃え上がれ

恋はいさラチェット捌く系女子はオクタノルムを組みバラすのみ

だゞつ広いホールにブース建てゝゆくこの工程がなによりも好き

天板を跨ぐそれとは反対の脚より五尺脚立ゴシャク駆け上がるなり

計三社わたり歩いて身を寄せたずつと愛せる場所をもとめて

あのころの上司と違ふ芦沢はちやんと見る気で我れを拾つた

下端したば組むことを地組ぢぐみと呼ぶこともこの会社にて知る三年目

どつか他社でやつてゐたのと聞かるればえゝあなたよりずつと前から

客対応キャクタイにつれづれなればおのづから考へごとが七五しちごにぞなる

装飾アクセサリ標示サイン、突き出し 受け取るもオクタノルムを組みバラしたく

あたしにもわかる企業の金が動くあたしの建てたブースのなかで

※ 元への指導任されうべなひつ組みバラしたき血をなだめつゝ
※システム部材を組む「組み手」の補助たるべき役割

社交的だとか人には見られあゝなんて便利な笑顔てふもの

身に相応ふさふそを求むればこゝも又好きだが合はぬテンションロック

T三十サイズのトルクスビットソケットビットに合ふはずのテンションロック探しつゞける

いつか又こゝを去るときさいごまでひとりだつたと思ふのだらう

     ✽

五月雨にむかしの袖の香を強み目を開けて見る夢振り払ふ

パシフィコもビッグ、メッセも吹き交はす海風しげし夢はちぎれる

ショートヘアにこだはつてゐたあの比は我れのをんなを舐めきつてゐた

アイシャドウかへてもれも気づかない職場に深くメットをかづく

おぼつかな子宮を抱へ生きてゐるさうどこまでもどこまでも、海

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