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『生殖の海』 2022年版 第一章「いまも言ふ」

割引あり


『生殖の海』 2022版 第一章「いまも言ふ」

しづかなる暁ごとに見わたせばまだ深き夜の夢ぞ悲しき

式子内親王


Apuweiser-richeアプワイザーリッシェのかゝるクローゼットにカーゴパンツをつかむ朝あけ

弁当に着替へも詰めつ紅引きつビッグサイトにいざ向かふべし

ローソンの脇の柱に身をあづけいつものメンツかほと交はす「おはやう」

たはぶれにけふも寄り来る植竹は黙ればめつちやかつこいゝのに

彼女などをらぬ沼野ゝ待受まちうけの「かのぢよ」のれる壁ぞまばゆき

「わかんないもんスよ、見た目くまモンでも」と言ふ田越はガチのイケメン

腰袋カチッと締むるこの音にをんなはガテン系女子となる

髪を結ひヘルメットメットに顔を隠すかぎり自由ではあるこのからだより

二四〇〇ミリメートルニイヨンのポールの二、三本ぐらゐ担ぐよこゝに生けるかぎりは

かひな、又肩に支ふる重みよし任されひとり下端したば組むとき

なにかこの※ クタノルムを組める我がゝらだの熱く胸はたかなる
※展示会施工に仮設ブースを組むシステム部材の一種にて、木工ブースにかはり広く用ゐらる

基礎工事キソが好き特別装飾トクサウに又血ぞ燃ゆるオクタノルムになほ惹かれゆく

にをればなべてなるめる男らの二割増しなる七尺脚立ナヽシャクのうへ

されど我が恋ふるこゝろは男より雄々しきひとにうちなびきつゝ

腰袋はづして髪もほどくときONE OF THEMと戻るさびしさ

おほかたは鞄に収まらぬメットきれいにりぬよき日なりけり

     ✽

宿に風は夜露も霜ゝ紛ふめり冴えざえ更けてゆく冬のそら

音もなくさ庭に雪の降り積めば雲を割りてぞ月出でにける

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