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雑感&感想:『炎上するバカさせるバカ: 負のネット言論史』中川淳一郎 (著)

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。

 今回は、ネット言論では有名な中川淳一郎さんの著書『炎上するバカさせるバカ: 負のネット言論史』についてのおすとあんな炎上~こんな炎上~と、そういえば一時期テレビもそうだしインターネットのニュース配信サイトでも湧き上がったネタだったなぁと思い返すことができる物ばかりだなというのが第一の印象です。

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 上記画像は、8~9ページに書いてある本書で登場する主な炎上騒動の一覧ですが、多くは一過性のように燃えてそしてしれっと下火になり、デジタルタトゥーのように残るのがインターネットでありSNSなんだなというのを本書から学ぶことが出来ます。

2.インターネット人事部

 本書内の考察で言い得て妙だなぁと思ったのが、「インターネット人事部」です。ネットが「社会」と化した昨今、各種メディアの情報収集先がネットとなりネット上の炎上や諍いがニュースとなる中で、今時のネット炎上の特徴として著者は次の通りに指摘しています。

・テレビが火をつける

・ネットニュースが関連したネタを出したりネットの声を紹介して追随する

・それを読んだネットの人々がその話題を大規模に燃やす

・この燃えたことや、「批判殺到」などのネタを再びテレビとニュースが報じ、完全に燃え尽きさせる

・この話題に関連した話題が再び取り上げられると「そう言えばあんなこともあった・・・」と再びネットがその関連話題について燃やす

 この流れが最も分かりやすかったのが、東京オリンピックで当初開会式の楽曲担当をしていた小山田圭吾氏の学生時代に行っていた障害者いじめを語った雑誌をきっかけとしたネット炎上で、開会式9日前に取りざたされその2日後にTwitterで謝罪をし5日後に辞任したという流れです。

 また、猪瀬直樹元都知事が辞職するきっかけとなった医療法人徳洲会から5000万円受け取ったという件について、都議会で5000万円の厚さに見立てたブロックを実際にしまおうとしてチャックが締まらず、本当は5000万円以上貰っていたのでは?という攻勢を議員が行いそれがネットにも飛び火して、結局は1年で辞職するという流れになりました。

3.宗教的な熱狂 

 このように人をフルボッコにするネットは時として宗教的な感じで世論を巻き込むこともあります。それが、新型コロナウイルスの専門家会議の座長を勤める尾身茂氏です。本書で初めて知ったのですが、 #ねえねえ尾身さん というハッシュタグがTwitter上で一時期流行っていたという事で凄く驚きました。

 当初尾身氏の発言に権威性・神格性のようなものが帯びた背景として、次のようなツイートがあります。

 このように、尾身氏が過去に西太平洋地域でポリオの根絶に携わった人という実績がネット上で一人歩きしている一方、理学博士の井田真人氏はこのような反論ツイートをしています。

 しかし、菅総理(当時)と共に記者会見に並ぶ場でおどおどと喋る菅総理と対照的にびしっと喋る尾身氏が際立った結果として、尾身氏のキャラがネットによって宗教の如くフォーカスが当たる一方、コロナに関する発言の多くは気持ちの問題を占めていたり、自身が理事長を務める地域医療機能推進機構傘下の公的病院で30~50%病床が使われていないにも関わらず補助金が給付されていたという事実があっても、宗教の如く尾身氏を崇拝するファンの熱量がかき消す格好となりました。

4.ネットが生み出した悲劇

 また、ネット言論史の中には悲劇を生み出してしまったケースもあります。その代表例と言っても過言ではないのが、恋愛リアリティーショー「テラスハウス」に出演していたプロレスラー,木村花さんの自殺です。

 ショーと銘打っている以上、自殺の引き金となったのでは?と言われている木村さんが激高する場面も演技であることは推測できます。しかし、一部のテラスハウスのファンはこれをマジだと思い込んで執拗にSNSで木村さんに誹謗中傷を浴びせた結果として木村さんは自殺を選択してしまいました。

 一昔前、「有名税」という言葉で有名になることは批判を浴びる事を許容することとセットで捉えられ、この構図は芸能人がサンドバッグ状態になることを示しています。有名人をターゲットにして誹謗中傷をする虚しい人生を送っている人も少なからずいますが、時として自殺をはじめとした悲しい結末を招いてしまう可能性をはらんでいるのもネット時代なんだなと思いました。

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