見出し画像

【No.5 プロテニス選手の腹直筋の大きさは左右非対称?】

<背景・目的>
テニスは、サーブなどで非対称的な動作が要求される競技である。しかし、テニス選手の腹直筋の大きさに左右差があるかは不明である。この研究では、プロテニス選手と一般人を対象として、腹直筋の筋体積およびその左右差の程度について検討した。

<方法>
・対象者
男子プロテニス選手8名:年齢21.9±3.8歳,身長182.5±3.9 cm, 体重75.4±6.9 kg, 競技歴 約10年
一般男性6名:年齢27.5±8.1歳,身長177.7±2.6 cm, 体重75.5±11.1 kg

・測定および分析 
MRI装置を用いて、体幹から骨盤の横断像を連続して撮影。腹直筋左右それぞれにおいて、総筋体積、上部(S1)から下部(S8)にかけて8つの部位の筋体積を測定。

<結果>
[グループ内での比較]
テニス選手の総筋体積は利き手側よりも非利き手側で有意に大きかった(35%)。
✓一方、一般人の総筋体積は利き手側・非利き手側で同等であった。
✓テニス選手と一般人のそれぞれにおいて、左右差の程度(利き手側と非利き手側の筋体積の比)と筋長(上部から下部にかけての測定部位)には有意な正の相関関係があった(下部ほど左右差の程度が大きい)。

[グループ間での比較]
テニス選手の腹直筋の総筋体積は、利き手側(29%)・非利き手側(74%)のいずれも一般人と比較して有意に大きかった
腹直筋の総筋体積における左右差の程度は、一般人よりもテニス選手で有意に大きかった

画像1

図1. テニス選手と一般人における腹直筋の筋体積

<考察>
テニスのサーブにおいて、体幹は屈曲および非利き手側への捻転が要求される。この際、特に非利き手側の腹直筋は腰椎の伸展に伴い大きく伸張し、その後力強く短縮する。このような非利き手側に加わる伸張-短縮性の負荷が腹直筋の左右非対称な筋肥大を誘発したのではないかと著者は推察している。

<結論>
テニス選手の腹直筋は利き手側よりも非利き手側で大きく、その非対称性は上部よりも下部で著しい。

<文献情報>
Sanchis-Moysi et al. Large Asymmetric Hypertrophy of Rectus Abdominis Muscle in Professional Tennis Players. PLOS ONE 2010
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0015858
#テニス # 腹直筋 #左右差 #非利き手側 #体幹の捻転