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No.2 プロサッカー選手はユース選手と比べて下肢・体幹のどの筋が大きいのか?

<背景・目的>
サッカーはボールを蹴るなど非対称性の動きが求められる競技である.しかし,これまでの研究ではサッカー選手を対象に下肢および体幹筋群のサイズが利き脚側(ボールを蹴る脚)と非利き脚側で異なるかについては明らかにされていない.また,各筋群のサイズが競技レベルで異なるかについても不明である.この研究では,サッカーのプロおよびユース選手を対象に,下肢および体幹筋群のサイズが利き脚-非利き脚間,競技レベル間で異なるかどうかを検討した.

<方法> 
・対象者
男性サッカー選手
プロ17名:年齢23.7±3.1歳,身長178±3 cm, 体重72.0±4.1 kg
ユース18名:年齢16.8±0.6歳,身長172±5 cm, 体重66.4±4.9 kg

・測定および分析 
MRI装置を用いて,大腿長の30%,50%,70%,腰椎のL2-L3,L3-L4,L4-L5の中間から横断像を撮影した.大腿四頭筋(大腿直筋・外側広筋・内側広筋・中間広筋),ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋),内転筋群(大内転筋・長内転筋・短内転筋・小内転筋),腹直筋腹斜筋群(内腹斜筋・外腹斜筋),大腰筋脊柱起立筋の断面積を両側から計測した.体格の影響を考慮して比較を行うために,各筋群の断面積は除脂肪体重の2/3乗に対する割合で示されている.
※本文では上のように記載されていますが,Figure 1.の撮影画像から,腹斜筋群(Ob)は腹横筋を,脊柱起立筋(ES)は多裂筋を含んでいる可能性があります.

<結果>
✓プロおよびユースのいずれも,すべての対象筋群の筋サイズ(除脂肪体重2/3当たりの断面積)に利き脚-非利き脚間の有意な差は認められなかった
プロの大腰筋のサイズはユースよりも有意に大きかった
✓ユースの脊柱起立筋のサイズはプロよりも有意に大きかった
✓大腿四頭筋,ハムストリングス,内転筋群,腹直筋,腹斜筋群のサイズに競技レベル間の有意な差はなかった

<考察> 
大腰筋は,股関節を屈曲させる(ももを引き上げる)働きがあり,サッカーのキック,スプリント,切り替えし動作,ピボット等の動きの遂行に大きく貢献している.そのため,大腰筋を優位に発達させることによって,キックやスプリントなどで高いパフォーマンスが期待される,と著者は述べている.本研究の結果から,サッカーのパフォーマンス向上を目指して,股関節屈曲を伴うエクササイズをトレーニングプロトコルに取り入れることを著者は推奨している.

<結論>
サッカー選手において,下肢と体幹筋群の筋サイズは利き脚と非利き脚側で同等であり,競技レベルが高い選手では大腰筋が特に大きい

<文献情報> 
Kubo et al. Profiles of trunk and thigh muscularity in youth and professional soccer players. J Strength Cond Res. 2010
https://journals.lww.com/nsca-jscr/Fulltext/2010/06000/Profiles_of_Trunk_and_Thigh_Muscularity_in_Youth.6.aspx