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イリュージョン

今日は残業で遅くに帰宅。
ペットのうさぎがケージから出してくれとどんなに懇願しているだろうと
家路を急いだ。

リビングのドアを勇んで開けたら、てんてんがドアの前でお出迎え。
確かにケージの扉には鍵をかけて出てったはず。

こないだ夜中に上の扉から飛び出してきたことがあり、上の扉にも鍵をかけてた。

なのに、なぜ君は脱出してるの?
鍵を確かめると、確かにきつくしまっている。

君は引田天功か? もはや引田てんてんか?
ケージの網の間にはどうやっても丸いフォルムの君が通り抜けれそうな幅は……ない。
いくら子供だからといっても、650グラムの肉の塊が抜けられるはずない。

もしかしたら君にはすごい超能力でも備わっているんだろうか。
ケージの外に飛び出したい一心が、念力となり、君のそのまるっこいボディをリビングに瞬間移動させたんだろうか。

鍵かかったままのケージには戻れるはずもなく、どのくらいの時間君は私の部屋を独り占めしたんだろう。。。

エサもトイレもケージの中だというのに。
おかげで私のリビングには可愛いくて黒いコロコロが一面に広がっていたではないか。

今日の君はいくぶん満足気な表情に見える。よく部屋にお漏らししなかったね。えらいえらい。

そして君は残業でえらく疲れて横たわる私の顔を、まるで玄関マットのように踏み渡り、大好きなベッド、タンス、窓際へと得意のステップターンを魅せるのだろう。

お、今日は機嫌がかなりいいな。シングルフリップくらいにはなってるんじゃないか?

いっぱい食べて、いっぱい甘え、私のこんな狭い部屋でもそれは楽しげに遊ぶ君、これからできるだけ長い時間一緒に過ごせることを心から願うよ。



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