学者にはなれず、会社員としても続かない

目指したものにはなれないけど、友人や運のおかげでうまくいっている。好調がいつまで続くかわからないので、反省できるうちにしておく。

数学者を目指していた頃

20代の後半くらいまでは、数学者になることを夢見ていた。いつから目指し始めていたのかは確かではない。中学や高校の頃から理数系の科目は比較的得意で、とは言っても都会の進学校で太刀打ちできるようなレベルではなさそうだけども、そのおかげで理学部数学科に入ることができた。

理学部に入るような多くの学生と同じように、大学に入ったあたりでは卒業後の進路というものを全く構想をしていなかった。なんとなくで教員免許を取ったり、保険数学の単位を取ったりしていた。そして、多くの学生と同じように卒業ゼミを選び、進路についての少しの葛藤を経て、就職活動や分野変更をせずに大学院に進んだ。

修士になり、早い段階で博士課程に進むことを決意していたと思う。私には先生たちや先輩たちの研究に向かう姿が素晴らしく映っていたし、研究活動や教育活動やそれに付随するあれこれに従事するだけで学問の自由と生活が保障されることが魅力的に見えていたからだ。その頃は、まじめに頑張っていれば、この人たちの仲間に入れるのだろうなと考えていた。

学部生から修士に入ったあたりまでは勉強はそれなりにやっていたと思う。大袈裟に言うと、数学者の共通認識みたいなものが自分の思考に入っていくような感覚が楽しかった。しかしそのうち、大学院なので修士論文を書くという目標から逆算するように、日々の中心が勉強から研究に軸が移っていく。鑑賞者から研究者に私は変わっていかなければならない。その戸惑いを、必要な時に解消できていなかった。慣性と先生の援助で、なんとか審査されるような出来の修士論文を書いて、博士課程に進んだ。

博士課程では研究者のあるべき姿と自分のギャップにそれなりに苦しんだり、開き直ったり偏屈になったりした。正しい努力ができていなかったから、成果は少なかった。もちろん学振だって通らないし、よくなる見込みもなかった。この期間、研究を熱心にやれていたのか、自分でも大いに疑問を感じる。自分と周囲をひたすらに誤魔化すような日々に精神は爛れていた。


就職活動による人生再建

ああ、どうやら大学の先生を目指している場合ではない。自分の人生を助けなくては!

エゴイズムが残っていることが幸いした。生きていくために、親に一年分追加で学費を出してもらい、研究室を半年休むことにし、RA業務を放り投げ、いくつかのイベントをキャンセルした。大学のキャリア支援など、使える手を片っ端から使って就職活動をした。これが上手くいった。いい感じの会社に、いい感じの待遇で入ることができた。自信が回復した。回復しすぎたかもしれない。

葛藤、転職、退職

こうして半ば放り出されるような形で修了した。成果はいまいちだけど、別にポストに困ってるわけじゃないだろうしね。教授会サイドはそんな逡巡をしていたかもしれないが窺い知れない。此方としてはもう少しやれたんじゃないかという悔しさもありつつも、晴れて会社員になった。いい感じに研修を受けて、いい感じの配属をされた。半人前ながらも、俗に言うソフトウェアエンジニアを名乗れるようになった。

葛藤。ソフトウェアエンジニアとしての経験が劣後しているにも関わらず、学歴が上という理由でいい感じの待遇を得てしまっている。葛藤。ここまで上手くやれた私なら、さらにもっと評価されるんじゃないかという思い上がり。後者に掛けて転職活動をしてみたら、その仮説は正しかった。思い上がったまま、額面を増やすために転職をした。

転職先では通用しなかった。できると思いますよぉ、と呑気に構えていたことができなかった。無能と思われるのが怖い、いやもう思われてるか。インターンの方が優秀だし私要らなくない?言い訳を考えることに脳のリソースが使われ、さらに生産性が下がるスパイラルに陥った。一年ちょっとで退職をした。

ドロップアウトとしてのフリーランス開業

友人には恵まれていた。ツイッターや経歴を面白がってくれていたのかもしれない。信頼して仕事を頼んでくれたり、増やしたりしてくれた。自分もそうやって人を信じて何かを任せられるようになりたいと思った。

そうして、会社員からデータエンジニア、データサイエンティストのフリーランスに転生することに成功した(寧ろ、これができる可能性に掛けて、提案してもらった休職ではなく退職をさせてもらった。ひどすぎる。さすがに自己都合)。

総括

  • 正しい努力を怠ると、なろうと思ったものにはなれない。それでも、幸か不幸か人生は続いていく。

  • 多くの元所属先を足蹴にしてしまったのに、そこで得た経験で、どうにか世間に必要とされて、生かされている。悪口は言えないね。。せめてこれ以上迷惑をかけないようにしていきたい。

  • 友人に、こいつは使える奴だと思われるとめっちゃ得をする。いい奴でいよう。使える奴になろう。

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