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笑いの世界に巻き込まれる(日記)

昨日、某セカンドの観覧に行ってきた。運良く昼も夜も当選したので合計16組の漫才を見ることが出来た。

1vs1のタイマン形式のバトルなので、どのコンビも相手を必ずぶっ倒すと言う意気込みで笑わせて来た。
あるコンビは対戦相手用に下ろした新ネタで、あるコンビは1年がかりで仕上げて来たネタで、あるコンビは自分達が1番自信を持っているいつもの寄席ネタで。

同世代コンビ同士の戦いでは「仲が良いからやりにくい」と言いながらも、勝敗が決まれば更に絆が深くなっていたようだった。
先輩後輩対決では世代を超えてお互いに尊敬し認め合っている姿が印象的だった。後輩の勝利を讃える先輩達の言葉も、先輩への敬意を失わず静かに喜ぶ後輩達の姿も格好良い。
東京ダイナマイトのハチミツ二郎さんがザ・パンチに贈った言葉には泣きそうになった。
ショウショウと囲碁将棋のハグには胸が熱くなるものがあった。

あの日、誰よりも楽しそうに生き生きと自由に漫才をしていたザ・ぼんちは「若手と同じ舞台に立つと元気をもらえる」「この大会に出場して刺激をもらえた」と言っていた。
いつまでもエネルギッシュな漫才をしている大先輩を見て勇気づけられた人達もいると思う。
私はこんなお爺ちゃん達がこんなに破天荒な漫才をするのかと驚いたが、ネタ時間が6分ジャストだったと知ってプロフェッショナルな仕事ぶりに更に驚いた。

ザ・ぼんちと対照的な雰囲気のショウショウは、聞き入ってしまうほど掛け合いの耳心地が良い。歌のハモリも綺麗でモノマネも上手く、話芸の域。もちろん漫才もおもしろくて何度も笑わせてもらった。芸歴の成せる技だと思う。

ザ・ぼんちさんはコンビ歴52年、ショウショウさんは32年。これからも舞台に立って笑わせてほしいと思う。


そんなドラマもいくつかあったが、やはりメインは「笑い」だ。

つかみで文字通り心を掴まれ、2人の世界に巻き込まれ、舞台と客席が渾然一体となった中で起こる笑いの気持ち良さといったら他に無い。

中には何を言っているのか聞こえなくなるほどの爆笑を引き起こしていたコンビもいた。その人の世界に取り込まれたような感覚に陥った。
そのネタが、今回のために約1ヶ月で作られたものだと言うから驚きである。(私は先週同じネタを見ているのに、その時以上に笑った。)

つかみ無しで観客を引き込んだコンビもいた。いきなり漫才が始まり大丈夫かと思ったが、そのあとは一つ一つの言葉が強く、繰り返される展開のオチに期待しながら見ていた。オチが来た瞬間の気持ち良さと言ったら無く、笑い疲れるほど笑わされた。

6分間に16年以上の経験や現在の気持ちが投影されているようで、その全てが「目の前の客を笑わせる」ことに向けられている。

だからハマると爆笑の渦に巻き込まれる。

客席と舞台の間にある境界が取り払われ、あの瞬間だけ漫才の世界の一部になれる。

スタッフさん達も漫才師達が全力を出せるようにあらゆる配慮をしてくれていたように思う。
観客が笑いやすいように出来るだけ緊張をほぐし、でも審査をするをする上での緊張感は持たせなければならない。細かいことは書けないが、大勢の人達の協力のもとに成り立った6分間だった。


明らかに差がついてしまっていたところもあれば、ここでどちらかが落ちてしまうのが本当に勿体無いと思うところもあった。

次のステージでも「この2つのどちらかがここまでなのか…」と思う2組が対決するが、正直ゾクゾクする。どちらも今回爆笑させてくれたコンビでネタの雰囲気は対照的。どれだけ笑わせてくれるのか今から楽しみでならない。

この大会のおかげで若手のライブにベテラン達が出演する機会が増えていることも客としては嬉しい。
若手達のネタが続いた後で見るベテランは渋くてとても格好良い。


昨日の余韻と疲労に浸りながらダラダラと書いてしまった。滅多に無い体験なのでどこかに書いておきたかった。

スタジオに入った瞬間、目に飛び込んだのは黒と青と銀色を基調としたセットだった。蜘蛛の巣のように天井高くまで放射状に広がる装飾がキラキラと光っていて、それを眺めながら、自分が応援していた人達もこの舞台に立ってほしかったなぁ…と少しだけ悔しく思った。

昨日勝ち上がった人達はそれぞれの世界に観客を巻き込んで爆笑させてくれた。
だが選考会で落ちたそのコンビにも、同じくらいかそれ以上に笑わせてもらったことが過去にある。

だから勝つ可能性はゼロでは無い。ノックアウトステージを勝ち進んだ人たちには無くて、その人達だけが持つ強みや笑いの魅力もある。本人達がどれだけ優勝したいと思っているのかがいまいち分からないので何とも言えないが、来年は(出場するのであれば)あの舞台に立ってほしい。


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