カルディの功罪とフィンランド饅頭

海外旅行のお土産選びが年々難しくなっている。
はじめて海外のお土産をもらったのは30年前だ。伯父さんの新婚旅行のハワイ土産で、缶に入ったうずまき状のチューインガムだった。缶の蓋には赤や黄色でポップな英字ロゴがデザインされていて、その中にはピンク色のガムがホースみたいにぐるぐると長く丸められていた。見たこともない派手なお菓子にテンションが上がったのを覚えている。

この夏、はじめてフィンランド、エストニア(カタール経由)に行った。はじめての北欧、はじめてのバルト三国(はじめて中東)。珍しくて日本にいる友達が喜びそうなお菓子があるだろうと期待して行ったのだけど、いざお土産屋さんやスーパーマーケットに行ってみたらどの売り場も見覚えのあるパッケージが溢れていた。

「これ、カルディで売ってるね。」
「成城石井でも見たことあるよ。」

一緒に旅行に行った友人と言葉少なにそう呟いた。
結局わたしたちはその国っぽいパッケージで、みんなに好まれそうな味で、日持ちのする個包装のお菓子をぐるぐる探し回って、エストニアの国旗をモチーフにした包み紙のチョコレートを大量に購入した。本当は夏にチョコレートのお土産はご法度なのだけど、カルディにも売っているクッキーを買っていくよりもよほど良い。友人に会う都度、きっと溶けているから冷蔵庫で冷やして固めてから食べてね、と申し添えながらお土産を渡す羽目になった。

カルディは大好きだ。カルディが出来たことで日本でも手軽に海外の食べ物を楽しむことができるようになった。その反面で旅行の楽しみが半減してしまっていた。まさかこんな功罪があったなんて。

わたしたちはお土産の概念を変える必要があるのかもしれない。お土産2.0だ。それともお土産0.0と銘打ってお土産文化を無くしてしまった方がいいのだろうか。いや、それは寂しい。カルディが無くなるのも寂しい。いっそのこと、各国のみなさんで一斉にまんじゅうを作りませんか。焼きゴテだけを取り替えて「フィンランド饅頭」「エストニア饅頭」を作ってください。お土産は定番でいいんです。素朴で飽きない味、焼き印の文字を見てその土地に想いを馳せられる素敵なお菓子。どうでしょうか?


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