見出し画像

エッセイ 魔女

 網戸に小さな小さな、カマキリがいた。

 カマキリといえば、まず連想するのが、メスのカマキリが、交尾中にパートナーを殺して食べるという話。

 カラダの一部でもくわい(怖い)けど、全部である。なんと頭からムシャムシャと。

 食われるオスからしたら、たまったもんじゃない。

 どうやら、この"至上の愛"ゆえに捧げられるオスの自己犠牲は、生殖や子供の成長におおいに役立つのだとか……。

 そういえば昔、「かまきり夫人の告白」という、いかがわしい系の映画があった。 
  私がまだ中学生の頃、尼崎の映画館の看板に描いてあったのだ。

 フランス映画「エマニエル夫人」に刺激を受けてつくられた、三番煎じに違いない。

 元祖セクシー熟女だった 五月みどりの、ポルノ初主演映画で話題になった。

 大人になってから観たら、内容はまさに「魔性の女」の色香によって、吸い寄せられるように関係してしまう複数の男が、もれなく破滅していくという、実にわかりやすいストーリー、大人の童話だった。

 レーサー、隣のオッさん、産婦人科医、会社の重役、さらに殺し屋までが……。

 例外は、恋人(男)にふられたゲイの美少年に、女性の素晴らしさを教え、ゲイから卒業させたこと。

 今ならいろいろと突っ込みどころが満載だが、いずれにせよ「魔性の女」には要注意である。

「魔性の女」を略せば「魔女」になる。

 サリーちゃん(TVアニメ)や、メグちゃん(TVアニメ)や、キキ(魔女の宅急便)のような魔女は、まず私のまわりに実在しない。
 
 由美かおるは、歳をとらないという意味で、もしかしたら本当の魔女かもしれないが……。

 さらに雪子姫(ドロロン閻魔くん)は、出自が雪女であるから妖怪に分類され、魔女とは言えない。
 おそらく本性は、身も心もシモヤケになるほど冷たいのだろうが……。
 凍った湖での入浴シーンは、幼かった私にとっては刺激的すぎたが、正しい性の目覚めの自覚を大いに推進させてくれたことには、今頃になって、永井豪せんせいに、たいへん感謝している。  了

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?